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理系女子の恋  作者: 流音
237/246

224、平然を装う


待ちに待った卒業式予行練習日の朝―――――


私はいつもより早く支度を終えると、30分も早く家を出て井坂君を待った。

二週間ぶりに井坂君に会えると思うと胸が弾む。


この二週間は本当に長かった。

でも、この二週間を乗り越えたからこその自信を獲得していて、私は気分が晴れやかだった。


この毎日井坂君を想わない日はなかった。

確かに会いたくて苦しかったけど、でも今日という日がくるって分かってたから、楽しみな気持ちも大きかった。


このことは私の中で大きな収穫となって残った。


会えない期間があったから、こうして会える日を心待ちにしてウキウキしている自分がいる。

これは毎日会ってたら分からなかったことだ。


また苦しい期間を乗り越えたという達成感もあって、今後離れても大丈夫な予感がしてる。

私の勝手な思い込みかもしれないけど、きっと大丈夫だって心が言っている。

私はまるで新しい自分になったようで、新しい自分発見につい顔がニヤけてしまう。


早く会いたいな~…


チラチラと井坂君が来る方向を見ていると、井坂君はいつもの時間より10分早く姿を見せた。

私はそれに気持ちが浮き上がって大きく手を振る。


すると井坂君は一瞬足を止めてビックリしているようで、私は待ちきれなくて駆け寄る。


「おはよっ!井坂君!早いねっ!!」

「はよ…。早いって、詩織の方が早いじゃん。いったいいつから待ってたんだよ?」

「えっと…、ちょっと前かな。早起きしちゃって。」


私はさすがに20分も前から待っていたなんて言えなくて、笑って誤魔化した。

すると井坂君が嬉しそうに微笑む。


「そっか。じゃあ、俺と一緒だ。俺も早起きしてゆっくり歩いて来たから。」

「本当!?一緒とか嬉しい。」


私は一緒なのもだけど、こうして会えたことも嬉しくて自然と笑って言ったら、井坂君が学校に向かって歩き出しながら顔を背けてしまった。

私は久しぶりの井坂君の顔をもっと見ていたかったので、反対側に回って井坂君の顔を覗き込む。

そのとき私の目に照れて頬を赤く染めた井坂君の顔が飛び込んできて、2週間ぶりに胸がキュンっと高鳴った。


「ちょっ…、なんでこっち来んだよ…。」

「…え、だって、井坂君の顔…見たかったから…。」


私は井坂君の照れた顔に自分までつられて照れてしまう。

すると、井坂君がじとっと私を見つめて言った。


「なに?そんなに会えないの寂しかった?」

「え!?!?」


井坂君に図星をつかれて一瞬困ったけど、ここは成長した自分を見せたくて見栄を張る。


「う、ううん。意外と平気だったよ。」

「ふ~ん…。」


井坂君は私の返答を怪しんでいるのか意地悪そうな笑みを浮かべる。


「おかしいな~。赤井からは違う事を聞いたんだけどな~?」

「え!?!?!赤井君っ!?」


私は赤井君の名前が出たことに身が縮み上がって、思わず井坂君を凝視した。

井坂君はニヤッと意地悪な笑みを消さない。


それを見て、赤井君経由で全部バレてると分かり、見栄を張った自分が恥ずかしくなった。


赤井君のおしゃべりっ!!


「知ってるなら聞かないでよ。見栄張った自分がバカみたい。」


私は試されたことに少し腹を立てて、井坂君を軽くパンチすると足を速めた。

井坂君は「悪い、悪い。」と笑いながら追いかけて並んでくる。

だから、私も聞いてみたくてちらっと井坂君を見上げると尋ねた。


「井坂君は?…寂しかった?」


井坂君は私の問いにニッコリと笑うと、求めてた答えじゃないことを口にした。


「まさか。俺が言い出したんだし。全然大丈夫だったよ。」

「…そ、そっか…。」


私は電話した時も思ってた通り、やっぱり自分だけだったか…と少し残念に思いながらも、この二週間は私のための強化期間だったと思い直し、少し成長した自分を誇らしく思う事にした。

それを井坂君にも伝えたくなって、ここ最近の変化を井坂君に話す。


「あのね、私はこの二週間すっごく会いたかったんだけど。そのおかげでちょっと成長した部分もあってね。」

「うん?」


井坂君は歩きながら、私の方に身を寄せて耳を傾けてくれる。

私は距離の近さにドキドキしながら、話を続ける。


「会えなくても乗り越えられるんだって自信ついたんだ。だって、会えなくても電話で声聞けるし、今日会えるって分かってたから楽しみな気持ちも大きかったし!」

「へぇ…。」

「だからね、きっと大学に行っても大丈夫だよ!私、そんな気がしてて、今すっごく気分が良いんだ!!」

「そっか。なら、この強化期間も意味があったんだな。」

「うんっ!!」


私は井坂君に自分の成長を分かってもらえて、更に胸が弾んだ。


今日はすっごく良い日になりそう!


私はただ隣にいてくれる井坂君の存在に力をもらっていて、口では大丈夫と言ったものの、こうして隣にいてくれるのが一番だと嬉しくて仕方なかったのだった。





***





そして二週間ぶりの学校ではまずHRがあり、藤浪先生の話を聞いた。

明日の卒業式では必ず正しい制服の着用をすること…等の注意だ。


私はとうとう明日か…と思うと、この教室が名残惜しくなってしまった。

それは皆も一緒だったのか、休み時間にあゆちゃんたちも同じことを言っていた。


「とうとう明日なんだね…。」

「だね。なんか三年間あっという間だったな~。」

「うん。寂しくなるなぁ~…。」


あゆちゃん、アイちゃん、新木さんといつも元気な面々が沈んでしまって、こっちが気を遣ってしまい、ツッキーが言った。


「だったら、今日の帰りカラオケでも行ってパーッと盛り上がる?前夜祭みたいな感じで。」

「それいいね!!卒業したらもう会わないメンバーも多いし、今日は女子だけで盛り上がろうよ!!」

「うんっ!!どうせ明日はクラスで打ち上げになるんだろうしね。」


篠ちゃんやゆずちゃんまで乗り気になり、私はタカさんと顔を見合わせた。

タカさんはふっと笑みを浮かべた後、「いいんじゃない?」と言って、沈んでた三人がその言葉に表情を明るくさせる。

だから私も同意するしかなくなって「じゃあ、帰りにカラオケだね。」と口にした。

それで三人は完全に気分を上げ、いつも通りのテンションで「カラオケ大会だーっ!!」と盛り上がり始める。


元気出たみたいで良かった

ちょっとだけ井坂君と帰れないのは残念だけど、今回ばっかりは仕方ないよね


私は女子の皆でカラオケに行くことになったと井坂君に言いに行こうとしたら、ちょうどスピーカーから『三年生は体育館に集合してください。』と放送がかかり、言えなくなってしまった。


そしてまた後でいいかと後回しにした結果、井坂君に言えたのは予行練習も終わった、もう帰るという頃になってしまったのだった。


「だから今日は一緒に帰れないんだ。ごめんね?」


私が帰る準備を整えて席に来てくれた井坂君を見て説明すると、井坂君は顔を強張らせていた気がするけど、すぐ笑顔を見せて言った。


「いいよ。詩織、八牧以外とは大学もバラバラになるんだし。今日ぐらい楽しんで来いよ。」

「ホント?ありがとう、井坂君。」


私は強化訓練の成果か心の広い井坂君を見て、すんなり納得されたことも寂しかったけど、許してくれた井坂君に嬉しくなった。


こういう井坂君を見ていると、もっと自分は頑張って寂しさを乗り越えないと…と思ってしまう。


「じゃあ、また帰った頃に電話するね。」


私は教室を出て行くあゆちゃんたちを追いかけようと、井坂君に手を振ってから皆の後に続いた。

そうしてタカさんの隣で歩いてついていったら、タカさんがちらっと私を見て言った。


「井坂君、なんて?」

「いいよだって。なんかアッサリ行って来いって言われて、寂しくなっちゃった。」

「へぇ…。あの井坂君がねぇ…?確かここ二週間会ってなかったんじゃなかったっけ?」

「うん。遠距離を見据えた特訓で会ってないよ。今日久しぶりに会えて、すごく嬉しかった。」


私は久しぶりに井坂君の隣を歩けただけで満足していて、自然と頬が緩む。

するとタカさんがふっと鼻で笑った。


「しおりんは素直になったのに、あっちは相変わらずか…。強がりがいつまで持つのかなぁ~…。」

「??強がりって何の話?」

「いつか分かるよ。さ、それよりカラオケ行こ。」


タカさんはさっさと靴箱で靴を履くと、先に歩き出してしまって、私は慌てて履き替えると追いかける。

タカさんが何を言いたかったのか、そのとき私には分からなかったけど、これは案外早く分かることになるのだった。





***





『詩織とタカちゃんは桐來大。そしてマイとアイは桃院女子大。こっちが関西勢。』


カラオケでだいぶ歌いつくしたあゆちゃんが、マイク片手にビシッと私たちを指さしながら口上を述べ始める。

私たちはジュースを口にしながらそれを見て、何が始まったのかと見守る。


『そして私、ゆず、茜はここ地元大にそれぞれ進学!!そしてそして~!!一番驚きなのが、月奈の東京進出っ!!見事、碌南大に合格っ!!おめでとーっ!!』


よく耳にする東京の私立大の名前に、私たちはツッキーに拍手を送った。

ツッキーはいつもの男勝りな笑みを浮かべて、「そんな凄いもんじゃないから。」と謙遜する。


『凄いに決まってんでしょ!?だって碌南大の…何工学だっけ?すっごい倍率高いとこなんでしょ!?』


あゆちゃんのテンションの上がった高い声にツッキーが苦笑いを浮かべながら、「マイナーだからそこに集中するだけだよ。」とまた謙遜する。

私はどこまで凄いのかよく知らなかったので、とりあえず凄いんだとあゆちゃんに同意して盛り上げていたら、あゆちゃんが急に制服のポケットからケータイを取り出した。


そしてマイクを下げてから「ごめん。」とケータイを耳に当てて、部屋を出て行ってしまった。

それをきっかけにツッキーはチャンスとばかりに曲を入れて、歌い出そうとしてしまう。

私はどう凄いのか気になったので、ツッキーの方へ身を乗り出すと訊いた。


「ツッキー。マイナーな学部って、何を勉強するところなの?」

「んー?…まぁ、簡単に言えば日本の最先端技術を開発するような学部かな。」

「……最先端技術??」


ツッキーは曲を入れる手を止めながら説明してくれる。


「就職先で言うと手術機材とか、あとはケータイに入ってる部品?なんかの関係が多いかな。興味がなかったら行かないようなとこ。だから、あゆが言うほどのものじゃないよ。」


私は話を聞いているだけで、何やら難しそうだというのは理解したので、「なんか凄そう…。」と素直な感想を口にした。

それにツッキーが楽しそうに笑い出す。


「しおりんは何でも真剣に聞いてくれるからいいね。初めて説明してて良かったって思った。」

「え、本当?私たぶんツッキーの行く学部の半分も理解できてないような気がするよ?」

「あははっ。正直だね。でも、関係なければ誰でもそうなるよ。」


ツッキーは曲を入れると「しおりんはそのままでいてよね。」と言ってマイクを構えて、私は褒められたのか?と首を傾げながら、ツッキーの歌を聞いたのだった。

そしてしばらくカラオケを皆で楽しんでいたら、ケータイを持って出て行ったあゆちゃんが戻ってきて、私に手招きした。


あれ私を呼んでる?


私はまっすぐあゆちゃんを見て、自分を指さしてジェスチャーすると、あゆちゃんは顔をしかめて大きく手招きした。

そして歌の音に紛れて「詩織!」と呼ばれる。


なんだろう?


私は隣に座ってたタカさんを避けて、なんとかあゆちゃんのいる扉まで辿りつくと、あゆちゃんが私の手を引いて歩き出した。


「あゆちゃん、どうしたの?」

「ついてくれば分かる。」


あゆちゃんはスタスタと廊下を早足で進むと階段を下りて、カラオケ店のロビーまで私を引っ張った。

そこであゆちゃんが私を連れてきた理由が分かる。


「井坂君。」


ロビーのソファに井坂君が座っていて、私は井坂君がいたことにビックリした。

あゆちゃんは私の背を押すと、不機嫌そうな声で言った。


「30分だけね。詩織、鞄とか上着部屋に置きっぱなしだから。」

「分かってるよ。」


何やら闇取引のように二人だけで会話がなされていて、私は二人を交互に見て頭が混乱しかけた。

あゆちゃんは井坂君の返事に満足したのか、くるっと踵を返して部屋に戻って行ってしまう。

それを見て何なのか井坂君に聞こうとしたら、井坂君は受付カウンターで店員さんと話を始めてしまった。


「一部屋、30分だけお願いします。」

「えっと…お二人様ですか?」

「いや、こっちの子は別の部屋で会計するんで、俺一人で。」

「はぁ…?」


店員さんはチラチラと私を気にしながらも部屋を用意してくれるようで、モニターを見て手続きしている。

それを見て聞くなら今だと、井坂君に声をかけた。


「井坂君、これ何?なんで部屋借りてるの?歌いたいなら私たちのいるところに来れば―――」

「いいから。」


井坂君はピシャリと一声で私を黙らせると、店員さんから部屋番号札を受け取って、私の手を掴んだ。

そして急ぎ足でとった部屋まで来ると、私を先に部屋に入れてから扉を閉めてしまう。

それを見て何か誰にも聞かれたくない大事な話をするのかな…と思っていたら、鞄と上着を椅子の上に投げ捨てた井坂君に強く抱き締められた。


!?!?!?


私はいきなり抱きしめられたことにビックリして、思わず後ずさった。


「いっ、井坂君っ!?!?」


そのとき私の足が椅子に当たり、バランスを崩して後ろ向けに椅子に腰を落とした。

その拍子に井坂君の腕の力が緩んだのを感じて、私はそのまま後ろに下がって井坂君から離れるよう部屋の隅まで逃げた。


「きゅ、急にどうしたの!?ここカラオケだよ?井坂君、何か話あるから来たんじゃないの?」


私は聞きたい事は山ほどあったけど、とりあえずここに来た目的を最優先に知りたかったので焦りながら訊いた。

井坂君は椅子の上をゆっくり私の方へ近づいてきて、私は距離が迫ることに身を強張らせた。


「話なんかねぇよ。」

「な…、ないって…じゃあ、なんで?」


井坂君はどこか鋭い光を持った目で私を貫いてきて、それが少し怖いのに胸はずっとドキドキと高鳴っていた。

そしてとうとう井坂君は私の目の前まで来ると、後ろの壁に手をついて吐息がかかる距離まで顔を近づけて言った。


「言わなくても分かるだろ。」

「分かるって…―――」


私は更に近づく井坂君の顔を見てギュッと目を瞑って口を閉じた。

そこに二週間ぶりに井坂君の唇が遠慮がちに触れてくる。


私は久しぶりのキスにドキドキして身体を縮こまらせていたら、遠慮がちだったキスが強引なものに切り替わった。

閉じた唇を割って井坂君の舌が入ってくることに、身体がビクついて思わず井坂君の制服を掴む。

こんな感覚を忘れかけていたのもあって、まるで初めてみたいに緊張してジワ…と汗が滲んでくる。

耳にドックンドックンと荒い心臓の音が響き、胸が苦しい。


私はさすがに長くてそろそろいいかと顔を背けたら、今度は頬や耳、首筋にキスされて身体が敏感に反応する。


「い、井坂君っ…。やめっ…!!」


私は荒くなった息を吐き出しながらなんとか口にすると、井坂君は私の瞼に口を落としてから、また深く口付けてきて、身体の奥がジンとなって熱くなってくる。


これ以上は…死んじゃうっ…!!


私は井坂君が今までにないぐらい激しくて、ドキドキし過ぎで殺されると思った。

それを回避するために、私は井坂君との顔の間に手を差し入れてキスを阻止する。


「ほんとに…もうダメっ…。苦しくて…息ができないっ…。」


私は短く何度も息をして真っ赤な顔で訴えると、その顔を井坂君の大きな両手に包まれて固定される。

その行動に今度は何だろうと、閉じていた目を開けると熱を持った井坂君の顔が飛び込んできた。

私がその顔にまた鼓動がドキドキと荒くなってきていたら、井坂君が優しく私の頬を撫でながら言った。


「大丈夫なんて…嘘だ…。」

「え…?」


私はやっと会話できそうな空気に訊き返す。


「会えなかった間…、すげー寂しかった…。」


井坂君が少し目を伏せて本音を打ち明け始めて、私は今朝の会話のことかとじっと耳を傾けた。


「ずっと…毎日、毎日…詩織に触りたかった。こういうことしたくて…、我慢して…死ぬかと思うぐらい苦しかった。」


……毎日…?


私はさっきの激しいキスの嵐を思い返して、顔が熱を持ってくる。


あれが毎日は……さすがに、ちょっと…


私は嬉しい反面複雑で、苦笑いを浮かべるしかない。

すると井坂君が顔を俯かせて、さっきよりトーンを落として言った。


「詩織は…何か乗り越えたかもしれねーけど…、俺にはまだ無理だ…。だから…、朝あんな見栄張っちまった…。今日をすげー楽しみにしてたのに…。」

「そうなの?」


私は全く自分と同じことを思ってた井坂君にビックリした。

井坂君は顔を上げると、拗ねたように言う。


「……詩織に早く会いたくて…いつもより30分も早く家出ちまって…、さすがに早過ぎると思って…コンビニで時間潰しして向かったんだ…。だから、ゆっくり歩いて来たとか大嘘だから。」


私は家を出た時間まで一緒なことに胸が弾んで笑い声が漏れる。


「うそ~…、私もだよ?」

「え?何が?」

「だから家を出た時間。私も30分も早く出ちゃったんだ。だから、ちょっと前とか嘘なんだ。ごめんね?」


私からの告白に井坂君は目を丸くさせてから、肩の力を抜いたように笑った。


「なんだそれ…。俺らバカみてぇじゃん…。こんなことならコンビニで時間潰さなきゃ良かった…。」

「あははっ。そうだね。なんか今日は色々一緒で嬉しいなぁ。」


私は自分だけじゃなかったことを知り、気分が良かった。

すると井坂君が私の頬を包んでた手に力をこめてくる。


「いや、一緒じゃねぇから。会いたかったとか言っておいて、アッサリ俺を置いてカラオケに来たのはどこのどいつだよ?」

「え…?だって、井坂君だって行っていいって…。」

「そりゃ、詩織が行きたそうにしてたら行けって言うしかねぇだろ!?俺の優しさを鵜呑みにするなんて、俺の複雑な男心が分からねぇんだからなぁ~!!」

「分からないって…、そんなの言ってくれなきゃ分かんないよ!!」


私はそんなことを思ってたなんて知らなくて、怒る井坂君に言い返した。

そしてそのまま口論になるかと思っていたら、井坂君は手の力を緩めて私の耳の後ろ辺りに手を移動させた。


「時間ねぇから、この話はまた後で。じゃ、さっきの続き再開で。」

「え!?再開!?!?!」


私は急な再開発言に心臓が跳び上がると、逃げようと腰を浮かせた。

でも先に井坂君にキスされて、足に力が入らなくなり浮かした腰をまた落とす。


そしてさっきより激しくなるキスの嵐に、私は今度こそ殺される…と気が遠くなったのだった。








タガが外れた井坂でした。

ちょこっと続きます。

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