130、襲われる
一応R15です。
ウソ!?ウソだよね!?
誰かウソだって言ってーっ!!!
私は井坂君から体の奥が痺れるような濃厚なキスをされて、強張ってた体の力が抜けるのを感じた。
井坂君は熱い息を吐き出すと、今度は首筋に唇を這わせてきて、背筋がゾクッとして井坂君のシャツをギュッと掴む。
どうしよう…!!下にお母さんもいるのに!!
こんなのダメだ!!
私はダメだと思いながらも抵抗できなくて、心のどこかで続けて欲しいと思ってる自分がいて複雑だった。
するといつの間にか自分のシャツがはだけていて下着が見えていることに、息を吸いこんだ。
「いっ、井坂君!」
私がビックリして声を上げると、井坂君が熱い手で私の口を塞いできて、目が渇くぐらい大きく見開いた。
井坂君はふっと優しく微笑むと私のおでこから頬や鼻筋にまでキスしてから、耳元にも口を寄せながら言った。
「大丈夫。」
低く艶っぽい声が体の芯にまで響いて、私はぞわっと鳥肌が立った。
大丈夫だと言われると、ストンと不思議と安心してしまって、瞼が自然と落ちてくる。
頭がぼーっとして、なんだか気持ちがふわふわする。
井坂君が胸にキスしてるのが肌から伝わって、ずっと胸の奥がキュンキュンして苦しい。
自然と自分の呼吸が熱く荒くなってくる。
するとふわっと冷たい空気が肌に当たったのを感じて目を開けると、目の前で井坂君が服を脱いでるのが目に入って、それをぼーっと眺めた。
井坂君は「あっちぃ…。」と呟いていて、脱いでる姿までがカッコ良かった。
あれれ…?上だけじゃなくて下も脱ぐの…?
そんなに暑かったのかな…?
私はそういえば自分もちょっと暑いかな…なんて思ってぼけっとしてると、スッと涼しくなって気持ちいいかもとほわほわした気持ちでいると、井坂君の熱い体がくっついてきてまた体温が上がるのを感じた。
なんだか体の奥がウズウズと疼く…もっと触ってと井坂君に懇願したくなる。
だから井坂君の背に自分から手を回して「井坂君…。」と呼んでみた。
すると井坂君に髪を優しく撫でられて「詩織、大好きだ…。」なんて耳元で囁かれて、嬉しくて幸せいっぱいになった。
私も大好き…
私が幸せいっぱいに腕にギュッと力を入れた瞬間、ズシッと体の上に重いものがふってきて、私はバチッと夢から覚めるように目を開けた。
「お、重い…苦しい…。」
私が視界をしっかり凝らすと、私の体の上に井坂君の体がのっかってきているが目に入って、井坂君が目を閉じて爆睡しているのが分かった。
え…寝てる??あれ??
私はなんとか井坂君の体を横にどかすと、起き上がって自分の姿を見て驚いた。
えぇっ!?!?!
私はシャツを一枚着てる状態でほぼ素っ裸になっていて、パンツも履いてなくて思わず布団で自分の姿を隠した。
ウソ、ウソウソ!?!?ウソーーーーーッ!!!!
いつの間に!?なんで!?どうやって!?
私、そんなにぼけっとしてた!?
私はとうとうやっちゃったんだろうか…と考えた込んだ。
え!?これどっち!?
井坂君なんか気絶するみたいに寝ちゃってるし…
初めてだから何も分からないんだけど…!!
私は布団をめくるとおそるおそる自分の姿をもう一回確認してみた。
変なところとか、違和感もなにもない…
ただ服を脱がされただけって感じがする…
これ…絶対やってない…よね???
私はちらっと寝てる井坂君を見て、勇気を出して井坂君の裸も見てみる事にした。
――――――っ!!!!!!無理無理無理!!!!!
私は一瞬見ただけで、布団で隠して見えなくすると大きく肩で呼吸した。
いいいい、井坂君も裸だった!!
でも、したかしてないかまでは分からないよ~~~!!!
私はしばらく一人で悶々と考え込んで、これは本人に聞くしかないと決めると悪いとは思ったけど、井坂君を起こすことに決めた。
寝てる井坂君の体を私は激しく揺さぶって声をかける。
「井坂君!!起きて!!井坂君!!!!」
「う~~~っ…。」
井坂君は唸り声を上げて一瞬起きそうだったけど、また健やかな寝顔に戻ってしまった。
私は起きない井坂君にイライラしてきてもっと激しく揺さぶる。
「井坂君!!起きてってば!!!」
「ううん…。…うむぅ…。」
井坂君はギュッと顔をしかめると、ゆっくりと目を開けて、私は起きてくれたことにホッとした。
井坂君はゆっくり体を起こして横にいた私を見ると、嬉しそうに「詩織…。」なんて微笑んで、私は気にり過ぎていたのでズバッとストレートに尋ねた。
「井坂君。私達って…これ、やったの?」
「へ…?やったって…。うわ!!詩織、なんて格好してんの!?」
井坂君は私の姿を見るなり真っ赤に赤面して両手で顔を隠して、私はその反応に首を傾げた。
「なんて格好って…井坂君でしょ?脱がしたの?」
「え!?俺!?そんなわけ……。…って…うわ!!!!」
井坂君が今度は自分の姿を見て声を上げて、私はその反応の意味が分からなかった。
なんでそんなに驚くの…??
「なんだコレ!?え!?俺…もしかして…詩織に襲い掛かった?」
「え…??…もしかして…覚えてないの?」
うそ……
私は井坂君でさえ覚えてないとか信じられなくて、顔が引きつった。
井坂君はサーっと顔から血の気を失った表情で固まっていたけど、ハッと何かを思い出したように焦り出した。
「あ、違う!全く覚えてないわけじゃなくて、覚えてる…ところもある!!うん!」
「え、それってどんなとこ?」
「それは…。」
井坂君はそこで言葉を切るとぼわっと一気に耳まで真っ赤になってしまって、私から顔を背けると両手で顔を隠して唸り始めた。
一体何を思い出したの…??
私は一番知りたいことの返事がないことに不安になっていると、井坂君はゴホンと大きく咳払いしてから「してない…。最後まではしてねーから…。」とすごく小さな声で言った。
私はそれにほっと安心してしまって、思っていたことが口から飛び出した。
「良かった…。私、気持ちよくて何も覚えてなくて、してなくて安心した…。やっぱり初めては覚えていたいし…。」
「………―――え?」
井坂君が私の言葉を聞くなり、真顔で振り返ってきて、私はその顔を見て目を瞬かせた。
「え…?詩織…今、なんて言った?」
「え?なんてって…初めては覚えてたいって…」
「その前!!その前、なんかすげーこと言わなかった!?」
「すげーことって…気持ちよくて覚えてないってこと…?」
私が繰り返すと井坂君は「それ!!」と声を上げて、私の肩をガシッと掴んできてビックリした。
「何!?詩織、気持ち良かったのか!?ホントに!?」
「え……。う、うん。なんかふわふわしてて、気持ちよくて…前の時とは全然違う…。」
私はそこまで言いかけて、自分がとんでもない暴露をしてる事に気づいて、カァッと顔に熱が集まり井坂君から視線を逸らそうと俯いた。
うわわっ!雰囲気に流されて恥ずかしい事言っちゃった…!!!
井坂君は目の前で掠れた声で「マジで…!?信じらんねぇ…。」なんて呟いていて、私は相当変なのかと思ってギュッと口を噤んだ。
きっと幻滅されてる!!
こういうことして気持ちいいなんて女の子、他にいないよね…
私ってどこかおかしいんだ…
私は黙ってれば良かったと後悔し始めて、泣きたくなってきて目の奥が熱くなって目を細めた。
「ごめん…私、変だよね…。どこかおかしいんだと思う…。」
「へ!?何言ってんの!?変でもおかしくもないだろ!?」
「えっ…??」
井坂君から真逆のことを言われて面食らって顔を上げると、井坂君は顔をクシャっと崩して笑って「何泣いてんの?」といつの間にか目に溜まってた涙を手で拭ってくれた。
ど、どういうこと??
「詩織は全然変じゃないよ。それ、普通だから。っていうか、俺にとったら最高の褒め言葉かも。」
「え?え?普通なの??普通は恥ずかしかったりするんじゃないの?前のときみたいに…。」
私が夏休みの井坂君の誕生日でのことを思い返して言うと、井坂君は楽しそうに声を上げて笑った。
「ははっ!前の時は俺もガチガチに緊張してたしな~。今回は熱のせいもあって理性がぶっ飛んでたから、したいままにやってたし、それがかえって良かったのかもな~。」
「え?え?井坂君、何の話をしてるの?」
私は一人納得してる井坂君に置いて行かれてる気分で、井坂君を見つめて尋ねた。
井坂君は笑うのをやめると、優しい笑顔で私を見つめ返してくる。
「俺もこういうことするの詩織としかしたことねーから詳しい事は分かんねぇけど、気持ちいいっていうのは俺が詩織を感じさせることができてるって事だから、俺にとったら最高の褒め言葉なわけ。だから、俺はその最高の褒め言葉をもらえて、すっげー嬉しい。」
褒め言葉…???
「そ、そうなの?私が変なだけじゃないの?」
「違うって!もう!!詩織は可愛いな!!」
井坂君は声を弾ませると、私にガバッとのしかかってきて、私はベッドに押し倒されて衝撃に目を瞑った。
そしてパチッと目を開けて真上の井坂君を見つめると、井坂君はニヤッと笑った。
「気持ち良かったなら遠慮しなくてもいいよな?せっかくだし、最後までしよう。」
「え…―――――えぇ!?!?!」
私はまさかまたこういう流れになるとは思わなくて、大きく目を見開いて口をパクつかせた。
井坂君はそういうスイッチが入ってしまったのか、また首筋に私の体をおかしくさせるキスをしてきて、私は流されそうになりながら何とか言葉を喉から絞り出した。
「い、井坂君!!熱は!?体、しんどくないの!?」
「平気。さっき汗かいたせいか、スッキリしてて頭も冴えわたってる。今度はぜってー途中で気失ったりしねーから、安心してくれよ。」
安心!?これは安心っていうのかな!?
私は心臓だけがバクバクと荒く動いていて、とうとう初めてやってしまうんだと感じて、井坂君に身を委ねる覚悟を決めた。
でも、そんな覚悟もどこへやら、階下から「拓海!!いい加減に詩織ちゃんを帰してあげなさい!!」というお母さんの怒声が飛んできて、私たちは我に返った。
井坂君は私の胸から顔を離すと、鬼のように顔を歪めるとボソッと「無視するか…。」なんて言ってたけど、再度「拓海!!!」というお母さんの怒声が聞こえて、井坂君は頭を掻きむしって体を起こした。
「うるっさいな!!!分かったよ!!!」
私はまたお母さんの乱入が怖くて、ベッドから飛び起きると床に散らばっている服を拾って、一つずつ急いで身に着けた。
今度は前後ろなど変な着方をしないように細心の注意をはらいながら…
その間、井坂君はベッドの上でかなりイラついて「家はダメだ、家はダメだ。」と呪文のように唱えていて、私は今後結ばれる日がこないような気がして、少しがっかりしてる自分が意外だったのだった。
***
その後は、着替えてすぐ井坂君にゆっくり休むように告げてから部屋を出て、見送りに出てきてくれたお母さんの顔をまっすぐ見れない状態で逃げるように井坂君のお家を後にした。
う~~~!!私、なんかおかしな方向へ成長してる気がする!!
あんな事して、全然恥ずかしくなかったし、前みたいに井坂君に見ないでなんて思わなかった。
むしろ触ってほしいとか、気持ち良いなんて思うなんて…
なんだか井坂君に触れられることに慣れてきてる気がする!!!!
私は恋人として、確実にステップを踏んでる気がして、身悶えしたくなるぐらい胸の奥が歯痒かった。
キュンキュンし過ぎて息をするのが苦しい。
「…私、今まで一番井坂君のこと大好きかもしれない…。」
私は別れたばかりなのに、引き返して井坂君にギュッて抱き締めて欲しいなんて思ってしまって、自分の変化に戸惑った。
それだけ今日の経験は私の中で大きくて、井坂君の尊さを実感するものだった。
明日からの自分はきっと今日までの私じゃない。
そういう予感がして、私は自分の変化が怖かったけど、それと同時に変わった自分と向き合うことにしたのだった。
またも未遂です…
でも、ホップ、ステップのステップまでいったので、ジャンプまで秒読みです!
近々本当に進展させます。お待ちください。




