23 勇者の準備
魔王を滅するため思いつく事は全て試してみる事にした。
効くわけが無いと思いつつラマストルフも用意した。
この粉を空気中に散布する事により幻覚を見せる作用がある。
ただし精神的に弱い者や弱っているモノ以外には効果はない。
それからシドール湖の水を汲んできた。
この水には魔力を溶かし保存する特殊な力がある。
溜め方は簡単だ対象の血液を水へ溶かせば良い。
ようは魔族の血を手に入れれて溶かすそれだけの事だ。
但し普通の血では意味が無い。
魔力を最も溜め込む心臓から直接奪わなければならないからコレを使う者は少ないのだ。
剣から滴り落ちる赤い液体を瓶へ入れる。
魔族も人間も血は同じ…赤い。
最初の内は俺も人殺すようで戸惑っていたが今は慣れた。
魔王を倒すのに一瞬でも戸惑えば殺られるのはこちら。
おそらく逃げる間も無かったであろう村の皆を思う。
俺は絶対に無駄死にはしない。
必ず一矢報いてみせる、いや倒してみせる。
決意して俺は形見のクロスを握り締めた。
相手が何であったとしても殺した後は気分が悪い。
コレは復讐の為、そして皆の為だと言い聞かせてもやはり良い気分にはなれない。
それだけ俺はまだ『人間』でいられている証拠なのだと思い込む。
既に人を手にかけた事もある。
俺はきっともうまともな人間じゃない。
さっきの魔族とやり合った時に出来た傷にヤディスを貼り付ける。
ヤディスは大きい街へ行けば何処でも売っている紙だ。
コレを貼り付けると一瞬で止血が出来る。
傷が治るわけじゃない。
あくまで止血だけだ。
俺の魔力は全て身体強化に使っている為回復魔法は使えない。
だからこういう一時的な治療用品も欠かせない。
傷の治療は街へ帰ってから治療屋で行う。
ちょっと高くつくが立ち止まっている時間が惜しい今なりふり構っていられない。
治療屋を出た後、俺は山へ向った。
マガノゼストを探す為だ。
コレはとても珍しいキノコでこの山にしか生えない。
潰れる時に激しい閃光を放ち一瞬だけだが目暗ましになる。
少しでも手段は多い方が良い。
険しい山道をドンドン進む。
やがて道が無くなり殆ど崖のような場所を登る。
簡単に取れるような所のモノは取りつくされてしまった。
どんどん山奥へ進む。
コレを採り終えて体を休めたら…
もう思いつく限りの準備は終わった。
後は魔王に挑むだけだ。
体力は20代がピークに後はドンドン下がっていく。
ゆっくりなんてしていられない。
俺ももう20代の後半に差し掛かった。
今が最高の時だ。
今しかない。




