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悪と呼ばれた私  作者: える
出会いと別れ
14/69

⑭ 兄弟

イザンはどうしてんだろーな。


あいつはしっかりしてるから俺が居なくても大丈夫。


ずっとそう思って放って置いたが。


ここ最近の世界情勢の変化からいってあいつにも何かあるかもしれねぇよな。


兄としてアイツを守ってやらないと…俺は生まれた時から人に忌み嫌われる存在だった。


この赤い目は人の血を吸って生きてきた証拠だと。


けどイザンは違った。


兄として出来る事は全てしてやりたい。


憎まれる事は全部俺が引き受けた。


やっぱそういうのは当然だろ?

一時間も飛べば帰れる距離だったのに俺はここを飛び出してから一度も戻ることは無かった。


それは単にイザンへの信頼からくる物だったし俺はもう無用の者だからだ。


町の風景は俺が飛び出した頃とは全く変わっていた。


それも当然か…なんせ200年だからな。


捨てた筈の故郷は戻ってみれば思い出に満ち溢れていた。


あの山でよくイザンと遊んだ。


いつも水浴びしていたのはこの湖だった。


食事をとるのは決まってここから広がる森の中で…


目下に広がる景色は懐かしくも楽しい思い出ばかり呼び起こす。



俺は何度か旋回してから飛び出した「家」に戻った。

「おうイザン!久しぶりだなぁ!」



俺が声をかけるとイザンが目を丸くしたまま固まっていた。


おいおい、そんな驚く事じゃないだろうが。



「兄さん…どうして今まで帰って来なかったんだ!」



心配したんだからな…と鼻をすするような声に俺の方が泣きそうになる。


なんだよ、やめろよそういうの。



「この200年で俺は兄さんが何を思って出て行ったのか解った…俺はずっと見捨てられたんだと思っていた。」



震える声で話すイザンの背中を尻尾で叩いた。


俺がお前を見捨てるなんて事あるわけ無いだろ。

「俺の為…だったんだろう。」



視線を合わせず話すイザンに情けないと思う反面俺が悪かったのかと少しだけ反省した。


お前を信じて出て行ったんだぜ俺は。



「兄さんはいつだって何も言ってくれなかった!俺は兄さんが出て行った後にどんな想いをしたか!


感謝の気持ちも謝罪さえも伝えることすら許してくれなかった。」



礼を言われる事も謝られるような事も俺はした覚えは全く無いぜ。


笑って伝えればイザンの顔が更に歪む。



「人間の集会所に呼ばれた時、俺が着地に失敗して屋根を破壊した…何故かそれは兄さんが壊したことにされていた。


俺がまだ小さかった頃、見かけた人間の子供に怯えて怪我をさせた事があっただろう?


あれも何故か兄さんが怪我をさせた事になっていた」

なんだそんな事強いて言うなら兄として当然の事ばっかりじゃねぇか。


気にすんなそんな瑣末なこと。



「どこが瑣末なんだ!!兄さんがそんなに泥を被る必要なんてないだろう。」



そんな大層な理由じゃない。


俺がそうしたかったんだ、んなに怒るなよ。


俺は羽を伸ばしながら出来るだけ軽く言ったつもりだった。



「兄さんは……」



イザンは苦々しい表情で俯いたまま何も言わなくなった。


おいおい、俺はお前にそんな顔させる為に帰ってきたんじゃねーぜ。

なぁ。



「…折角帰ってきてくれたのに、すまない。おかえり兄さん。」



色々言葉を飲み込んだんだって解る表情だが俺はなにも言わない。


ありがとな。



「今回俺が帰ってきたのは他でも無ねぇ…お前ウォズの事どう考えてる?」



突然話を切り替えすぎたのかイザンが話しに乗ってこずに悩んでいる。


俺はもう一度同じ質問を繰り返した。



「俺はどっちにも付く気は無い…人間を庇ってやる義理も無いだからと言って皆殺しにする理由もない。」



イザンの返答に俺は安堵した。

どう考えたってそれが一番安全だからな。


無意味に敵を増やす必要なんてねーんだよ。



「兄さんこそどうするつもりなんだ?」



俺?俺様はいつか世界を支配するんだぜ。


笑って見せるとイザンは小さくため息をついた。


なんだよ。



「兄さん変わってないな…だが本気でも無い癖にそういう事は言わない方が良い。」



…バレてたのか。


伊達に何百年と一緒に過ごしてきただけはある。

「それ位は俺でも解る。」



そうか、と吐き出して俺は立ち上がった。


もう日が傾き出した。



「…ここに居てはくれないんだな。」



苦虫を噛み潰したような表情のイザンに俺は一瞬だけ揺れた。


待ってる奴が居るからな。


そう笑って返すとイザンは今にも泣き出しそうな視線を向けて来た。


おい俺はお前をそんな泣き虫に育てた覚えはないぜ。



「明日、話しの続きをしたい…もう一度来てくれないか?」



俺はそれに肯定して故郷を後にした。

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