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理系女子の恋  作者: 流音
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111、大雪


「なぁ!!外、すごいことになってんだけど!!」


そろそろクリスマス会もお開きだというときに、トイレに行っていた島田君が血相を変えてリビングに飛び込んできて、私たちはリビングの閉じられていたカーテンを開けて外を見た。


「うわぁ…!!」

「すっげー!!」


そこは真っ白に光り輝いていて、いつ雪が降っていたのか、外は真っ白でかなり雪が積もっていた。

寒いとは思ったけど窓を開けて外を確認すると、まだまだ降り積もりそうな勢いで雪が降り続けている。


ホワイトクリスマスだー…


私はなんて運がいいんだろうと嬉しくなった。

すると、横であゆちゃんが顔を強張らせて呟いた。


「これ…私たち、帰れる?」


あゆちゃんの言葉に現実を突きつけられ、私はあゆちゃんやタカさん、新木さんと顔を見合わせた。


「確かに…。私、親に電話する。」


新木さんが一番にそう言って、私もそれに倣ってケータイで家に電話をかけた。

あゆちゃんやタカさんも一斉に家に電話し始める。

それを見ている井坂君たち男子陣は「俺らは最悪赤井の家に泊まればいいしなー!」と言って笑っている。

赤井君はそれを推奨したいようで「泊っていけよ!!」と嬉しそうに井坂君たちの肩を叩いている。

赤井君はご両親がいないって言ってたから、一人だと寂しいのかもしれない。


私が男の子はいいなぁ~なんて思っていると、お母さんが電話に出た。


「もしもし、お母さん?」

『あ、詩織!ちょうど電話しようと思ってったのよ。外、すごい雪だけど、帰って来れるの?』


お母さんが心配してくれていたのか、焦った様子で言ってきて、私は歩いては帰れない気がしたのでそう告げることにした。


「すごく積もってるから、歩いては帰れなさそう…。お父さんって帰ってる?帰ってるなら車で迎えに来てもらえないかな?」

『お父さんも雪で足止めされて、今日は会社に泊まるそうなのよ!だから車は出せないわ。どうしましょう…。』


お母さんが困り果てて言って、私は皆はどうなんだろうと周りを見回した。

すると、一番に電話を終えたあゆちゃんが、「今日は赤井の家に泊らせてもらいなさいだって。」と言う。


私はそれに目を剥いて驚いていると、新木さんも「うちも同じ。」と言って、私は二人の寛容なご両親が信じられなかった。

なので思わず、電話でお母さんにこっちの現状を伝える。


「友達二人は、今日は赤井君の家に泊るって言ってる…。」

『え!?お友達って女の子でしょう!?男の子の家に泊るって、ご両親はそれを分かって言っているの?』

「たぶん…。あゆちゃんはお家が緩いって言ってたから…きっとそうだと思う…。」


私は以前あゆちゃんが言っていた事を思い出して伝えた。

すると、お母さんが電話の向こうで大きく息を吐き出してから、諦めたように声のトーンを落とした。


『仕方ないわね…。受験生の大輝を迎えに行かせるわけにもいかないし…。今日はその子達と一緒に泊らせてもらいなさい。』

「えっ!?いいの!?」


私はお母さんのものとは思えないお許しに、ビックリし過ぎて声が裏返った。


『仕方ないでしょう。そこには井坂君もいるのよね?』

「あ、うん。いるよ。」

『ちょっと代わってくれる?』


私は井坂君と何の話をするんだろうかと思ったけど、言われた通りに井坂君の横まで行くと声をかけた。


「井坂君。お母さんが井坂君と話がしたいって。」

「詩織のお母さんが?」


井坂君はケータイを手渡す私を見つめて、驚いた後に緊張しているようだったけど、何度か咳払いしてからケータイに耳を当てて「井坂です。」と電話に出てくれた。

井坂君はお母さんに何かを言われているのか「はい。」とか「そうですか。」とか言いながら頷いている。


いったい井坂君に何の用だったのかな…?


井坂君は最後に真剣な顔で「分かりました。」と言うと、私に笑顔でケータイを返してきた。

私はそれを受け取ると、「はい。」と電話に出た。


『あなたの事は井坂君に頼んだから。くれぐれも彼を困らせないようにね。それじゃ、明日また電話するわ。』

「分かった。ありがとう。お母さん。」


お母さんの井坂君を信用しきった言い方に、私は首を傾げながら電話を切った。

井坂君はそれを見て、私に話しかけてくる。


「詩織も泊るんだって?」

「あ、うん。お父さんが会社に泊るらしくて、迎えに来れないからって…。」

「ははっ!俺、詩織の事、他の男の子から守ってくれって言われてビックリしたよ。」

「え!?お母さん、そんな事言ったの!?」


井坂君が嬉しそうに笑いながら「うん。」と言って、私はそこまで井坂君を信用してるお母さんが不気味だった。

でも井坂君はそれがすごく嬉しいみたいで、ニコニコしながら「お母さんとの約束は守らねぇとな~。」と上機嫌で赤井君の所へ歩いていった。


私は井坂君が嬉しいならいいか…と思いながら顔を横に向けると、タカさんが渋い顔をしてケータイを握りしめていた。


「タカさん。どうしたの?」

「あ、うん。お母さんはとりあえず雪が止むまで、待たせてもらいなさいって言ってて…。一応泊っても良い流れになったんだけど…、お兄ちゃんたちがさ…。」

「お兄ちゃん達!?タカさん、お兄ちゃんいたの!?」


私はタカさんから初めて聞く、家族のことを耳にして興味をそそられた。

タカさんは苦笑しながら「うん。」と言うと、細くため息をついた。


「ないとは思うんだけど…。もし、お兄ちゃんたちが乱入してきたら、ごめんね?」

「乱入って…。なんで??」

「いや、ないと思うんだけどね。とりあえず、皆と同じで泊るから。よろしく。」


タカさんはお兄さんたちの話をしたくないのか、話を打ち切ってきて、私は聞くに聞けなくなってしまった。

何だか線を引かれたみたいで、寂しくなる。

すると、全員泊るということを知った赤井君が、「やったー!」と嬉しそうに両手を挙げていて、その後に片付いたテーブルの脇に座ってテーブルをバンッと叩いた。


「じゃ、クリスマスパーティからのお泊り会へチェンジしたところで!!最後の締めのプレゼント交換といくか!!皆、それぞれ自分のプレゼントを手に持ってくれよな!!」


赤井君に指示されて、それぞれ二千円以内で買ったプレゼントを手に、丸くテーブルを囲むように座る。

私はまた両脇をあゆちゃんと新木さんに挟まれて、向かいぐらいの位置に井坂君が腰を落ち着けた。

そして、赤井君の指示で持ってるプレゼントを誰のか分からないようにシャッフルすると、赤井君が「全員でジングルベル歌って、歌い終わったやつが自分のプレゼントってことな!!」と取り決める。


私は井坂君のプレゼントが当たればいいのになー…なんて思っていると、赤井君が「せーのっ!」と言ったので、慌てて皆に合わせて歌を歌った。


そして歌い終わったところで、私は自分の持っているプレゼントを確認した。

可愛いラッピングをされたそれは、どう見ても女子の選んだプレゼントだ。

井坂君のものじゃなくて少しがっかりしていると、横から「それ私の。」とあゆちゃんが言ってきて、私は驚いて彼女に目を向けた。


「詩織に当たってちょうど良かった。甘い匂いのするハンドクリームなんだ。」

「そうなんだ!さすが、あゆちゃん。オシャレだね。」

「褒めても何も出ないよ。」


私が女の子らしいチョイスに感動していると、新木さんの横にいたタカさんが「何これ~?」と不満げな声を上げた。

タカさんが手に持っていたのは、少し不気味なガイコツのキーホルダーで手にはギター?を持っている。

よく見ると愛嬌のある顔をしてなくも…ない。

私はどこかで見た事のあるキーホルダーだな…と思っていると、向かいから井坂君が声を上げた。


「それ俺の!パンクペルグリンってバンドの公式キャラのキーホルダーなんだ。なかなかなチョイスだろ?」


井坂君がどうだと言わんばかりに嬉しそうに言って、タカさんは「え~!?いらなーい!!」と井坂君に文句を言い出した。

私はパンクペルグリンというバンドが最近注目され始めているのを知っていたので、井坂君らしい先取りのチョイスに感心した。

それと同時にタカさんの手に持つキーホルダーが欲しくなってくる。


井坂君が選んだプレゼントというだけで、私にとったら宝物のようだ。

だから、私は自分の当たったプレゼントをタカさんに見せると声をかけた。


「タカさん!私のと交換しない?私、井坂君のプレゼントがいいな。」

「え。いいの?しおりん、ハンドクリーム喜んでたじゃん。」

「いいの、いいの。パンクペルグリンなら、私知ってるから。」


私がそう言うと、前から井坂君が「さすが詩織!!パンクペルグリン知ってるとか、やっぱ最高!!」と嬉しそうに手を挙げている。

私は変なところで褒められたな…と思いながら、タカさんとプレゼントを交換する。


そして周りに目を向けて、自分のプレゼントが誰の所にいったか見ると、島田君の手に自分のプレゼントが握られていて声をかけた。


「島田君!それ、私の!!」

「え…。これ、谷地さんの?」

「うん!!無難でごめんだけど、来年受験生だと思って、書きやすいシャーペンと消せるボールペンとか筆記用具のセットにしたんだよね…。」


どこまでもガリ勉な自分のチョイスに情けなくなっていると、島田君がははっと嬉しそうに笑ってから「谷地さんらしー。」と言って包みを開け始めた。

一応、喜んでもらえたようなので、私はほっと一息ついてから、あゆちゃんたちのプレゼントにも目を向けた。


あゆちゃんは北野君のプレゼントが当たったのか、Jリーグのスポーツタオルを手にムスッとしていて、それを欲しがった新木さんと交換していた。

新木さんはタカさんのプレゼントだったようで、読書家なタカさんチョイスの文庫本を手にあゆちゃんは良かったという安堵の表情を浮かべていた。


そして赤井君は島田君のチョイスらしいマンガを手に喜んでいて、井坂君は赤井君のものらしいキャップを手に何故か島田君を睨むように見つめている。

そして北野君はたまたま新木さんのプレゼントが当たったのか、クリスマスの衣装を着たくまのぬいぐるみがキャンディーを持っていて、すごく可愛かった。

北野君は複雑そうな顔をしていたけど、新木さんのだと知ってどこか嬉しそうに含み笑いしていて、私は順調そうな二人に笑みが漏れた。


そして、クリスマスプレゼント交換も円満に終了して、そろそろ寝支度しようという流れになり、赤井君がお風呂を沸かしにお風呂に向かっていった。


私たちは着替えがないのでお風呂は入らなくてもいいかな…なんて思っていたのだけど、赤井君が自分の服を貸すからと言ってくれて、全員分の着替えを用意してくれた。


さすがオシャレな赤井君だ。

服もたくさん持ってるらしい…


私はサイズの大きそうな着替えを手に、女子全員で先にお風呂に入り、お風呂では女子トークを繰り広げた。

まぁ、内容はあまり口にしたくない恥ずかしいものだったけど…


それから順番にお風呂から上がって、赤井君から借りた服に着替えた。

私は体も大きいのでそこまでブカブカじゃなかったのだけど、体の小さいあゆちゃんは女の私でさえギュッとしたくなるぐらいブカブカで、キュンとしてしまった。

あゆちゃんは恥ずかしそうに「ズボンが落ちそう!!」と言っていたけど。


そして皆でリビングに戻ると赤井君たちが布団を敷いてくれてたようで、6組の布団が3対3で向かい合って並んでいた。

それを目にして、私たちは変な違和感が過って、あゆちゃんが代表して口を開いた。


「ねぇ…ここに布団が固めてあるけど…。まさか全員で雑魚寝するわけじゃないよね?」

「うん?その通りだけど??何か問題ある?」


赤井君が平然とした顔で言ってきて、あゆちゃんが真っ赤な顔で反論した。


「いやいや!!あり得ないでしょ!?普通、女子と男子は別の部屋でしょ!?」

「だって、布団6組しかねぇし。大きな部屋がここぐらいだからさぁ~。仕方ねぇんだって。」

「仕方ない!?」


あゆちゃんがケロッとした顔で言った赤井君に目を剥いて、「だから言っただろー?」と北野君や島田君から呆れたような声が飛んでくる。

私やタカさんや新木さんはとりあえず状況を見守る事しかできず、やり取りを見つめる。


「大丈夫だって。こんな状況で女子に襲い掛かったりしねーから。」

「当たり前でしょ!?そんなことしたら警察に電話するから!!」


あゆちゃんが真っ赤な顔で赤井君に食ってかかって、赤井君はヘラッと笑っている。


うーん…この流れだと皆で一緒に寝ることになりそうだなぁ…


私はお母さんが知ったら発狂しそうだと思ったけど、皆も同じ状況だから大丈夫かと思う事にした。



そこからは3組の並んだ布団に詰めるように女子4人で寝転んで、頭の向こうの反対側の3組には男子4人が同じように詰めて寝ることになった。


男子陣がお風呂に入ってる間、私は布団に寝転びながらあゆちゃんの赤井君に対する文句をずっと聞いていて、いつの間にかウトウトして瞼が落ちてしまった。



そのとき頭の隅で井坂君にプレゼント渡すの忘れた…なんて思って、『拓海君』と呼ぶ自分を頭に思い浮かべていたのだった。







まさかのお泊り会です。

このまま何もないはずがありません。

次をお待ちください(笑)

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