24 人と竜と
「おかえりなさい」
帰ってきたブラックさんに私は駆け寄った。
けれどいつもなら返してくれる返事が返ってこない。
なんとなく不機嫌な事だけが雰囲気で解ります。
私はまた、何かやってしまったのでしょうか。
その場で固まっているとブラックさんの呟きが落ちてきました。
「リリィ…か。」
呟かれた言葉に私はギクリとしました。
確かに今日はリリィさんとお会いしました。
以前ウォズさんの時の様にリリィさんからも魔力っていうのが移っているのかもしれません。
それにしてもリリィさんともお知り合いだったんでしょうか。
っと言う事は彼女はブラックさんにも同じ話で説得したんでしょうね。
悪い事は何もしていませんでしたが、説得を頼まれた分少し居心地が悪いです。
私の目を覗き込むブラックさんに考えている事が全て伝わりそうで少しだけ怖くなりました。
確かに私は「人」です。
ですがどうやってもブラックさんを殺そうとするような人達の所へは行けません。
けれど、ブラックさんからしたらリリィさんと話しをする私を信用は出来ないかもしれません。
逆に私がブラックさんの立場だったら疑心暗鬼になっているでしょう。
「人」は自分勝手です。
それは私も例外ではありません。
私がブラックさんならきっと信用出来ないのに、私はブラックさんに信じて欲しいのです。
そんな手前勝手な意見は通らないでしょう?
なのに私は…
「ブラックさん、私お腹空きましたご飯食べませんか?」
それをブラックさんに見抜かれるのが嫌で無理に方向転換しました。
さっきの呟きも聞こえないフリをして。
それにブラックさんも乗っかったフリをして下さって晩御飯になりました。
表面上は何時も通りの食事。
会話もちゃんとあって、ブラックさんが私を少しからかうのも何時も通り。
なのに。
きちんと違うと解ってしまう自分が嫌で仕方ありません。
空気なんて読めなければ良かったとさえ思ってしまいます。
「なぁ。」
だから雰囲気が急に変わって真剣な表情をしたブラックさんに声をかけられた時私は心臓が止まるかと思いました。
「なんでしょうか?」
出来るだけ平静を装ってみますがきっと緊張しているのはブラックさんに伝わっているでしょう。
「出て行きたくなったら何時でも出てって良いんだぜ。」
笑うブラックさんに私は固まってしまいました。
それはもう私とは居たくないという意味ですか。
とは怖くて声に出せませんでした。
何か答えなくては…そう思うのにショックを受けた私の口はわずかに震えるだけで言葉を吐き出しません。
「俺と居た事は人間ならリリィとこの前の男位しか知らないからな、今ならあっちにだって行ける。」
遠い目をしたブラックさんに私は首を大きく左右に振って縋りつきました。
もう信用して欲しいなんて贅沢は思いません。
だからそんな、関係を全て断ち切ってしまうなんて悲しい事は言わないで下さい。
こっちに来て泣いて喚いたのはコレが初めてです。
気が付けばブラックさんは目を丸くして私を見ていました。
「なんか噛み合ってねぇな。」
その言葉にワンワン泣いていたのを止めてブラックさんを見上げました。
困った表情を浮かべる様子に私はやっと気が付いたのです。
私達は言葉が足りていなかったのだと。
「少し、話をしませんか?」
私がそう切り出すとブラックさんが頷いてくれました。
「では私からお話させて下さい。」
他人に信用してもらいたい時自分の方から語りだすのは普通の事です。
ですから…ねえブラックさん聞いて下さい。




