57 戦闘
余裕のあるフリをする事だけ上手くなった。
だがそれも駆け引きの一つ…
戦いってのはそういうもんだと俺は思う。
隣の家の壁に牙を食い込ませガンガンと壊していく。
俺はソイツに声をかけた。
「お前がこの村を潰した奴か」
俺の言葉に振り返る。
全身薄黒い緑をしたソイツはざっと俺の2倍の大きさはある。
鋭い爪に長く伸びた尻尾。
何よりも目を惹くのは俺を簡単に丸呑み出来る位に大きな口と鋸のような牙だ。
「だとすればどうする?」
俺に全く興味がないのかソイツは吐き捨てるように言った。
だけどそんな事は決まっている。
だったら俺はお前を倒すまでだ。
俺が口にするとソイツはケラケラと笑い声を上げた。
「人間如きが俺様に敵うとでも?」
こういう風に俺を甘く見てくれる相手はやり易い。
俺は口元が緩みそうになるのを引き締めて少し切れた風を装う。
「…舐めてかかると後悔するのはそっちだぜ!」
相手は俺の様子を見て鼻で笑った。
完全に油断しきった相手。
これで俺は一つ戦闘を有利に進められる。
ワニ系のヤツと戦うのは初めてじゃないが結構骨が折れる相手だ、俺は油断出来ない。
剣を右手で握り締める。
左手は自由に動かせるようにしておく必要があるからな…
「一撃で終わらせてやる!」
叫んだアイツと同時に俺は駆け寄り右手に握っていた剣をわざと外して直ぐ隣に投げつけた。
ガシッと音を立ててシッカリと地面に突き刺さる。
大丈夫、ちゃんと狙った位置にいった。
「馬鹿め!貴様はもう終わりだ」
口を開けたまま飛び掛ってきた敵。
ここまで全て計画通りだ。
俺は左手に握り締めていた『アルウィストロの実』を敵の口へ放り込む。
「なんだ!?貴様何を…」
うろたえた一瞬を見逃さず俺は剣が刺さった方へ回るとコイツの口を両腕で抱え込み押さえつけた。
左手で素早く自分の腰紐を解くと口の先端を紐で縛る。
それから俺は敵を開放して一歩はなれた。
勿論剣を引き抜くのも忘れない。
「今お前が飲み込んだのはアルウィストロの実だ…この意味解るよな?」
30分の間炎や冷気攻撃が一切効かない。
だが今重要な事はそっちじゃない事は解るだろう。
寿命が半分になる。
適当に放り込んだんで4~5粒は突っ込んだ。
寿命がどれだけ縮むモノなのか試した事が無いから実際解らないけど…
どうなんだろうな?
「き…さ…ま…」
吐き出そうと必死に口元に巻かれた紐を解こうと必死に暴れるが無駄な事。
こいつ等は口を閉じる力は凄いが開く力はたいした事はない。
もがくワニを俺は背中から突き出した。
何度か刺す内に口を縛っていた腰紐まで切ってしまったが相手はもう殆ど息絶えた状態であまり関係が無い。
「このワグナ様が…人間如きに…必ず我が種族がき…さ…」
言い切る前に頭を刺してしまった。
ワグナ…ね。
この村をコイツ一匹で潰したと考えるのは甘すぎる。
マコトを連れて移動した方が良いかもしれないな。
俺は一応口を踏みつけながら慎重に様子を窺ったがとりあえずはもうコイツは動きそうに無い。
例え魔物と言えども死体はあまり気持ちの良い物じゃないしマコトは見たくないだろうから片付けといた方が良いだろうな。
そう考えて尻尾を掴むとそのまま引きずって森の少し奥へ進み投げ捨てた。




