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悪と呼ばれた私  作者: える
出会いと別れ
18/69

⑱ 裏切りの契約

大きな街はいつでも人の出入りが激しい。


だからこそソコには俺達のような『勇者』が集まる場所がある。


その一つは酒場。


酒を飲んで溜まったストレスを発散させようって腹だ。


後は宿屋。


俺達のような流れ者泊まれる宿屋なんてのは数がしれている。


そして最後に墓場。


俺達のように化物と戦って散っていく奴らを纏めて祀る慰霊碑がある。

礼儀として街に着けば一度その場所へ行き花を一つ手向ける、この場所に俺も来る事になるかもしれないから。


『勇者』なんてしてる奴は大概死が側にある。


だからこそこの慣わしには意味があるのだと思う。


今日、慰霊碑の前で会ったのは俺より少し年上の女性だった。


女だから『勇者』になれないわけじゃない。


ただ…向いては居ない。


物珍しさも手伝って俺は彼女を凝視してしまった。


その視線に気付いた彼女は俺を振り返って笑う。



「アンタも女が勇者になんか…って言いたいの?」



すらすらと出てくる言われなれているであろう言葉。

俺は首を左右に振った。



「別に珍しいな…と思っただけだ」



本心だ。


俺は他人を否定するだけの力は無い。



「そう、まぁどっちでも良いけどね」



ケラケラ笑う女に俺は黙り込む。


面倒な相手に関わったかもしれない。



「そういやアンタは契約してないの?珍しいわね」



契約者は証として額にその魔族の紋章が刻まれる。


つまり一目瞭然で契約済みかどうか解るってシステムだ。

「そういう貴方もしてないだろ」



俺がそう返すと女はまた笑う。


何がそんなにおかしいのか解らない。



「体力的に女は不利だ、でもね契約すると別。やっとアタシと契約してくれるヤツを見つけたんだ」



その通りだ。


だけど…



「魂を売り渡す行為だぜ、やめておいた方が良い」



余計なお世話だと解っていても俺はつい口に出してしまった。


言ってからしまったと気付く、女の顔は引きつっていた。

「アンタも私を貶めたいみたいね!自分が契約出来ないからってひがまないで!!」



俺の言葉は彼女のコンプレックスを刺激したようだった。


逆効果だったかもしれない。



「契約は解除出来ない、後悔する事になるかもしれないぜ」



俺の言葉に女は鼻で笑うと去っていった。


考えを押し付けるのは良くないと思っていても言わずに居られなかった。


やはり俺はお節介なのかもな。


そんな事を思いながら宿に向う。

良かったのか悪かったのか今夜の宿に彼女は居なかった。


それっきり彼女とは会うこともないだろう。


俺はそう切り替えて明日向う敵の事を考えていた。


こいつは今まで34人の犠牲者を出した吸血鬼でまぁ所謂小物だがずる賢く油断出来ない。


日光が弱点だとか十字架が弱点だとか言われているが昼間っからの犠牲者も居るし正直な所よくわからないのが本音だ。



一応クロスのペンダントはずっと付けている。


昔妹から貰った…今となっては形見だ。



クロスを握り締め誓う。


決して油断はしない、と。

翌朝、ヤツの根城といわれている城へ歩く。


蔦で覆われたそこは廃墟になって久しい事を物語っている。


俺が城へ入ろうと近づくと入り口に人影が見えた。


他の『勇者』と鉢合わせたのかもしれない。


そう思いながら近づくとそこに居たのは昨日の女だった。



「アンタ、この先に用なの?」



そう言って剣を構えた彼女の額には吸血鬼の刻印が刻まれていた。


馬鹿な…よりによって吸血鬼なんかと契約したのか!?



「契約した相手の事、ちゃんと知っているのか?あいつは吸血鬼だぞ!」



叫ぶ俺に一瞬彼女は悲しそうな顔をした。

「さっき知ったよ、契約した後でね」



何も言えなかった。


よく調べなかった彼女が悪い。

だがそれを口にするには酷な状況だ。



「焦っていたんだよ、アタシは。契約してくれる奴が見つからなくてね」



人間には手を出さないなんて俺はそんな甘い事を言ってる立場じゃない。


彼女の死体を踏み越えてでも魔王に復讐を果たす。



「アタシはまだ死にたくない!だからこれ以上進むならアンタにはココで消えてもらう。」



叫ぶ女との間合いはおよそ5歩。

俺は飛び上がって切りかかると女はそれを剣で受け止めたが重力も加わった俺の力に敵わずに後ろへ倒れこむ。



ぶつかり合った剣は俺の方が押している。


彼女の額に汗が浮ぶのがはっきりと解る。


その隙を突いて俺は女の剣を握る手を蹴り飛ばした。


倒れた状態で剣を支える力が弱っていた所為か剣は簡単に吹き飛んでいった。


ここで油断してはいけない、俺が喉元に向って刃先を突きつけても彼女は動じなかった。


コイツもこれでいて歴戦の『勇者』に違いないのだろうと思う。




が、俺は剣を止めなかった。

















吸血鬼は彼女以上にあっけなかった。




語るほども無い。






俺は慰霊碑に彼女の名を刻もうとして名前を知らなかった事に気付いた。

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