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神族  作者: 鼻づまり
第3章 『金の王国・ロッド』編
16/20

第14話 『切望』

森から宿に戻ったレイ達4人は夕食を食べている。

『神族・雷の一族』の少年、レイは険しい顔で考え込んでいた。

『火の国・メイラ』、『風の王国・ディーン』を滅亡させた『組織』の暴走。

部下の命を何とも思わずに自爆をさせた『組織』の残虐性。

いずれもレイにとっては決して許せないこと。

ハラワタが煮えくり返る思いで一杯だった。

『組織』を止めるために旅をしている自分達の次の標的は『組織』の幹部、『風の王国・ディーン』を滅ぼした張本人、『神族・火の一族』、『不死鳥のゲイル』。

潜伏場所はリョウが知っているため、ゲイルの元に行くことは問題無い。

しかし、問題はそこから。

『不死鳥のゲイル』はかつての『風の王国・ディーン』屈強の戦士、タール、ソドム、そしてクルードですら歯が立たなかった相手である。

いくらここに自分も含めて『神族』が3人いるとはいっても、本当に勝てるのか?

レイは無言で食事をとりながらゲイルへの対応を悩んでいた。




「……、」

その様子を見ていた『神族・風の一族』のシスター、メープルはレイの頬をつねった。

「い!? な、何らよッ!?」

「食事中なのに顔が怖いですよ? レイ君、スマイルスマイルっ♪」

彼女はニコッと笑いかける。

「ずっと張り詰めてたらいざという時実力を出せないですよ? 頑張る時は頑張る! 休む時は休む! 気持ちにもメリハリをつけなきゃっ♪」

「メープル……、」

「じゃないと真っ白な灰になっちゃいますよ?」

「いやシャレにならないからそれッ!」

レイの口から素直なツッコミが出た。




「ほら、サンちゃんとリョウちゃんを見て下さい! あんなに楽しそうに話して……、」

メープルが指し示した先には『神族・森の一族』の10歳の少女サンと、アラフォーの人造人間『龍火』のリョウが歓談していた。

「……、」

(父娘みたいだな……、)

レイは2人の関係に違和感を感じていた。

サンが一本の葉巻を作ってリョウに渡す。

「これは甘い香りがして結構おススメの逸品だよ!」

「おお! いいじゃん! 1本よこせ!」

リョウがサンから葉巻を受け取ってマッチで火をつけて煙を吸う。

「ほ~! ほのかな甘みがまたいいなこれ!」

「でしょでしょ!? ほら私にもつけて♪」

サンがもう1本葉巻を出して口に加え、リョウがマッチで火を提供。

「あ~……良い……、」

2人で幸せそうな顔をしてタバコを……。

「いやダメでしょ!? 何やってんの!?」

慌ててレイがサンからタバコを取り上げた。




食事を終えたレイ達は宿の部屋で作戦会議をすることにした。

初めにリョウが話し始める。

「あらかじめ言っておく。『金の王国・ロッド』は『組織』とは無関係だ。15年前に国王が交代して以来、ロッドはほぼ民主主義化して他国に対して開放的になっている。だから武器調達も城下町の店で簡単に行える」

『風の王国・ディーン』で戦った『組織』の1人で、ロッド最強の防御力を誇る『刃の鎧』を装備している者がいたのはそういうことだったのか、とレイとメープルは納得した。

メープルはロッドについてのある疑問を投げかける。

「ロッドにはかつて『神族・金の一族』がいたって聞いてたんですけど、今はどうなんですか?」

その言葉の裏には、もしいるのだとしたら自分達と一緒に『不死鳥のゲイル』討伐に力を貸してほしい、そんな思いが込められていた。

「15年前の先代国王暗殺事件から行方不明になっていると聞いた。当時は国王暗殺の容疑者として疑われたこともあったが、まだ子どもだったそうだから、暗殺とは無関係だったみたいだけどな。容疑が晴れる前に姿をくらませたままになってる」

「そうなんですか……、」

メープルは少し考え込んでいるようだった。




そんなレイ達3人に対し、今度はリョウの方から質問を振って来た。

「ゲイルは居場所がバレたからって姿をくらませたりはしない。戦い好きな男だからな。恐らく『ロッド鉱山』のアジトにいるだろう。『ロッド鉱山』はここから東に行った所にある。『水の港・リャワテ』への唯一の連絡通路にもなっているが、洞窟内で少し脇に道をそれたところにゲイルがいる。そこでだ……、」

「……、」

「まともにぶつかってお前ら、まあ俺も含めてだが、4人がゲイルを倒せる可能性は?」

「ゼロですね」

即答したのはメープルだった。




「ゼロかよッ!?」

レイが驚いた反応を見せながらメープルを見る。

彼女は丁寧に説明を始めた。

「想像してみてください。あの時、『不死鳥のゲイル』はほとんど1人で『風の王国・ディーン』を滅亡させました。ディーンには当時ソーちゃんやクルードさん、その他にも大勢の兵士の人達がいた。それなのに……ですよ?」

レイに瀕死の重傷を負わせたかつての親友ソドム、レイを助けるために戦いを挑んだメープルを2回も負かしたクルード。

その2人の実力は身をもって実感している。

レイには彼女が言おうとしていることがわかった。

「恐らく『不死鳥のゲイル』の実力は少なくともあの2人以上……、」

「そう。そして今の私達に、クルードさん達以上の実力は……あるとしても大差は無いですよね?」

「それは……、」

心の中ではわかっていたかもしれないが、レイはその現実から目を背けていた。

自分が強くなったと思っていた彼に対して現実を突き付けられた。




「だが……、」

ここでリョウが話に割り込んできた。

「今日、お前達の戦い方を見させてもらった。そしてある程度、ゲイルを倒すための作戦を立てられた」

「ホントかッ!?」

「そこでお前達に確認しておきたい」

リョウはそう言ってレイ達に顔を近づけてきた。

「近い近いッ!! てかどさくさに紛れてメープルにキスしようとしてんじゃねえよッ!!」

レイがリョウの頭を叩いた。




「お前達、『神族の奥義』は使えるか?」

「『奥義』?」

レイは首を傾げた。

『神族』の技に奥義なんてものがあることすら、かつて記憶喪失になった彼には知る由も無かった。

「ごめんなさい。私は使えないです」

メープルが申し訳なさそうに頭を下げた。

「私は使えるよっ!」

サンが元気に手を挙げた。

「いいねえ嬢ちゃん。そしたら嬢ちゃんの『奥義』の特質、詳しく教えてもらえるか?」

「……、お母さんが知らない人に秘密はしゃべっちゃダメって……、」

「まだ俺知らない人!? ショックだよオジサンッ!?」

リョウから珍しくツッコミの声が出た。




サンがしぶしぶリョウに奥義の特質を説明している間、レイはメープルに奥義についての説明を受けた。

『神族の奥義』とは、各それぞれの『神族』が『神族を殺すために編み出した魔法』であるとのこと。

『神族』は半分不死身とも言われていて、致命傷を負ったとしても脳を直接的に損傷されなければ3日程で復活する。

『神族』を殺すためには『脳を直接攻撃すること』が必要になってくる。

そのために、先祖達は『神族の脳を直接攻撃する魔法』を開発して巻き物に記し、巻き物を通じて子孫に伝えているとのことだった。

「『神族を殺す魔法』……か……、」

レイはそのことを聞いて恐怖を覚えていた。

当然、ゲイルが『奥義』を習得している可能性がある。

今までは『どんなに攻撃を受けても死ぬことは無い』と高を括っていた自分がいた。

だから無茶なことも実践できていた。

しかし、対神族の戦いの場合、その考えでいては殺される場合がある。

レイの身体は恐怖で小さく震えていた。

「メープルは今もその巻き物を持って……、」

「失くしちゃいました」

「うぉい! それってマズいんじゃないのッ!?」

レイは思わず大声を出した。




「実はその巻き物、他の『神族』に見られても大丈夫なように変な暗号で書いてありまして、夫婦で共有して子どもに伝えてたみたいなんですけど。ほら、前に話したみたいに私って生まれた時から両親がいないじゃないですか」

「ああ」

「結局解読できなくて教会にずっと放置してました」

メープルは目線をそらしながら苦笑いを浮かべていた。

『神族』はこういう事態を予想していなかったのだろうか。

「……、」

万能に見えていた『神族』の杜撰な管理体制が垣間見えた瞬間だった。




サンの『奥義』、『陽光滅弾サンライトバレイション』の全容は次の通りである。

普段は『光合成』で太陽光エネルギーを使用し、身体の自動回復を行っている『森の一族』。

そのエネルギーを体内に『攻撃用』として蓄えておく。

溜め込んだ太陽光エネルギーを『光弾』として両手の掌から対象に向かって放出する。

光弾を受けた箇所は濃縮された太陽光エネルギーによってどんな物質も原子・細胞レベルで消滅する。

光弾は溜め込んだ『時間』に比例して大きくなる。

弱点としては、まず1つに『太陽光の無い場所では使えない』こと。

そのため、夜の時間や、太陽光が差し込まない場所ではほとんど光弾は作れない。

2つ目としては『溜め込んでいる時間中は神力を全く使えない』こと。

そのため、溜め込んでいる時間は隙が大きくなりやすい。

サンに限ってはただの10歳の少女になってしまう。

『奥義』は使い時を誤るとその時点で敗北が決定しかねない程の大きなリスクも孕んでいるのである。




サンの奥義を理解した上で、リョウは真剣な表情で3人に語り掛けた。

「今から俺が考えた作戦を伝える。よく理解しておけ」




夜、宿の部屋で皆が寝静まっている中、レイは眠れずにいた。

レイの頭の中で、ソドムに殺されかけた時の光景がフラッシュバックする。

あの時はソドムにレイを殺す考えは無かった。

だから、彼はレイの心臓を突き刺して気絶させるのみに留めた。

しかし、ゲイルの場合は違う。

敵対する以上、ゲイルは確実に自分たちの命を奪おうとしてくる。

そして、そうするための手段を恐らく持っている。

恐怖で心臓の鼓動が早くなる。

(な、何をビビってんだ俺ッ!! 俺がしっかりしないと! 皆を守るために!)

ネガティブな思考を停止させようと必死に目を瞑っている彼の両脇に誰かが触れてきた。

「!」

「えいっ!」

「わひゃひゃひゃひゃッ!?」

何者かの脇のくすぐりに対し、今までに出したことの無い声が彼の口から出てきた。




「め、メープルッ!?」

いつの間にかメープルがレイの布団の中に入ってきていた。

「な、なな、何してんだよお前!? おおおお前のベッドあっちだろ!?」

レイは思わず彼女に背中を向ける。

「気負いすぎですよレイ君♪」

「!」

彼女はニッコリと笑顔を見せる。

「あの時と違って今のレイ君は1人じゃありません。私達がいます。リョウちゃんの作戦通りにできれば絶対何とかなります。だから今は大船に乗ったつもりでどっしり構えて下さい♪」

「メープル……」

「泥船かもしれませんが」

「不安になるよ!?」

今までの流れを台無しにする彼女の一言に対しレイは思わず声を上げた。




「不安なら、これならどうですか?」

そんなレイをメープルはギュッと抱きしめてきた。

「!? ちょッ! メープル!?」

レイは赤面する。

彼女の温かくて柔らかい身体がレイの背中に密着する。

彼女はレイの耳元で囁くように言った。

「何でも1人だけで頑張ろうとしないで下さい。何のために仲間がいると思ってるんですか?」

「……、」

「私達がいるってこと、忘れないで下さい」

「……、」

「今晩だけですよ? レイ君が安心して眠れるまで……こうして……、」

彼女はそう言い残しながら深い眠りに入った。

彼女の寝息がレイの首元にかかる。

いつの間にかレイの身体の震えは止まっていた。

どうやら彼女の体温を通じて安心することができたらしい。

「メープル……、」

しかし、レイの心臓の鼓動はどんどん早くなっていった。

(興奮して眠れねえよおおおおッ!!)

とうとうレイはその晩一睡も出来なかった。




翌日、朝食を終えたレイ達は宿を出発する前に荷造りをしていた。

レイ、リョウ、サンの3人はメープルの大きなリュック、それもパンパンに膨れ上がっているリュックに目を丸くしている。

レイが尋ねた。

「……何が入ってるの?」

「薬草♪」

「半分置いて行きなさい」

レイから冷静なツッコミの言葉が出た。




4人は『ロッド鉱山』の入り口に到着した。

「いいか? 中に入ってすぐの所に分かれ道があるが、そこをすぐに左な?」

「わかった」

「じゃあ作戦通りに頼むぞ」

「ああ! 行くぞメープルッ!」

「はいッ!」

リョウとサンが入り口に残り、レイとメープルの2人が鉱山内に入っていった。

2人は意気込んで鉱山入り口付近の分かれ道を迷わず左に向かい……突如発生した落とし穴から下の階層に落ちて行った。

「リョオオオオッ!!」

レイの断末魔を残して。




「う……、」

レイはメープルの膝枕の上で目を覚ました。

「気がつきました?」

メープルはニッコリと微笑みかける。

「えっと……俺達は……落とし穴から落ちて……、」

「飛翔魔法の『翔風エルフィン』で静かに着地しました。私もレイ君も無傷ですよ♪」

「じゃあ……何で俺は気を失って……、」

「あまりの落下の恐怖にって感じでした。あと……、」

あまりにもカッコ悪いと顔を手で隠しているレイに対し、メープルは顔を赤らめて下を向きながら告げた。

「風で乾かしておきました……濡れたレイ君のズボン……今は臭いも大丈夫です……、」

「殺せ……いっそ殺してくれ……、」

それはレイにとっての死刑宣告だった。




「じゃあ、出発しましょうか」

メープルは真剣な表情に切り替わった。

「道はわかるの?」

「レイ君が気を失ってる間、探索魔法『捜風カーラ』で鉱山内の構造は大体把握できました。ゲイルがいそうな場所も見当はついています」

メープルの話を聞きながら、レイは彼女と初めて『風の洞窟』を突破した時のことを思い出していた。

あの頃彼女は出口までの道順を全く把握しておらず、迷いながら洞窟内を進んでいた。

あの頃の彼女には『捜風カーラ』が使えなかったのである。

『風の王国・ディーン』でのナナの言葉が思い出される。




『つまり、アンタの暴走を止めた直後はメープルも神力を全く使えない状態だったってこと。その時点でメープルとアンタの強さはほとんど変わらなかったんだよ。いや、性別の分だけ、むしろアンタのほうが強かったかもな』




一度能力を失って以来、彼女はこの短期間で『風の一族』の数々の魔法を再習得してきた。

仲間を守りたいその一心で。

俺も努力はしてきたつもりだ。

でも彼女には到底かなわない。

彼女はあれからどれほどの努力をしたのだろう。

俺はあとどれくらいの努力をすれば彼女に追いつくことができるのだろう。




レイはメープルの凄さを実感するとともに、彼女を守れるところまで実力が到達できていない自分に対してもどかしさを痛感していた。




「だけど……、」

メープルはレイに対して警告を発する。

「どう迂回しても避けられない戦いがあります。一つしかない通路に大きな生物が立ち塞がっています。鉱山内にいるどのモンスターよりも強そうな生物です」

「……!」

「覚悟は、出来てますか?」

メープルが真剣な眼差しでレイを見つめる。




覚悟なら出来てる。

『森の里・リール』を出る時に決めた。

戦いを恐れない。

『自分の居場所(仲間)』を絶対に守るんだ。




レイは黙って頷いた。

メープルは再びニコッと笑いながら元気な声で言った。

「じゃあ、行きましょう♪」

2人は目的地に向かって歩き始めた。




道中、リザードマンや鬼面道士、火炎ムカデなどの、『死神のシュウ』が造ったと思われるモンスターが襲い掛かって来たが、難なく2人は打ち倒して先に進んでいく。

「なあ、メープル」

余裕が出てきたレイはメープルに話しかけた。

「何ですか?」

「俺達仲間なんだからさ、敬語じゃなくてタメ口でも良いんだよ?」

「タメ口……ですか?」

「うん。リョウやサンと俺がタメ口なのにメープルだけ敬語なんてさ、メープルだけ仲間外れになってる感じがして何か違和感があるっていうか……、」

「うーん……、」

彼女は気が乗らなそうな感じだった。

「ん、ダメ?」

「だって……、」

彼女は考え込みながら答える。

「私のどSっぷりが明るみに……、」

「もう出てるから安心しろ」

レイから素直なツッコミが出た。




「あ、や、出てる出てないの問題じゃなくて、タメ口だと更にそれが強くなってしまいそうで……、」

「あれ以上があるのか……、」

「でも……そうですね! わかりました!」

「いやそれだったら別に無理してタメ口にしなくても……ッ!」

彼女に戦慄を覚えたレイは、発言を撤回しようとした。

「レイ君にだけタメ口になります!」

「俺にはどSを強めるってこと?」

彼女の宣言に対しレイの全身を悪寒が走った。




落ちた所から緩やかな上り坂を上がり、もうそろそろ入口の階層に近いところまで来ただろうか。

しばらく進んだところでメープルがレイを制しながら立ち止まった。

「メープル?」

「この先だよレイ君。さっき私が言った『大きな生物』。もう一度訊くけど、覚悟はできてる?」

「……ッ!」

メープルの突然のタメ口にも驚いたレイだが、戦う心構えはもうできている。

相手はまだゲイルではないが、ゲイルと戦うつもりで全力で立ち向かってやる。

レイは黙って頷こうと……、

「手足を喰いちぎられ頭を砕かれバラバラになって胃酸で焼かれて消失する覚悟……、」

「ねえよ」

レイの決心が踏みにじられたように感じた。




レイはニヤッと笑いながら前を向いた。

「逆に俺の電撃で炭にしてやらあ」

「やっとレイ君らしくなってきたね♪ その調子その調子っ♪」

「……、もしかして記憶喪失前の俺のキャラってヤクザ?」

その質問に対してはメープルは口笛でごまかした。

2人が進んだ先は鉱山の中でも大きな空洞となっていた。

まるで格闘場のように目一杯戦える広い空間である。

そこにいた巨大な生物に背筋が凍りつくように感じた。




「……なあ、メープル」

「なあに? レイ君」

「コイツの名前、何て言うんだっけ?」

「確か、『サラマンダー』、だったと思う」

明らかに火を吐きそうな大きめのトカゲ、いやドラゴンに近いものがそこにいた。

「……、ホントにいたんだな。伝説上の怪物……、」

「多分、『不死鳥のゲイル』と『死神のシュウ』の合作だと思う。構えて。来るよレイ君!」

2人はそれぞれ武器を構えた。

サラマンダーは2人を発見するや否や、雄たけびを上げながらその大口を2人に向けた。

その口から炎が放たれた。




一方その頃、鉱山内の深部、広い空間がある場所に『神族・火の一族』の末裔、通称『不死鳥のゲイル』と呼ばれる男が目を閉じて静かに座っていた。

「ガキ2人。正規のルートじゃなくわざわざこっちに向かってるってことは、無謀な冒険者か俺を狙っている組織の敵か。どっちにしてもタダもんじゃねえな」

サラマンダーはメープルの推測通りゲイルとシュウで作った生物。

精神を集中すればその五感でゲイルとサラマンダーが繋がることができる。

ゲイルはサラマンダーの視覚を通じてその戦いを観戦しているのである。

ゲイルの口から笑みがこぼれてくる。

その目には、サラマンダーの最初の炎から『風守デシルド』の風で防御した2人の姿が映っていた。

そして、サラマンダーに対してレイが『鋼の剣』で斬りかかっている。

「……、まさか奴が『世代交代』していたとは意外だったが。それでも『風神』は『風神』。俺の宿敵に変わりはねえ。そして『雷神』。限界を超えたあの状態で生きててくれて本当に嬉しいぜッ! 決着をつけてえって思ってたからな!」

ゲイルは大笑いした。

「だっはっはっは! ビンゴだッ! 待ってた甲斐があった! 『風神』に『雷神』! 俺が待ち望んでた相手が一気に2人も来やがった!」




男は切望する。

2人がサラマンダーを圧倒し、ほぼ万全の状態で自分がいるこの場所まで来ることを。

彼にとっては組織のためとかそのようなことは関係無い。

強者と戦い、そして勝つ。

そうすることで自らの強さを証明する。

それが彼の存在意義となっている。

彼はただそれだけのために行動しているのである。




「さあ来い……、間違ってもサラマンダーなんかに苦戦すんじゃねえぜ?」

『不死鳥のゲイル』は不敵な笑みを浮かべた。

その手に焼いたサラマンダーを貪りながら。

お久し振りです。

この小説を読んで頂き誠にありがとうございます。

少しずつですが執筆は進んでいます。

必ず完結はさせますのでご了承下さい。


今回は『ロッド鉱山』について少しだけ補足説明をします。

『金の王国・ロッド』の東に位置しており、鉱石や金属が大量に採取できます。

国の商人がそれを採取し、ロッドに売りそれをロッドで武器や鎧などに加工してそれをまた商人や冒険者に売って収入を得ています。

そうすることでこの国は経済力を成り立たせています。

ロッドの国力の強さや武器防具の充実度はここに由来しています。

また、『ロッド鉱山』は『水の港・リャワテ』との唯一の連絡路になっています。

入口から真っ直ぐ進むとそのままゲイルやモンスターと鉢合わせせずにリャワテに抜けることができます。

実は分かれ道でレイ達が進んだところに『危険!』という立て看板が立ててあります。

そうすることで商人や冒険者が迷い込まないようになっています。

その立て看板を立てたのはゲイル自身とか。

意外と優しいところもありそうな不死鳥です。


次回はその『不死鳥のゲイル』とレイ達が交戦します。

リョウが立てた作戦は成功するのか。

温かい目で見守って頂ければと思います。


これからも『神族』を宜しくお願いします。

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