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私が目を覚ますといつもの塒でした。
それにしても嫌な夢を見てしまったと思います。
私がブラックさんに殺される…そんな夢でした。
きっと私は心のどこかでブラックさんを疑っていたのかもしれません。
キョロキョロと見回しますがブラックさんはまだお戻りになられてないようですね。
そんな事を確認しながら塒の外に出ると…
私が夢の中で殺された場所に赤い血だまりが出来ていたのです。
それだけではありません。
あの時ブラックさんがいた場所には赤い斑点が沢山出来ていました。
夢じゃなかった?
まさか!
だって私はただの人間です。
真っ二つにされて生きていられる筈がありません。
けれど…けれど…
ここにある沢山の赤が事実だと私に突きつける。
一体何が?
ブラックさんも居なければリリィも見当たらない。
そして私は生きている。
意味が解りません。
考えれば考えるほど怖くなってきました。
どうすれば良いのかもわからないまま私はへなへなとその場に座り込みました。
何をすれば良いのか解らず私は上をぼんやりと眺めて…どれ位そうしていたのか解りません。
けれど頭上に大きな黒い影が見えて私の時間は動き出しました。
そう!ブラックさんが帰って来られたのです。
赤黒く汚れたその体。
やはりさっきの出来事は夢ではなかったのです。
「温泉でも行くか」
さらりと言ったブラックさんに私は頷きました。
そうでした、そんな事大した事では無かったのです。
私はブラックさんに付いて行くと決めたのですから。
「行くぞ、乗れ」
言われるまま私はブラックさんの尻尾につかまりました。
体の彼方此方に赤い色が附着します。
それすらもブラックさんに近づけたようで少し誇らしい気分です。
私は人間を辞めたのですから。
飛び上がるとブラックさんは私に語りかけ始めました。
「マコト…俺はお前を二人に別けた」
ブラックさんの話を要約すると私はさっきブラックさんのよって二人に別けられた事。
お互いの視界に入ると元の一人に戻ろうと体が作用して死んでしまうらしいのです。
私達は全くの別人格なのだと。
急に双子になったという事ですね。
「もう引き返せないぜ」
ブラックさんはそう言うと大きく上昇しました。
もとより引き返すつもりはありませんよ、私も。
私の片割れがどうしているのかさっぱり見当もつきません。
その事に関してブラックさんは口を開きませんでした。
けれど私達が出会う事は一生ありません。
出会った時が最後なのですから
だから私はもう一人の私の事を考えない事にしたのです。




