40 救い
アイツこそが魔王だった。
魔王が飛び去って行ったのはあの森の方角だ。
俺はやはり手の上で踊らされていたのか。
見上げた俺は悔しくて何度も拳で地面を叩きつけた。
空に消えていった魔王を見ながら俺はあの屈辱を思い出す。
ヤツの住処は解っている。
ならばするべき事は一つだけだ。
俺はゆっくりと立ち上がった。
こんな所に居たって俺に出来る事は何もない。
必死に走った道を逆戻りする。
まずは体を休めて…
アイツの所へ行くのはそれからでいい。
気力を使い切った俺はゆらゆらと揺れる視界の中歩く。
体はとっくに限界を超えていた。
だけどここでは休めない。
町に戻った後俺は直に宿屋を取った。
硬いベットの安宿だが野宿よりはずっと良い。
今日はゆっくりと体を休める事だけを考えよう。
森へは明日向えば良い。
そう結論を出して俺は目を閉じた。
寝れる筈なんか無いと思っていたのに、あっという間に眠りに落ちていった。
目が覚めると体の疲れはすっかり取れていた…とまでは行かなかったが8割方戻った。
本調子とまでは言い難いがそうも言ってられない。
まだ『アルウィストロの実』は使用していないからあの炎対策としては十分使えるだろう。
剣は最低限の手入れだけをして鞘へ収める。
この際あまり時間をかけていられない。
俺は準備を終えると宿を飛び出した。
この町からあの森へは普通の人なら一週間かかる。
けれど俺が昼夜問わずに走りつければ3日とかからないだろう。
アイツが何時森から拠点を移すとも限らない。
出来るだけ急がないとな…
とにかく走る
森へ向って俺は走り続けた。
3日とかからないとは思っていたが実質1日半で森の入り口近くまで来れてしまった。
前回俺を引き止めた女性の家の前を通り抜ける。
この村にはもう誰一人居なかった。
血がベッタリとか家が倒壊しても無かったので村を捨てたのだろうと思う。
こんな魔王の近くに好んで住みたい奴はそう居ない。
俺がココを訪れてから3ヶ月は経っているんだからそういう事があってもおかしくはないだろう。
そんな事を考えながら森へ向う。
歩いていると木の影から黒い髪が見えた。
俺は慌てて駆け寄った。
「マコト!マコトどうしてこんな所に…」
木に寄りかかって倒れて居たのはマコトだった。
あの時だって決して肉付きの良い方じゃなかったがこけた頬に一見して解るほどヤツれた体。
何があったんだ…!?
俺が声をかけるとマコトはゆっくりと顔を上げた。
視線が揺らいでいる。
「あ…リューさん…」
掠れるような声で呟いたマコト。
口が僅かに震えている、そんな感じの声の出し方だ。
「逃げて来たのか?」
小さく首を動かしたのを確認して俺はマコトの視線に合わせてしゃがみ込んだ。
こんな所にマコトを置いておくわけにはいかない。
俺はマコトを背負ってさっきの村へ行く事にした。
「大丈夫、俺がなんとかするから」
そう笑いかけるとマコトもうっすらと笑い返してくれた。
持ち上げてみると思ったり軽い。
よっぽど辛い事を経験したんだろうな…
「あ、りがとうございます」
後ろからか細い声が聞こえてきて俺がなんとかしなくちゃって思ったんだ。




