53 氷
探してみるもんだ。
諦めないってのはきっと大切な事だと思う。
俺は家を飛び出したあとこの村で一番大きな家に向った。
もしかすれば…
多分この村の偉いさんが住んでいた家なんだろうソコはとりあえず間借りしているあの部屋よりも幾分広い。
俺は迷わず台所へ向った。
運がよければあるかもしれない。
そう思って床を探ってみれば目当ての物は直ぐに見つかった。
床に取り付けられた小さな扉。
開けば小さな子供が一人蹲って隠れられる位のスペースがある。
そしてココには青く光る水晶と……氷があった。
食物は冷やした方が長持ちする。
これは昔から知られている事だけど常に川の水に浸けていたら毎回取りに行くのが大変だし流されてしまう事もある。
だからこういう風に地下にスペースを作って少しでも涼しい所に食べ物を保管するんだ。
そしてこの水晶レアネスは魔力を込めると周りの温度を吸い取る効果がある。
でも精々1~2ヶ月位しか効果は無いし割と高級品な上に使い捨てなので金持ちの家にしか無い。
それにしてもまだ氷が残っているという事はココは本当に最近捨てられた場所だという事になる。
みんな無事だと良いんだが…
物思いにふけそうになって俺は慌てて首を左右に大きく振った。
とにかく今は氷だな。
冷たい扉の置くから氷だけを取り出す。
食べられそうなめぼしい物は他には入っていなかった。
レアネスは便利だが魔力を込めた状態で持ち歩くのには適していない。
だからこそ残ってるんじゃないかって思ったんだ。
残された食器棚にはまだ沢山のモノが残っていた。
その中からお椀を拝借して氷を放り込む。
そしてマコトを残してきた家へと戻った。
「ただいま、ほら氷」
マコトに見せるとビックリした様子で氷を触っていた。
目を丸くしてる様子が微笑ましい。
「本当に氷を持ってきて頂けるなんて…」
カキ氷というのは削った氷に甘い液体をかけて食べるモノらしい。
試しに苺の果汁をかけて食べてみたら美味しかった。
こういうのも良いな。
そう伝えるとマコトが笑う。
「そうでしょう」
良かった。
こんな表情を見たのは久々だ。
「でもどこから氷を…」
マコトが俺にそう尋ねようとした瞬間にドガッと大きな音が響き渡る。
何かが壊されているような音だ。
この村の奴らが逃げ無くてはならない『訳』がやってきたに違いないだろう。
「マコトはココから動かないでくれ、俺が見てくるから!」
でも…と言い縋るマコトを無理やりベットへ押し戻す。
大丈夫だからと笑った。
「俺は勇者だから」
勇者なんて自分で言っててうそ臭いと思う。
けれど一番最初の気持ちは『人を守りたい』だった。
そして今も、少なくともマコトは守ってやりたい。
「リューさん、無茶はしないで下さいね」
俺はマコトの目を見て大きく頷いた。
大丈夫、今ならどんなヤツにだって負ける気はしない。




