46 魔法
俺はマコトと新しく出来た部下のやり取りを横目で見ながら内心笑いが止まらなかった。
アイツの魔力はウォズとは反対でこの上無く薄い。
マコトはよく解っていないようだが『魔力』ってのは体の中に溜まっている力を使うもんだ。
思いっきり殴りかかるのに呪文は必要ないだろう?
人間が魔法の力をモノにしたのはここ数百年の話だ。
それまではこういう呪文を言葉にして脅すような小物も多かった。
今ではマコトのように驚く奴はほぼ居ない。
初めて出来た部下だが思ったよりはマコトとの衝突も無くなんとか上手くやってくれそうだ。
ザルドと名乗った部下も今日からココに住み着くことになった。
だがそれ以外俺達は特に変わらず日々を送っている。
もっと勇者の奴らがわんさか襲ってくるかと思ったが…意外だな。
まぁ俺が暴れ足りなくて流布がまだあんまり広がってないからかもしれない。
それとも今頃魔王を倒したと浮かれているんだろうか。
人間ってのはサッパリ理解出来ない生き物だ。
近くに潜んでいるのかもしれないと思ってザルドに周囲を探らせたがその気配も無い。
…コレならむしろウォズが魔王だった時の方が多かった。
俺が魔王になって来たのはザルドと…後は直後にリリィか。
あの時以来近くに気配すら感じる事も無くなったが諦めて森に帰ったんだろう。
アイツは何度も俺を説得しようとして来た。
正直ウザかったしあまり相手にしていなかったから来ない方が有難い。
バックにある森の精霊が付いているから簡単に殺すわけにもいかないしな。
それを解っているからリリィも俺が我慢できる限界スレスレの所まで粘る。
ああ見えて結構強かだ。
ともかくリリィが来なくなったのは好都合だが問題はバックの森の奴らがどう動くか…
元々人間よりの考えの奴らだからな、油断出来ない。
魔王になってから俺は『魔王』らしい事はまだ何もしていないしする気も今はないしな。
正直他に立候補がいるなら何時だってかわってやる。
だがもう先頭に立てるような奴らはそう残っていない。
あの後直ぐに誰も行動を起こさない所を考えると無駄だろう。
だが俺はそれでも、と願う。
新しく部下になったザルドも派手に暴れたい男ではなかった。
本来ならこんな森の奥でのんびり暮らしている方が性に合っているのだろうと思う。
「ブラックさん、ブラックさん!」
マコトの叫び声で俺は漸く自分の考えに浸っていた事に気が付いた。
目の前にやたら慌てた様子のマコトが肩で息を切らせて呼んでいる。
「たたたた大変です、早く来て下さい!」
何が大変なのかさっぱり解らない説明だがマコトがこれだけ慌てる位だ。
嫌な予感を感じつつも俺はマコトの後に続いた。




