49 望郷
笑って欲しくて、悲しい顔を見てるのが辛くて…だから俺は当ても無いのに笑った
俺は自分の身の上を話しながら少しだけ後悔していた。
これじゃまるで同情してくれと言わんばかりじゃないか。
だから俯いてしまったマコトに話題を変えようとマコトの故郷の話を振ってみた。
「どう説明すれば良いんでしょうね、難しいです…でもとても平和な国でした」
平和…か。
俺の村もあんな事になるまではそれなりに平和だったと思う。
けど、俺は何も口を挿まずに続きを待った。
「私の国は大きな戦争に負けて以来軍隊を持たない国になりました。」
戦争に負けただって!?
平和とは程遠いその言葉に俺は少し、否かなり理解出来ないでいる。
戦争に負けて軍隊を解散させられるのは当たり前だ。
自分達に反抗する可能性のある芽は刈り取られる。
大体負けた国の奴らは奴隷にされるのが常識でまず逃げられない。
だから最後の最後まで必死に戦うし、戦争は無くならないんだろ?
「私の国は…日本は確かに牙を抜かれたわが国はアメリカの属国扱いでずっと…やって来ました」
日本?アメリカ?
聞いたこと無い国の名前ばかりが上がる。
信じられないそんな世界があるなんて。
なによりマコトのいう国は俺が知ってるどの国にも当てはまらない。
俺も色々世界を巡ったつもりだったけど…俺が知ってる世界って言うのは本当に狭いのかもしれない。
「魔法なんて存在しない代わりに科学が剣を使わなくなった代わりに兵器が…」
呟くマコトに俺はまた疑問が浮ぶ。
魔法が存在しない?剣を使わない?
それに科学や兵器って一体なんなんだ。
わからない。
「私の住んでいた日本という国には四季があって春には桜が咲いて夏には大きな花火が上がって秋には紅葉が冬には雪景色も…」
遠い目をしたマコト。
その目尻にはうっすら光る物が見える。
けれど俺はそれに気付かないフリをした。
「桜?花火??」
だから俺は話を反らすように知らない単語を聞いた。
「桜は薄いピンクの小さな花で春になると花びらで一面ピンク色で埋る景色がとても綺麗なんですよ。」
小さな花か…
そう言えば妹も花が好きだった。
村が無くなってから俺には花を見る余裕も無くてただ我武者羅に強くなる事だけを考えて来た。
桜…ピンと来ないけどこの辺りにもあるのかもしれない。
「夏には空に色取り取りの炎を花のように広げるのです。すごく綺麗で上がる時の音が心臓に直接響くような感じで…」
花火…か。
よく解らないが魔力で炎を空に上げる事は出来る。
マコトの所ではそういう風習があるのかもしれない。
ただ、俺は魔力の全てを身体強化に使ってしまった為出来ない。
「なんかよく解らないけど凄いんだな」
そう言うのが精一杯だった。
なんとかしてやりたいとは思うけど俺には出来ない。
今更少し位普段に使える魔力を残しておけば良かったと思う。
「帰りたい」
小さな声で呟いたマコトの肩をそっと叩く。
帰してやりたい、けれどマコトの国が何処にあるのか俺にはさっぱり解らない。
だからせめて出来る事位はしてやりたいと思う。
「何か食べたい物とかあるか?故郷の料理とか俺には作れないだろうけど材料位なら揃えられるかもしれないし…」
思いつくのはそれ位しかなかった。
我ながら情けないな。
マコトは少し考えた様子で答えた。
「カキ氷…」
小さな声だったけど俺ははっきり聞き取った。
氷…か。
魔法が使えれば作り出すのは簡単だ。
だけど俺は魔法で作る事が出来ない。
沈んだマコトをみて俺はせめてこれ位はなんとかしてやりたいと思う…
だから俺は大丈夫だと伝えて家から出た。
氷か…
なんとかしなくちゃ…な。




