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理系女子の恋  作者: 流音
220/246

207、男子会

井坂視点です。



「うっわ~…、そんなことがあったのかよ…。」


俺が島田に頼まれて、北野や赤井の集まる島田の家に勉強を教えに来ていたら、詩織とのことを聞かれたので寺崎とあったことを話題に出した。

すると赤井が島田のベッドの上に寝転びながら、嫌そうに顔を歪めて、北野と島田も寺崎を知ってるだけに複雑そうな表情を浮かべる。


「あいつからなんか嫌な空気を感じたんだよなぁ~。まさか告ってくるとは思わなかったけどさ…。」


赤井から出た言葉に、俺も同じことを思ってただけに頷いて同意した。


「そうなんだよな…。あいつ、詩織に絡んできてはいたけど、決定的なことはしないタイプに見えたからさ…。まさか自分から告るとは…。」


俺は寺崎の最初の印象でプライドの高そうな奴だと認識していたので、自分から告白なんてしないタイプだと思ってた。

でも、告ってきたということは俺の図り間違いなのだけど…


「う~ん…、それだけ谷地さんが特別ってことはねぇ?だって、仮にも中学の時、自分は告られてた身分なわけだし。少しぐらい好かれてる自信があったら、絶対自分からは告らねぇだろ。」

「だよな。振った過去がありながら告るとか、相当覚悟もってそうで、俺だったら怖いかな。」


北野がまるで自分のことのように少し顔色を青ざめさせて言って、俺はそれも感じていて詩織に言い様のない不安をぶつけただけに、口を噤んで黙る。

すると赤井がちらっと横目で俺を見ながら、探るように言う。


「お前、やけに落ち着いてんな。谷地さん絡みで嫉妬しねぇのなんて珍しくねぇ?」


ギク…


「そういえば…。普通だったらお前、相当荒れてそうだけど…。そうでもねぇなぁ?」

「何かあったわけ?」


赤井に続き二人にまで問われて、俺は素知らぬ顔が保てなくなる。

三人からじっと見つめられて、俺は我慢できなくなり、ついに表情が緩んで手で顔を隠す。


すると三人は相当気になったのか、俺の周りに集まって詰め寄ってくる。


「なんでそんな嬉しそうなんだよ!?」

「きっと谷地さんとなんかあったんだよ!」

「こら井坂!!吐け!!」


俺は赤井からグラグラと体を揺すられて、思い返していた光景までゆらゆらと目の前を揺らめく。


あの日、俺は詩織から必死の謝罪を聞いて、詩織の中にある確かな『愛』を感じた。

寺崎なんか足元にも及ばないほどの、俺への気持ちを深く刻み込まれて、俺は正直寺崎のことなんかどうでもよくなってしまった。


詩織は俺が思うよりも、俺の事が大好きで、俺がいなきゃダメだと思ってる。


それは俺が我が儘を言っても、その通りに望みを叶えようとしてくれた姿で気づいた。

恥ずかしがり屋な詩織があそこまでしてくれたんだ。

こんなことしてくれるのは、俺以外にいるわけがない。


俺はあの日の一件以来、確かな自信を確立していて、愛されてる嬉しさに顔が緩んで戻らない。


そうしてにまにまと気持ち悪く一人上機嫌になっていると、何も言わない俺に焦れたのか赤井に頭をスパンッと叩かれる。


「話せっつーのに!!」

「いってぇな!!叩くことないだろ!?」

「意識がどっか飛んでたから気づかせてやったんだろ!?感謝しろ!」

「はぁ!?意味が分からねぇ!!」


俺が赤井と言い争いをしていると、島田と北野の手が割り込んできて引き離される。


「落ち着けよ。お互い頭に血が上ってちゃ話にならねぇだろ?」

「そうそう。井坂が妄想してんのなんて珍しいことじゃねぇじゃん?」


「妄想じゃねぇよ!!現実だ!!」


俺は詩織とあった事を否定された気分で言い返すと、赤井に頬をつねられる。


「だからその現実を話せっつってんだよ~!!!」

「いたいっつーの!!」


「だから普通に話せよ!!手を出すな!」

「赤井!手離せ!!」


島田と北野が赤井を俺から引き離してくれ、俺はつねられていた頬を擦る。

赤井はそんな俺を見て「素直に話さねーからだ!」とムスッとしてしまう。


俺も大概自分勝手だけど、赤井もかなり自分勝手だよな…


俺は理不尽だと思いながらも、話さないと更に機嫌を損ねてしまいそうだったので、軽く話すことにして三人から少し顔を背ける。


「別に…大した話じゃねぇよ。……ただ、詩織って…、俺のことすげー好きなんじゃねぇかって…思ったぐらいで…。」


「「はぁ??」」


俺の告白に三人はぽかんとしてしまう。


「いや、当たり前だろ?」

「は?今まで谷地さんの気持ちどう受け止めてたわけ?」


「や、ちゃんと好きだってのは分かってたんだけど。なんだろ…、その好きにもレベルあるだろ?こう、俺の方が詩織の何倍も好きだと思ってたから、まさか詩織も俺のことそこまで好きだとは思わなくて…。」


「バッカじゃねぇーの?」


俺が気恥ずかしくなりながら照れて話すと、赤井がげんなりした顔で言った。

島田も北野も呆れたような顔をしている。


「そんなの周知の事実だろうが。谷地さんほどお前のこと好きな奴はいねーよ。」

「……へ?周知の事実??」


俺がそこまで当たり前のことなのか…と目を丸くしていると、北野が顔をしかめて島田を叩いた。


「当たり前だろーが。だから、こいつは谷地さんに告白もできねーんだからさ!」

「おい!!俺を巻き込むなよ!!」

「なんだよ、お前まだ谷地さんのこと諦めきれてねぇんだろ?だから志望大だって、谷地さんと同じ桐來にしたクセに。」


「は!?」

「なっ!?!?違うっつーの!!俺は純粋に教師になりたいと思ったから、桐來にしただけで!!」

「でもお前の成績じゃギリギリじゃんか。もっと手頃なとこあっただろ。」

「目指すならギリギリ手の届くとこ狙うだろ!?それだけだよ!」


「おい。お前ら、落ち着け。今は井坂の話だろ~。」


真っ赤になった島田と北野の言い争いに、俺がそれは事実なのか?と様子を窺っていたら、赤井が手を打ち鳴らして中断させてきた。


「井坂。なにかにつけてすぐ不安になるお前だから、なんとなく谷地さんの気持ちを測り間違えてんじゃねぇかと思ってたよ。」

「測り間違い?」


「おう。お前は自分ばっかりが、谷地さんのこと好きだって思ってたみたいだけどな。周りから見てたら、谷地さんも相当なもんだからな?」

「………そんなに?」


俺はそんなこと初耳なだけに、信じられなくて赤井の顔を凝視してしまう。

赤井はどこか楽しそうに笑いながら言う。


「谷地さんはさ、まずお前と話すときと、他の男子…俺らとかと話すときの顔が全然違う。」

「それは…どんな風に?」

「一番分かりやすいのは笑顔かな。笑って井坂と話す谷地さんは、笑顔から好きだ~ってオーラが出てる。な、そう思うよな?」


赤井が島田や北野に話をふって、二人が苦笑しながら頷く。


「おう。それは付き合う前からだろ?井坂も大概駄々漏れだけど、谷地さんもだもんな。おかげで周りはどれだけヤキモキさせられたか。」

「ホントだよ。二人の空気がギスギスしただけで、あーお互いの気持ちが食い違ってんなぁ…って明らかだもんなぁ…。あんなに気持ちスケスケなのにさ。」


付き合う前からと聞いて、俺はそんなに前から!?と信じられない。


「とにかく。お前らほど、相手を想ってるカップルいねーから。つーか、このまま結婚まで一直線に進みそうで、逆にこえーぐらいだよ。」


「結婚!?!?!?」


俺はここ最近よく意識してきた言葉に、心臓が跳び上がって息がのどに詰まりむせる。


「むしろ結婚しちまえばいいんじゃねぇ?法的には可能だろ?お前18になってんだし。」

「な!?何言って!!!!」


北野が更に驚くことを口にして、俺は目を剥いて反論しかけるが、赤井が真剣な顔で考え込んで言う。


「そうか未成年でも、家族の許可があれば結婚できるもんな。」

「はははっ!!学生結婚とか、マンガやドラマの中の話だと思ってたけど、アリなんだな~。」


「アリじゃねぇから!?他人事だと思って何、話大きくしてんだよ!?」

「何?本気で考えるか??」

「あはははっ!!こいつなら本当にやりそうでこえーよ!」


「やらねーよ!!何言ってんだ!!!!バカじゃねぇのか!?」


俺はするわけない!!と断固否定した。

でも三人は何かツボにはまったのか、笑いながら話を広げようとしてきて参ってしまう。

そうしてバカ騒ぎする北野と島田を押さえつけていると、赤井が一頻り笑ったあとに真剣な目をして言った。


「ま、それぐらいお前らが安泰カップルに見えるってことだよ。安心しろ、井坂。」


急な励ましに面食らってしまって、じっと赤井を見て口を噤んでいると、さっきまで騒いでた北野も俺の肩を叩いて言った。


「そうそう。お前らなら将来普通に結婚して、同じように肩並べて歩いてるよ。遠距離なんてどうってことないさ。」


俺は俺と同じように遠距離の不安を抱えてるだろう北野の言葉に重みを感じて、さっきまでのバカ騒ぎは俺に対するエールも混じってたのではないだろうかと感じた。


「お前は変に嫉妬深いんだから、これからはそこだけ気をつければ大丈夫だよ。谷地さんは何があってもお前だけを見てるからさ。」


島田が苦笑しながら言って、俺はさっきの詩織と同じ大学に~ということが若干気になっていたが、島田に限ってそれはないだろうと信じることにした。


なんだかんだ俺はこいつらに心配されてんだな…


俺は多少ムカつく一面もあるけど、良い仲間に恵まれたと嬉しくなって、三人に笑みを返した。














仲良し4人組でした。

彼らを書くのは楽しいです。

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