54 激突
それは避けられない事だったのかも知れません。
少なくとも私にはどうにも出来ませんでした。
リューさんは何処からともなく氷を持ってきて下さいました。
冷たいその感覚すら懐かしくて私は暫くその感触を楽しんだ後氷を砕いて苺の果汁をかける事にしました。
カキ氷というよりはかち割り氷といった所ですがこの際贅沢は言っていられません。
「これ美味しいな」
一緒に食べていたリューさんがそう仰ったので私は大きく頷きました。
カキ氷というにはおこがましい物ですが故郷の物が褒められて嬉しくないわけありません。
食べながら暫く談笑していると突然大きな物音が響きました。
家の外から何かを壊している様な大きな物音です。
「マコトはココから動かないでくれ、俺が見てくるから!」
リューさんは勢いよく立ち上がり部屋を出て行こうとしました。
ここで隠れていた方が安全では無いですか?
それに私も何か出来るかもしれません行くなら私も行きます!
「大丈夫だから」
私を安心させるようにリューさんは優しく微笑む。
その表情に不安なんて一つも感じさせません。
でも…
「俺は勇者だから」
そう語るリューさんの目は真剣で。
ああ、これが『勇者』なんですねと納得させられるような目でした。
無茶はしないで下さいね。
そう言うのが今の私には精一杯だったのです。
「何にも心配ないよ」
そう笑うとリューさんは剣を握り締めて部屋を出て行きました。
玄関の扉を開く音と殆ど同時にリューさんの叫び声が聞こえて来たのです。
「お前がこの村を潰した奴か」
先ほどは違って低い声。
ここに来てこんな声を聞くのは初めてなので正直少し驚きました。
でもよく考えればブラックさんの所へ来た時の彼はこんな声だったかもしれません。
「だとすればどうする?」
好戦的な返事が聞こえてきました。
…会話を聞いているだけで戦闘は避けられそうにありません。
一体どのような者が来ているのでしょうか?
私は気になって窓からこっそりと覗いて見ましたが見えるのは伸びた影だけで敵もリューさんの姿も見えません。
「だったら俺はお前を倒すまでだ」
リューさんがそういい捨てると相手の高笑いが響く。
低いそのにごった声が耳につきます。
「人間如きが俺様に敵うとでも?」
これがゲームの中なら三下の言葉に違いありません。
けれど…実際にブラックさんとリューさんの力の差を目の当りにしている以上否定もできません。
「…舐めてかかると後悔するのはそっちだぜ!」
フフンっと鼻で笑うリューさんにまた相手は高笑いを始める。
私は居てもたっても居られなくてせめて他の部屋の窓から覗けないか探してみる事にしたのです。
正体が解れば私でも何か出来る事位はあるかもしれませんから。
最悪私の方に気を向ければ相手の隙をついてなんとか出来るかもしれません。
倒せなくても逃げること位はできるのではないでしょうか?
相手はこの村をつぶす程の実力の持ち主です。
リューさんに勝てるかどうか…
ともかく私に何か出来るはずです。
ええ、きっと。




