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悪と呼ばれた私  作者: える
出会いと別れ
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③ 新たなる出会い

何処に行くのもブラックさんと一緒だった。


それを窮屈だとは思わなかったし、彼は本当は優しいのだと気づいてからはからかう事すら出来るようになったのです。


拗ねたら後で機嫌を直してもらうのに苦労するんですけどね。


最初に彼を見つけた時に驚きのあまり暫く脳が停止してしまったのは今でも恥ずかしい思い出ですが…。


ドラゴンなんて私が居たところでは空想の産物でしか無かったんですから。


無理も無い…とは思って頂けないでしょうか。

ただ普段から表情が少ないといわれるだけあって顔には出なかったようですけどね。



怖くないのか?と聞かれたときには怖いと正直に言いかけましたが我が祖国の偉大な人ムツゴロウさんは動物を怖がってはいけないと言っていたような気がします。



私はそんな事を考えながらとにかく笑う事だけを考えていました。

まぁその後色々あって今に至るわけですが今日はからかい過ぎて怒らせてしまいました。



彼が拗ねると全く此方を向いてくださらなくなるんですよね。



とにかく機嫌を直して頂こうと私は彼の好きな果物を探しに洞窟を抜け出して来た所なのです。


いつもは背中に乗せて貰うばかりですがある程度の地形は何時も見下ろしておりましたのでわかっているつもりなんですよ。


でも流石に歩くとちょっと距離がありますね。


ふぅ…と息を一つ吐き出して空を見上げると丁度真上にある。


いつもならもうお昼の時間ですが…きちんと食べておられるでしょうか?


3日位は飲まず食わずでも平気だとブラックさんは滅多に3食とる事はありません。


それでも私が来てからはわりとしっかり食べるようになったのだと笑っておられました。


なんとなくですが雰囲気で表情を見なくても笑っているんだ、今のは傷ついた…なんて事が読み取れるようになりした。



半分は願望も含めて思い込みも入っているかもしれませんが。



考え事をしつつ歩いていると赤い実がちらちら見えてきました。

赤い実は私の親指大でとても小さくてブラックさんの口に入れるには相当摘まないといけません。



私の所にあった草イチゴにとても似ていますが棘が心持ち大きな気も…



同じとも違うとも言い切れずでも口に入れた時の優しい甘味は変わらずで。



沢山摘まないと。



私はそんな気持ちで夢中でしゃがみ込みかき集めました。


必死に摘んでいると突然目の前に影が出来た。


ハッと頭を上げると背の高いガッシリとした体格の男性が目の前に立っていました。



こんな距離に居て気が付かなかったとは私とした事が…



固まったまま見上げていると私を見た男性はニッコリと微笑みました。



私は慌てて笑顔を返しました。

向こうに敵意は感じませんでしたが私も敵意が無い事をハッキリアピールする必要があると思ったのです。



「…∴×Ё」



何か語りかけてきて下さっているのは解るのですが何を言っているのかさっぱりなのは相変わらずでした。


けれどこの前方々のように石を投げられる事も無いのは良かったです。


栗色の髪の彼は少し垂れた優しそうな目をしていて。



雰囲気で嫌悪されてない事位はわかるのですが。



「νμ σ;」



ああ…全く何を言ってるのか理解できません。


とりあえず集めたイチゴの中から大きいのを選んで一つ渡すと彼は嬉しそうに笑って受け取ってくれました。


それから会話らしい会話は無くただイチゴを摘む私をじっと観察している彼。


っという不思議な構図が出来上がっていたのです。

「そんなに見られるとなんだか恥ずかしいですね」



呟いた私の言葉に彼が急に反応した。



「…こっちの言葉なら話せるのか?」



呟いた彼の言葉が急に理解出来るようになりました。


…急に理解出来るようになったと言うよりは彼が私の言葉を話したと言う方が正しい気がします。



「え…私の言葉理解できるのですか?」



私の問いに大きく頷いたのを確認しながら私はどうして良いのかわからず困ってしました。


会話が成立している以上先ほどの問いほど無駄なものは無かったですね。


後悔しつつ考え込んでしまった彼に内心汗が止まりません。



「俺の名前はリュー、あんたは?」



名乗られてしまった以上私が名乗らない等と失礼な事を出来る筈がなく。

私はマコトと小さな声で返しました。

この人と関わってはいけない。


第六感というのでしょうか?



とにかく関わるな、と私の中で何かが叫んでいます。



「マコトはよくココに来るのか?」



私は苦笑いを浮かべてそれには答えませんでした。



「そろそろ日も落ちてきたので失礼しますね。」



ニッコリ笑って別れを告げると私は歩きだした。

あまり遅くなるとブラックさんが心配してしまう。


なによりもリューさんと一緒に居る所を見られてしまってはいけない様な気がしたのです。


理由は私にもはっきり解りませんが…

なんとなくそう感じたのです。


何か考え込んでいたようですが私は振り返らずに歩きました。


もし他に言葉の通じるヒトが出来れば私はアソコを追い出されるのでしょうか。

兎に角私は考えないようにしながら来た時とは違って早足で戻りました。



「おやつの時間までには戻ろうと思っていたのに思っていたよりも時間を食ってしまいました…」



誰にするわけでもない言い訳を口にしつつ競歩のような気分で歩いていると急に空が真黒に…



いいえ、頭上に大きな影が出来ていました。



「ブラック…さん。」



見上げると心配そうな顔で私を見下ろすブラックさんが居ました。


探しに来てくださったんですね。



「帰るぞ、乗れ。」



その一言が嬉しくて私は飛び乗るように尻尾につかまりました。


尻尾を器用に動かして私を背中に乗せるとブラックさんは一気に上昇してまるで雲に手が届くかのよう…

視点がころころ変わるのでついて来ていただけるのかちょっと心配です。

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