【間幕続き】現実
少年は、“現実”を愛していた。
病的なまでに...とまではいわないが、好きだった。
日常、というものにこだわっていた。
少年は、一度“非現実”に関わった事がある。
その世界に関わったとき、その者は“現実”を愛するようになった。
ただただ、醜く罵られ、なにもしたつもりはないのに、人は命を途絶えさせて行く。
ただ、自然体でいただけなのに、人は少年を嫌う。
そんな、悪夢のような世界に、実際にはただの少ししかいなかったけど。
確かに、いた。
人々はこういった。「死神」と罵った。
少年は、人々に狙われた。
_____こんな、危険な者...死神を、野放しには出来ない、と。
現実に戻ると、仲の良い友人が、心配そうに顔を覗き込んでいる。
少年は、「ありがとう」と涙した。
友人は、いつものことだろう、と笑った。
それから、異様に非現実を感づいた。
ただ、事件があっただけで、ビクッと身体を震わせた。
目の前に鳥の亡骸があるだけでも、魚でも、異様に拒否反応を示した。
友人は語った。
______彼の存在が、非現実なのではないか、と。
少年は、昔から事件に巻き込まれやすかった。
その少年が決して、悪いのではないのに。
それでも、大きい事件も、小さな事件だって、なんでも彼は、近くにいた。
ただ、存在する、だけだったのに。
少年は、“現実”を愛していた。
トラブルメーカー等ではない、ましてや、「死神」なんかじゃ__________
ある日、少年は自分の目の前で一人の少女が搬送されて行くのを見ていた。近くに友達であろう女の子と、男の子が二人、必死に彼女の名前を呼んでいる。そんな様子をただただ黙って。黙って、見ていた。
黒髪のその少女は、苦しそうに少し涙を見せた。
廃ビルで過ごしていた挙げ句の熱中症を拗らせたそうで。
曉ビルで、過ごしていたようで。
......最後に入ったのはいつだっけ。
たしか、オレが数週間前に入って...
鍵は、閉めたっけ。
たしか、鍵はかけることを、面倒くさがって...
嗚呼。
人々はこう呼んだ。
オレのことを、「死神」と。
どうやらオレは、非現実にしか生きられない存在なのだろうか。
少年は、柔らかく微笑んだ。
お前の性格は、事件を巻き起こすんだろう...そういえば昔、父親に言われたっけ。
自然体でいてはならない。そしたら、こんな風に...人を殺してしまうから。
...嗚呼、そっか。
オレは本当に、「死神」だったんだねぇ。
少年は気付いた。
自分が、非現実にいれば、他の皆は、現実のままで、過ごせることに。
自分が、欺けば。性格を変えてしまえば。誰も事件に巻き込まれないことに。
少年は、”現実”を愛していた。
現実的な、世界に憧れていた。
結果的に、少年は非現実に身を投じてしまったけれども。
結果的に、少年は歪んでしまったけれども。
それでも、本当は、誰より望んでいた。
現実に。
他人のことなんかどうでもいい、とか。
そんなこと、今は思うけど。
狂っちゃったけど。
でも、今でも責任は感じていて。
見守っている内に恋心に近い感情を持っちゃって。
「あはっ、あはははははっ」
馬鹿みたいだ。
本当、馬鹿みたいだ。
こんな“非現実”にいる内に、身動きがとれなくなってしまったじゃないか。
...嗚呼。
やっぱり、“現実”が一番好きだ。
もっとも、今は”死神”になったけれど。
きっと、自分は。傷つけたくない相手を、傷つけてしまうんだ。
_________「紅っ!紅っ!!」「虹晴...空...大好きだよ...」




