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悪と呼ばれた私  作者: える
出会いと別れ
25/69

25 変革の時

俺が帰ると嬉しそうにマコトが駆け寄ってきた。


尻尾があれば振ってるに違いない喜びようだ。


いつもだったらそれをちょっとからかってやる位の余裕はある。



「リリィ…か…」



俺が呟いた言葉にマコトの肩がビクっと持ち上がった。


けれど視線は俺から背けない。


マコトのそういう所はわりと気に入ってる。


でもな、



「ブラックさん、お腹空きましたご飯食べませんか?」



あからさまな方向転換に俺も乗る事にした。

「なんだだからそんなモノ欲しそうな目してんのか」



笑うとマコトが少し拗ねるような表情をする。


いつも通りだ。


この空気が楽しくて、ずっと続けば良いと思っていた。



けれど…



俺がこのままマコトと一緒に居る方が良いのか。


正直俺にだって結論は出せない。


いや、既に出ているが認めたくないだけだ。


火を囲んで座るマコトを眺めながら思う。


揺れる炎を眺める瞳が揺れている。


コイツも悩んでるんだろ。

「なぁ」



俺が口を開くとマコトは何かに怯えるように固まった。



「なんでしょうか?」



少し声が震えている。


そんな微妙な変化すら解るほど一緒に過ごしてきた。



「出て行きたくなったら何時でも出てって良いんだぜ」



俺に言えないだけで本当はリリィの方に行きたいのかもしれない。


だから俺は出来るだけ何でもない事のように笑う。


嫌われてるとは思ってねぇ、だけど本当は人の方に帰りたいんじゃないのか。


帰りずらくなって後悔してんじゃねぇの?

「俺と居た事は人間ならリリィとこの前の男位しか知らないからな、今ならあっちにだって行ける」



この前の男はマコトを敵だとは認識していなかった。


人の中に紛れてしまえば態々攻撃したりしないだろう。


そう考えながらマコトの方に視線をやると今にも泣きそうな顔で俺を見ていた。


言いたい事はあるのに口に出せない、そんな雰囲気で口が小さく震えているのが見える。



「もう信用して欲しいなんて贅沢は思いません」



左右に大きく首を振って喚くマコトに俺は面食らった。


コイツがこんなに泣くの初めて見たぜ…



「だからそんな、関係を全て断ち切ってしまうような悲しい事は言わないで下さい」

ワンワン泣きながら叫ぶ内容に俺は初めて話しが噛み合って無かった事に気がついた。


ついた…がマコトは一度泣き出したら止まらないのかずっとしゃくり上げたままだ。


俺の腹の辺りにしがみ付くマコトに俺は声をかけるタイミングを失って暫く様子を伺う事にした。



「なんか噛み合ってねぇな」



ボソリと呟いた俺の言葉にマコトは驚いた顔をして俺を見上げた。


暫く視線を絡み合わせたまま何とも言えない空気が流れる。



「少し、話をしませんか?」



長い時間をかけてようやく口を開いたマコトに俺は黙って頷いた。


こんなに一緒に居たのに俺達の間には言葉が足らなかったんだな。



「では私からお話させて下さい」



俺は黙って続きを諭した。

「先ほど森の中でリリィさんとお会いしました」


だろうな。


俺はマコトの言葉に頷く。


リリィはここに何度も来ているからマコトといつ鉢合わせしてもおかしくなかった。


人と仲良くしよう!と面倒な事を散々喚いているが俺は無視だ。


ただアイツは森と契約している。


もちろんココじゃないが…戦うと面倒な相手だ。



「皆仲良く平和に暮らす為に説得して欲しいと頼まれました」



へぇ…俺は自分でも目が鋭くなるのが解る。


だけど内容はある程度予想出来た事だ。



「でも断ってしまいました」



苦笑いするマコトに俺は何も答えない。

「ブラックさんの事にしても…ウォズさんの事にしてもいつだって人間の自分勝手です。


 何もしなくても人間はブラックさんを攻撃しにくるのに仲良くなんて出来るわけありませんよね」



ヒトのマコトからそんな答えが返ってくるとは思って無かった。


俺はマコトの目を見る。


嘘をついているようには見えない。


本気でそう思ってんのか?



「私をヒトの所へ誘っても頂きました、でも!」



グッと握り締めた拳に力が入っている。


そんなマコトの訴えに俺は迷う。



「貴方と居たいのです!勝手だと思われるかもしれませんが信用だってして欲しいですし、これからもずっと一緒に……」

最初の勢いがドンドン無くなって最後は俯いて掠れるような声だった。


俺は自分の迷いが馬鹿みたいだったという事にようやく気づいたぜ。



「俺もウォズにも非が無いわけじゃねぇ、もっと気をつければどうにかなったかもしれないだろ」



俺の言葉にマコトはガバっと顔を上げると大きく首を横に振った。


優しいなお前は。



「俺はそもそも返り討ちにして殺しているし、ウォズだって怒りに囚われて国の人間を大量虐殺しなければそもそも

こんな事態になってねぇよ」



そうだ、もっと注意すればなんとかなったかもしれない。



「それは違います!ブラックさんが黙って耐え続ける必要なんてないですし森に火を付けたのだって人の勝手な理由でしかないじゃないですか!」



叫ぶマコトに俺は戸惑う。

俺だってずっとそう思っていた、けどヒトのお前にそんな事言われるとは思っても見なかったぜ。



「私だってそんな『人』です、だけど…これからも一緒に居たいんです」



駄目ですかっと見上げてくるマコトに俺はイザンの言葉を思い出していた。



人と俺達は何もかもが違う。



けどソレがどうしたっていうんだ、俺はマコトと一緒に居るのが楽しいし。


俺と居たいとマコトが言う。


何一つ迷う事なんてない。



「俺が最近ずっと弟んとこ行ってたのは話したよな」



頷くマコトを確認しながら俺は言葉を続けた。



「アイツはずっと何か悩んでるようだった。

俺はやっぱ何とかしてやりてぇし…無理に聞き出すのも何か違ぇから自然に話してくれるのを待って何度も通った」



真っ黒なマコトの目は俺から動かない。

「ようやくアイツは話してくれたぜ。人間の友人がいて契約してしまった事…そしてソイツが死んじまった事も、な」


マコトの目が揺れる。


死って聞いてちょっと動揺したのかもな。



「アイツは未だに後悔し続けていた。

そして俺に問うたんだ…人と俺達は違う本当に良いのかってな。」



俺がどう答えたのか気になるのかマコトが息を飲み込んだ。



「何も答えられなかった、俺はそんな事まで考えてなかったし…」



みるみるマコトが沈んでいく。


視線も下に落ちた。


「帰って来た時にアイツの魔力を感じて俺よりリリィと居る方が良いんじゃねぇのって…」



俺の言葉にマコトあきらかにショックを受けたようだ。


無理に笑顔を作ろうとして口元が震えている。



「人と俺達は違う、けどな俺はお前と居ると楽しい。それが答えだ」

パッと顔を輝かせたマコトに俺も笑う。


迷う必要なんて無かったこれで良い。



これで平穏な2人暮らしに戻る筈だった。



ザッと森中の鳥が飛び上がる。


俺はソレと同時に大きな魔力を感じなくなった。


まさか…そんなわけある筈が無い!



「ウォズが死んだ…だと?」

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