30 リリィ再び
目を開けた時には怒り狂ったブラックさんがソコにいたのです。
「あいつ等…絶対殺してやる…」
低く呟いたブラックさんは私の全く知らない顔で…
私は目を覚ましたのに声をかけられずにいました。
一体何が?
ブラックさんがココまで怒り狂うなんて…
戸惑う私を他所にブラックさんは何も告げず飛び立っていったのです。
あの方向は…
「迎えに来たよ!!」
私がブラックさんを見上げていると正面からリリィが現われました。
息を切らせて何度も上下する肩から相当慌てて来たのだろうと予測できます。
「ねぇ…リリィさん。ウォズさんを殺したのは誰ですか?」
もしかしたら貴方なんですか?
そんなわけないですよね、語外そういう意味を込めて訊ねる。
「私にそんな事出来ないよ…誰がなんてわかんない」
首を振るリリィに私はそうですよね、と頷く。
彼女にあのウォズさんを殺せるとは到底思えない。
「魔王は居なくなった、今なら皆仲良くやれると思わない?」
ニコニコ笑うリリィに私は頭が痛くなった。
そんな訳がない。
魔王が居なくなった今人間側は間違いなく調子に乗っている。
こちら側と仲良くなんて歩み寄った考えを持つ者なんて居ないでしょう?
それに…魔王が殺されて…皆さんが黙っているとも思えません。
「じゃあリリィと一緒に来てはくれないの?」
リリィに私は大きく頷きました。
今度はハッキリと意思表示できます。
私はブラックさんの家族なのです。
「…この前は素晴らしいって褒めてくれたのに…」
そう出来ればと思う気持ちは今だってあります。
ありますが…
「じゃあどうして!!」
涙を一杯浮かべて叫ぶリリィに私は視線を少しだけ外しました。
奇麗事でどうにか出来る状況じゃないからですよ。
とは流石に言えませんでした。
黙っていてもどうにもならない事は解っています。
「…ねぇ何とか言ってよ…」
私はやはり人なのです。
だから知り合ったことも無い人々よりブラックさんの方が大事。
結局そういう自分勝手な生き物なんですよ。
「そう言えば…魔王ウォズはレナスの城で殺されたんだって…」
レナス…もう一度名前を口の中で転がしてから気付く。
確かウォズさんが育てた王子ですよね。
…そんな城で殺されるなんてあまりにも皮肉過ぎませんか。
「こんな悲劇はもう繰り返しちゃ駄目だよね、だから…」
私はリリィが最後まで口に出す前に首を横へ振りました。
ブラックさん以外がどうなろうともはや関係ない事。




