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ザルドさんが来てからもう1週間は経ったでしょうか。
あっという間に馴染んで今では弟のような存在です。
ちょっとドジな所もあるんですが見た目通りと言いますかイメージ通りと言いますかとにかく腕力は凄くて私一人では大変だった食料集めも二人になって大分楽になりました。
私は日本で食べていた食物に近い物以外口にしませんでしたがザルドさんが毒の有無を教えて下さるのでこの点もとても助かります。
特にキノコなんかは怖くて手が出せませんでしたからね。
日本でも慣れた人すら間違える事もあるとかで年に何回かは死亡事故も起きていましたし…
いつもはその日食べる分しか取って来れなかったジャガイモっぽいモノも大量に持って帰って来る事が出来ましたので洞窟の前に畑を作ってみました。
じゃがいもは特に栽培が楽な作物だと聞きかじった事もありますしね。
とにかく平和に過ごして居ました。
そしてこの日々が続くと信じて居たのです。
なんの保障も無かったのに。
ソレは突然に、たった一人の来訪者によって壊されたのです。
ある日、私たちが畑仕事をしていると後ろから声をかけられました。
「ココに何故人間が居るんだ!!」
怒気を含んだソレに私は慌てて振り返りました。
ここに居る人間は私一人です、当然この声の向かう先は私です。
その方の下半身はまるで大蛇そのもの。
アナコンダ?ボア?ニシキヘビ?
蛇については詳しくありませんから模様から判断する事は全く出来ません。
ですが胴回りは私よりも太く簡単に丸呑み出来る大きさです。
そして上半身は…
上半身は…
大蛇そのものなのです。
ああ、慌て過ぎました勿論ただの大蛇ではありません。
手がトカゲと人間を足して2で割ったような手が生えているのです。
「何の用だ!?」
ザルドさんは立ち上がると大蛇の方へ向って歩き出しました。
私が何か言葉を発する前にザルドさんは体を締め上げられていたのです。
「ザルドさんっ!」
呼びかけても唸り声を上げるだけで私の方に視線向ける余裕すら無い様でした。
「ここの主を呼んで来い!」
怒声に私は驚いて塒の中へ走りました。
私より腕力の強いザルドさんがあっという間に捕まってしまったのです。
不死とは言え私が勝てるとは思えません。
早くしないとザルドさんが死んでしまう!
「ブラックさんブラックさん!」
叫びながら全力疾走しました。
こんなに全力で走ったのは村で石を投げられて以来です。
「たたたた大変です、早く来て下さい!」
私の様子を見てブラックさんは何か悟って下さったのか黙って後を付いて来て下さいました。
大蛇はブラックさんを確認すると締め上げていたのを緩めザルドさんを地面に落としたのです。
ドザっと音がしてザルドさんは受身を取る事も無く人形の様に地面に叩きつけられました。
ブラックさんはソレを厳しい目で睨み付け体中から嫌なオーラを出しています。
私が感じる位です相手は相当の殺気を感じているでしょう。
「お前何がしたい」
いつもよりトーンの低いブラックさんの声。
私はブラックさんと大蛇が睨み合っている隙にザルドさんの方へ駆け寄りました。
手首を掴んで口元に耳を当てます。
脈も息もある、大丈夫。
それを確認するとザルドさんを背中に担いで引きずりました。
私の力では完全に持ち上げる事は出来ません。
早くここから離れなければ・・・私の頭の中はその事でいっぱいでした。
ザルドさんはきっと大丈夫、大丈夫な筈です。
塒の奥へ、ブラックさんの後ろへ連れて行かなくては!
その様子を大蛇は気付いているようでしたがそれ以上私達に何も仕掛けてくる事はありませんでした。




