⑰ 勇者の覚悟
世の中で『勇者』と言われる大概の奴は契約者だ。
契約すれば簡単に強くなれるから。
けど俺はそれだけはしたくなかった。
あいつらの力を借りるのは真っ平御免だしそれに契約は危険なモンだ。
命を握られて良い様に使われる事だってある。
契約は一度結ぶと死ぬまで解除出来ない。
だから契約相手の魔族に殺される事だって珍しくないもんだ。
実際俺はそういう『勇者』を何人も見てきた。
けれど人間の『魔力』なんて高が知れている。
俺はそれを全て身体強化に使っているから他の事は一切出来ない。
普通の人より少しだけ打たれ強く少しだけ高く跳躍できて、ちょっとの温度変化に耐えられる。
そんな程度の事。
だがこのままではアイツに勝てない。
俺を叩いた時のマコトの顔を思い出す。
あんな泣き顔をさせたかった訳じゃない。
全ては俺が弱いせいだ。
強くなりたい。
けどその為に悪魔に魂を売り渡してしまっては元も子も無い。
ただ俺が鍛えて強くなるのには限度がある。
あの炎を耐えるには「アルウィストロの実」っという手を考えている。
この実を食べれば30分はどんな温度変化にも適応出来る。
ただし…寿命の半分を削るそうだ。
実際の所あまりのリスクの高さから殆ど使用者は無い。
俺なら寿命半分位魔王を倒す為ならくれてやれるさ。
接近戦に持ち込めば剣技で引けをとらない自信はある。
あとは持久戦になって負けないよう毎朝の走り込みや筋力トレーニングは勿論他の修行も怠らない。
だが…それでも魔王に勝てる気はしなかった。
まだ、まだ何か足りない。
俺はその答えを見つける事が出来ずあと一歩が踏み出せないでいた。




