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悪と呼ばれた私  作者: える
出会いと別れ
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⑫ 魔王の想い

ウォズさんの真直ぐな瞳が揺れているのがわかります。


私は黙って続きをさとしました。



「俺がココに住んでもう何千年になるか…自分でも覚えていない。こんなだからな、こいつらと一緒に静かに暮らしていた。」



ウォズさんは肩に座る妖精さんの頭を撫でながら話し出した。


擽ったそうにそれを受け止める妖精さんを見てウォズさんの言葉にきっと嘘はないんでしょう。


私でもそう判断できます。



「この森は深いからな…滅多に人なんて来ない。ところが25年前…小さな人間のガキを拾った。レナスという3歳のガキだ。」



単純計算で今は28歳なのでしょうね。


お名前から判断するに男性の方でしょうか。

「行く所が無いというレナスを俺は育ててやった。一緒にメシ作ったり…本を読んでやったり、戦い方も教えてやったしな。」



目を細めて話すウォズさんにとても大切にしている思い出なんだろうと…


私は頷く事しか出来ない。



「アイツが16になった頃大変な事が解った…あいつはある国の王子で王位継承のゴタゴタでこの森に捨てられたんだと。」



ハっと鼻で笑うウォズさんに影が見え始めた。


王位継承…しかも王子ですか。



「王子が生きている事を知ったその国の使いが現れた…上の王子が死んだから戻ってきて欲しいってな。」



なんて勝手な!


思わず口から滑り出た私の言葉にウォズさんは頷いた。

「俺もそう思った…けどなアイツは違った俺を必要としてくれているなら帰りたい、そう…言ったんだ。」



辛そうなウォズさんに私は次の言葉が出ない。


なんと声をかけて良いのか全くわかりません。



「俺は…寂しかったがアイツももう大人だ、俺はアイツの決断を黙って受け入れるしか無かった。」



俯いて両手を握り締めるウォズさんに私も悲しくなってきました。


頷く以外どうして良いのか解りません。



「だが、アイツの幸せの為俺は笑って見送ってやる事にしたんだ、でもな…それが失敗だった。」



キッと誰を憎んでいるのか解らないですがウォズさんの瞳が鋭くなった。


そんな顔をさせるなんて何があったのでしょうか。



「その国は王が魔物に育てられたなんて不名誉な事は隠したかったんだろうな、この森に火を付けた。俺は力の全てをかけて消した…が、

沢山の精霊や妖精達が犠牲になった。」


今ここの妖精さんが一人というのは…


助けられ無かった事は今も貴方の悔いになっているのですね。



「俺はレナスに直談判しに行った…途中沢山の奴に攻撃されながら…な。」



傷だらけのウォズさんが直談判しに行く姿が目に浮かぶようで涙がこみ上げて来ました。



「俺がレナスの所に辿りつく頃には人の側に沢山の犠牲者が出ていた…俺はそんな事に構っている余裕が無かったからな。」



それだけ必死だったのですね。


私は穏やかで居られる筈の無いウォズさんの心情を思うと咎める気持ちになれなかった。



「レナスは俺を見つけると開口一番こう言ったんだぜ…なんてことしてくれるんだ!俺はウォズを信じていたのに。本当は俺が言いたかったんだそれは。」



一国の王としてレナスさんはウォズさんを放置出来なくなってしまったのですね。


誰が悪いとは言えない、私はレナスさんもウォズさんをも責める事が出来ないです

「アイツは俺の言葉は何も聞かずに斬りかかってきた、俺が教えた剣技で…


裏切られた怒りが消えず魔力をアイツに向けちまった。


レナスは簡単に死んだよ。


それを横で見ていた側近が勝手にペラペラ喋りだした。


火を付けたのは自分だ、レナスは何も知らないってな。


そして俺を責め立てた。


王子を殺した極悪だと城中全てが敵になり俺は身を守るため全てを潰してやったのさ。


その後も人間からすれば俺は城一つ潰した極悪なモノだ…奴らはこの森に俺を殺す為、軍隊を組みココへ送った。


また沢山の妖精や精霊が犠牲になった、奴らは俺一人殺すだけでは飽き足らないらしい。


だから…だから俺は人を滅ぼす事を決めた。」



震えるウォズさんに、私はかける言葉も見つからず。


ただ冷たい雫が頬を伝うのを感じただけ。



「なんでお前が泣くんだ。」



困ったように笑うウォズさんは私の頬から涙を掬い上げた。


本当は私以上に何倍も悲しそうな顔を貴方はしておられましたよ。


「俺はもうこの道を進むしか無いんだ。」


どこか決意した目で遠くを見つめるウォズさんの服の裾を思わず掴んでしまいました。


何か…きっと何か他の方法がある筈です。


それがどんなモノなのかさっぱり思いつきませんでしたがこの綺麗な緑の瞳が…あんなにお優しい貴方が。


そんな辛い選択をする必要なんて無いでしょう?



「ありがとな。」



そう言って私の頭を撫でた後ウォズさんは私の後ろを指差しました。


えっと思わず振り向いて見ましたがそこには何もありません。


真意を確かめようと振り向いたときには既にウォズさんの姿はありませんでした。


妖精さんが黄色い花の上で静かに座っています。


「もう…行ってしまわれたのですか?」



かがんで訊ねると妖精さんは静かに頷きました。


結局私には何もできませんでした。


一体誰が。


何が正しいのでしょうね。


空に向って呟いた言葉に返事は返ってきませんでした。


暗くなってしまった空は私にはとても冷たい。


単なる被害妄想でしかないのかもしれませんが…


そろそろ塒に帰らないと。


私は妖精さんに手を振って花畑を抜け出しました。

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