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聖装

作者: あんたのわたし

『情景描写』の回にもかかわらず、『情景描写』を極力抑えた作品を書いてみました。『情景描写』の存在意義を問うというということになるかも。もちろん、次作は『情景描写』満載の作品の登場が期待されます。


 ここは、ターレス商会の巨大ビルの奥の奥のコレクションルームである。深夜にもかかわらず、さきほどから、怪しげな影が、二つ、三つうごめいている。


「こんなことでは迷惑ですわよ」


「愚痴こいてないで、例のものを探せよ!」


「金輪際、こんなことは許されませんよ。下品な任務には絶対に参加しない!」


「何のこと言っているかわからないぜよ」


 ジミーは、今回の作戦のためきちんと訓練を受けてきたというのに、今日という日は、まことにうまく行かないような気がしてきた。なにか息が合わないし、乗れないのだ。


「私たちは、うまく意志疎通ができなければ、どんな仕事をしたってうまく行くわけがございませんわ。とおるさんに、ジミーさん、さっさと引き上げましょう」


 あかりも珍しく、ジミーの意見に賛成した。


「しかし、こんなお宝が目の前にあるというのに、俺たちは、引き返すしかないのかね」


「仕方がないじゃないの。これが、私たちのルールよ。こんな、へんてこなコミュニケーションで仕事を無理にやろうとしても、十分な気配りができないことは、これまでに、証明されてきている訳よ! こう言うときには、あきらめて帰るのが一番よ」


 恨みがましく、一番年少の少年ジミーは、お宝のコスチューム(聖装)をみた。

「これが、みおさめかもしれない」


 ここへくるまで、無数のセキュリティシステムを破ってきた。それも、諜報部の努力で手に入れた、警備情報を大いに活用することもできた。そして、最初は、大いに幸運にも恵まれた。そして、ついにお宝にたどり着いたのだった。


「手を伸ばせば届きそうなのに……」


 でも、今回はあきらめるしかなかった。それほどに、あかりの決断は、絶対で、少年やとおるには覆すことがもう不可能であった。


 しかし、徒労で成果なしで帰ることになっても、それでも、無事にうちに帰りつくまで、大いなる困難が待ち受けていた。延々と続く迷路を、セキュリティをひとつひとつクリアしながら、退却していかなければならなかった。


「本当に、つらいです~」


 と、ジミー時田。


「ヘンな声出さないで!」


「困りましたわね」


 早速、最大の難関にぶつかってしまった。来るときには、なにも問題がなかったのに、どういうわけか、関門が閉ざされ、来るときには有効だったパスワードが無効になってしまったのだ。


「どうにかなりそう?」


 あかりがうめいた。


「時間さえ十分にあればね……」


 とおるは、もういちどチャレンジしてみた。


「残り時間も、限られているわよ! というか、もうないわよ」


 ということで、ここのセキュリティシステムに関して、少しばかり、説明しておくことが必要であるかもしれない。二人は、ここへ忍び込む前のことだ、いつものブリーフィングを受けた。教官は、忘れてならないことは、次の点であると教えてくれた。


『君たち、この地域にとどまること、歩みを止めること、なにか、不都合、計画に反することが起こって、戸惑いがあるということが、セキュリティシステムに引っかかる最大の原因なのです』


『躊躇したり、立ち止まったりしてはダメ! 流れるように、行動できないものにセキュリティシステムは、目を光らせています。そのようなものを発見したら、セキュリティシステムは、なおさら、用心するでしょう』


「だから! ここにとどまることはできないのよ」


「戻ることも、進むこともできずに、つまり、万事休すということでしょうか」


「おっと、警報装置が作動しました。警備員たちが、こちらへ向かっているようです」


 このままでは、三人はスパイとして捕らえられ、拷問を受けた上で死刑になるのは間違いなかった。


      *      *


 しかし、数日後、ジミー時田と早乙女雪あかりは兵舎の食堂でのんきに飯を食っていた。


「なんだこいつらは!」


 先輩や同僚たちが、食堂で、飯をくうそのくいっぷりにあきれて、みていた。


 一緒にあきれて眺めていた先輩が言った。


「しようがないだろうな。過酷な任務を終えて帰ってきたわけだから、帰還の可能性は、一パーセントだったのに、よく戻ってこれたよ」


「しかし、成果は上がらなかった。もう少しのところまで行きながら、計画を断念してしまったわけだから。彼らを、ほめる要素はなにもないよ。残念だけどね」


「ところで、昨日の話になるが……彼らは、作戦の結果、昇進ではなく、資料室の整理を申しつかることになった。あそこの仕事は、本当に骨が折れるらしい。しかも、この何年間か、資料の整理担当の人員が置かれていなかったために、なにをやるにも、一からやる必要があるという」


「……そこなんだよ。なぜ今頃、資料の整理に力を入れるようになったのか? そこが、俺には、納得がいかないと言うか、腑に落ちない点なのです」


「というより、おちこぼれを収容する施設が必要になったと言うわけだろう」


 黒のスーツを身にまとった、体格のいい男たちが食堂に入ってきた。


「おい! あれをみろよ! すごいのがお出ましになりましたよ」


「えっ! ひょっとしたら、あの人って影の指令と呼ばれている人物ですか? 実際にみるのは、初めてだから、確信が持てないのだけども、あの、制服は、……そして、お供の連中の制服と、肩の……」


「影の指令の一団、食堂に入ってきたと思ったら、大食い二人組のところへ向かっていくぞ」


「ジミー時田を、どこかへ連れていこうというのか? しかし、ジミー時田は、無能の割には態度がでかいぞ。何か言い返しているからな。あっ、結局は、無理矢理連れて行かれる。まずは、士官用の食堂で事情聴取か? 引きずられていく姿は、やはり負け組の惨めさ、悲哀さに満ちてるな」


 ところで、これを目撃していた早乙女雪あかりというむすめは、いつものとおり、考えがまとまらなかった。こんどの事態は、あかりにとっては、非常に好ましかった。というのも、これをきっかけにして、軍からおさらばして、学校に戻ることが出来るようになるようになれるというはなしが父親から来ていたからだ。しかし、あかりはこの事態を素直に喜ぶことができないでいた。それは、ジミー時田の前任の資料係、伝説の資料係のことが頭にあったからである。


 ところで、資料係ジミー時田の前任の、伝説の資料整理係が、失踪してから、もう何年たつだろうか? 彼は、いろいろと悪い評判がたっていた。ターレス商会のシガー社長に引き抜かれたといううわさも聞く。そして、そのたちの悪いコレクション癖も、どうにもかばってやれない程度のものであったそうだ。つまり、このたびいろいろのことがわかってきたのだが、この整理係は、失踪のついでに貴重な資料を持ち出していたのだ。伝説の資料整理係の失踪から、もう、何年かの月日がすぎていた。その伝説の資料整理係が持ち出した資料のいくつかが、市中の古物商の店で発見されたのだ。それを契機にして、浮遊大陸Mバスターの資源を巡って、ライバル国の関係にあるクルマル国の不穏な動きが問題になってきている。


「これは、なかなか大事おおごとになりそうだ」


 あかりは、思った。


「そして、この事件は、あかりの密かな喜びにもつながっていた。この背後には、必ず伝説の資料係と、それを操っていた陰の人物が表に出てくるはずよ。なにかの大冒険が始まる前触れかもしれない」


 それは、一つのあかりの勘であった! そこに何の根拠もなかった。


 そして、なにか得体の知れない恐怖のようなものがあかりにつきまとっていた。


「そして、これは何か悪いことがおきる前触れ……」


 そして、仕官食堂の扉が開かれ、大男がジミー時田のことを連行して行った。


 大男のたちにつれられて行く間、ジミー時田はなんとか抵抗しようとしていた。


 あかりは、大男たちの行く手を塞いだ。


「あんたたちは、誰?」


「指令調査部の大道おおみち部長と、その部下であります」


「それが、ジミー時田に何の用事?」


「このたび、Z作戦に関わる一つの嫌疑が持ち上がりまして、われわれはその調査を行っております。」


「私たちが、コレクションルームに忍び込んだの、あれってZ作戦とかいうの? それが、このジミー時田と関係があるというの。何の関係があるの?」


「この二人は、現在紛失中の重要な資料を、古物商で、売り払ったというじじつが判明しました。われわれは、彼らに対して取り調べを行うために、連行いたします」


「しかたがないわね。ところで、彼は、なにを盗んだというの?」


「それは、秘密です」


「秘密じゃねぇよ! たんなるフィギュアだよ。そして、盗んだって言うのも言いがかりなんだよ。すこしは、俺たちの味方になって、庇ってくれたっていいじゃないか!」


 ジミー時田は、反論した。


「……」


 早乙女雪さおとめあかりは、彼らの味方をすることはなかった。ただ、このとき、なぞめいたつぶやきが彼女の口から漏れでるのをその場にいるものたちは聞いたような気がした。


「これも駆け引きの一つかしら。なにが本当で、なにが駆け引きなのかわかりにくい世の中になってしまったものね」


 早乙女雪さおとめあかりがこれ以上、大男たちから、ジミー時田をかばおうとはしなかったのにはわけがあった。というのは、あかりには、大男たちがジミー時田を連行できるようには思えなかったからだ。


 あかりの考えは当たっていた。ジミー時田は、大男たちの捕縛を破り逃走してしまったのだ。


      *      *



 ここは、下町の猥雑な店並の中の一軒の小料理屋『市松』。この店を、この国の首相が訪れた。ちょうど日が入りはじめた頃で、並びの店各の看板に灯がともった頃だった。


 それは、寒々とした晩であった。


「夜には、雪が降り出すかしら……」


 通りの人の行き来が増し、夜も更け切らぬと言うのに、酔っぱらいのわめき声が聞こえてきた、ちょうどそんな頃であった。


 小料理屋の二階の特別室に集ったのは、三人である。首相、軍のトップ、そして、浮遊大陸Mバスターの司祭の代表であった。


「お国の将来がかかわるようなことだから、ぜったいに、粗相はなしにして頂戴」


 女将、妙子たえこは、とても神経質になっていた。


 ふと、そんな折気がつくと夜の街に、まだ十一月なったばかりだというのに雪かが舞い始めていた。


 妙子は、雪の降ってくる空を見上げながら、遠くにいる娘のことを思った。娘の名は、だれあろう。早乙女雪さおとめあかりであった。


      * *


 カラスがカーと鳴く。


 山村の長閑のどかな秋景色である。


 しかも、夕焼けに染まった秋景色である。


 心寂しいものを感じるのは、道ばたの地蔵様ばかりではないだろう。


 どこかの農家の庭先で飼われている犬が鳴き出した。というか、えだした。



 ここの犬は、人に吠えつくので郵便や新聞の配達人に迷惑がられている。


 ヒモでつながれているので、危険なことはないのであるが、しかし、今日は、庭のあちこちに移動しながら、何かに対して威嚇でもしているのか。犬は、執拗に吠え続けていた。


 この家の門の郵便受けの下には、小さな看板がかかっていた。


『留守。学校に行っています。あかり』


『後期課程の虹色講座を受講の方は、早めに手続きを完了させてください』


 連絡用の掲示板の前には、学生でごった返していた。午前の授業が終わって、学生たちは思い思いに食事を取りに行った。


 食堂にはたくさんの生徒がおり、混雑していた。そして、うまく席が取れた学生たちから、思い思いに食事を始めた。


 一つのテーブルには、仲のよい仲間が集まってきていた。そこには、何人かの仲間と、早乙女雪さおとめあかりがいた。


「あかり、あの犬家に戻ってきたそうね」


「庭で飼っていた犬の話よ。愛嬌のない犬」


「家出しちゃってたのよね」


 仲間たちの話題の輪の中心には、早乙女雪あかりがいつもいた。


 あかりは、あの作戦のあとで、また、ふつうの女子学生に戻っていた。


 この語らいの最中のことである。なにかの羽音のような音が、次第に、明瞭な、そして、重々しいエンジン音に変わり早乙女雪、そして、仲間たちの耳にとどいた。


 食堂というか、テリアのガラス窓からは、雄大な山の景色が眺められた。


 編隊を組んだ、飛行機が窓ガラスの景色に現れた。編隊は、山を越えて、飛び去っていった。


「あいつらかしら?」


 近くの軍基地のことを言ったのである。


「そうね」


「目的地は?」


「もちろん、Mバスターよ!」


 あかりは、空のかなたに見えるかすかにみえる浮遊大陸を指差した。


「こんども秘密、秘密の任務なの?」


「……」


 あかりは、急に口が重くなった。あかりの顔に暗い表情が浮かんだ。Mバスターについて、仲間たちは、なにかいえない秘密があかりにもあると感じた。


 あかりは、すぐに元気を取り戻した、まぶしそうに、飛行機を空に探していた。


「あかりのお父さんの仕事は、本当に大変なのでしょうね」


「それは、世界的な有名が学者ともなると、並のレベルの人間じゃ、思いもつかないような苦労があると思うよ」


「たとえば?」


「だから、俺には思いつかないといっているじゃないか」


「やっぱり、おまえは俺が思っていたとおりのボンクラか」


「ワハハ……」


「Mバスターに行ってみない?」


 何を思ったのか、あかりは、みんなを誘ってみた。あかりの唐突な提案に、仲間たちには、Mバスターにどうやっていくのか見当もつかなかった。


 たしかに、Mバスターとは、浮遊大陸のことである。浮遊といっても、ただ空を浮遊しているというのではない。それは、次元を超えて、さまざまな世界を浮遊しているのだ。


「Mバスター」


 あかりは、よく知っていた。猫卍路魔人のお社の森の中にある。抜け道の奥には、Mバスターに通じている。あかりは、Mバスターをなんども訪れていた。たいていは、父のお供であったが、一人で探検に行ったこともあった。だから、あかりのなかには、Mバスターについて、危険なイメージはまったくなかった。


「猫卍路魔人のおやしろの裏の木立。そこにある鳥居を抜けるとすぐそこにあるのよ」


「なにが?」


「Mバスターへの抜け道よ!」


      *      *


「ここが、Mバスターよ」


 あかりと仲間たちは、Mバスターに到着した。


「なに、普通に海岸のリゾート地じゃないの?」


「Mバスターのこの地域はリゾート地のビーチね。でも、そうでない場所もあるのよ。Mバスターはいろいろあるの」


 仲間たちは、リゾート地らしい立派な別荘が多く立ち並ぶあたりを感心して眺めていた。


「うちの別荘に来ない。向こうのほうにあるから。みんなの水着も用意してあるから」


 あかりが走り出すと、仲間たちもあかりの後を追って走り出した。


      *      *


 ところで場所が変わって、ここは、危険なMバスターの地域である。人は、ここをテサと呼んでいる。


 ここで一人の兵士が傭兵として、仕事をしていた。彼の名は、佐山亨さやまとおるという。今、とおるは、敵前逃亡した兵士たちを逮捕する任務に携わっていた。佐山亨は、先ごろ、ジミー時田や早乙女雪ととある作戦に参加していたが、作戦が失敗に終わったために職を失い、Mバスターに流れてきていた。


 兵士にとって、敵前逃亡がどんなに重い罪であるのか、われわれは、骨身にしみるように教えられてきた。


 しかし、そのような間違いを犯す兵士は、後を絶たないのだ。理由はいろいろとある。それでも、俺が想像していたよりは、この戦場では、より頻繁に敵前逃亡が起こっていた。


 しかし、尻拭いをすることになる多くの兵士に、迷惑が及ぶと言うことは、たいてい決まりきったことであるのだ。


「俺には、どういう分けか、そのような仕事が回ってくる。敵前逃亡のために孤立してしまった味方の救出作戦。補給物資の搬送、及び護衛。敵前逃亡した兵士の逮捕。敵前逃亡した兵士のために失われた陣地の奪回。傭兵家業に舞い戻ってきたやつには、なかなか楽な仕事は回ってこない」


 今回の仕事は、熾烈を極めたもので、移動のたびに戦闘が付いてきた。


「お偉方が、どんな考えで戦いを進めているかはわからない。どこか、うまく歯車がかみ合わないところがあるのだろう。この歯車軋みをやつらに代わって味わってやるのが俺たち傭兵の仕事だ」


 テサという名の町は、焼け付くような日差しを今でも忘れない暑さの町であった。


 われわれは、そこに駐屯し、つぎの作戦の準備を行っていた。何度も会議が行われ、ミーティングやブリーフィングが行われた。


 そして、ある朝、目が覚めると、とても深刻な事態に俺たちは陥っていた。


 われわれの町テサは、包囲されたのである。正確に言うと、テサの町に駐屯していた我々の軍が、我々の軍の中に起きた多数の人間の逃亡兵たちによって包囲されていたのである。


「何といううかつなことだ」


 とおるは思ったが、そんなことを言っている場合ではないことが、すぐにわかった。逃亡した兵士のなかに含まれていた、俺の上官に代わって、包囲された軍の指揮をとることになったのだ。


 援軍が派遣されたという情報が入ってはいたが、しかし、援軍にあまり期待をかけるわけにはいかなかった。


 この援軍が、敵に寝返る可能性は十分すぎるくらい考えられるからである。


 とおるは、情報が必要だった。とおるは、部下を陣地に配置すると、指揮官に提供されるアクセスコードを用いて、情報の収集を開始した。予想通り、ろくな情報はなかった。


 とおるは、ポムに電話した。ポムは、元傭兵で一緒にいくつもの戦場を駆け回った仲だった。ポムは、いつのまにか出世して内閣の仕事を任されているという。ポムからは、いくつかメールが届き、出世した後も付き合いは続いていた。とおるは、Mバスターを離れる気持ちが強くなっていたので、ポムに連絡することにした。何か面白いはなしが聞けるかもしれない。というのも、ポムは、小料理屋に出向いているそうだ。そこでは、夜な夜な国のお偉方が集まり、秘密の会合が開かれているという。そして、重要な国家の方針の決定に当たって、必要な根回しというものが行われていた。


「そこで働く人間というのは、本当に口が堅いものなのです。でも、それは時と場合によりますがね。とおるさんは、Mバスターを離れたいという気持ちみたいですが、それは、やめといたほうがいいと言うのが私の意見です。私が出向いている小料理屋『市松』には、司祭と呼ばれる新しい登場人物が、この一、二ヶ月登場しています。それは、Mバスターの司祭であるのです。彼は、いろんなことを首相と相談しているそうです。自分の立場上、とおるさんに教えてあげられるようなことは少ないのですが、一つだけ面白出来事について報告しておきます。それは、スパイ事件です」



 小料理屋『市松』の女将妙子たえこは、自分の目が信じられなくなった。そこで、ポムが女将さんに呼ばれた。


「自分が預かった書類入れが、どうもなくなってしまったような気がします」


 そこで、ポムは女将さんから事情のくわしい説明を受けた。首相から、女将は、困ったことがあったらポムに相談するようにと言われていたからである。ポムは、世界中を旅しているし、知恵もあるし、小柄で、華奢に見えるが、武術には長けている男だからと首相は説明していた。


 ポムは、女将さんの話を聞き終えると笑った。


「スパイですよ。スパイが罠にかかったのです。国家的な重要書類を以下に信頼できるとは言え、女将さんのような一般人に預けることはありません。申し訳ないが、おとり作戦の一端を女将さんが担うように、首相が決断したのです。われわれは、細心の注意を払い、スパイの動向を観察しました。スパイは、古株の板前、辰さんでした」


「えっ、でもどうして? 確かに、しっかりと金庫にしまっておいたはずなのに……」


「その手の合鍵は、スパイの辰さんは、山ほど持っていましたよ。これが、辰さんが持っていたこの金庫の合鍵です」


 ポムは、女将さんに合鍵を渡した。


 女将さんは、合鍵で金庫を開けた。金庫の中身をしっかりとしらべた。すべの封筒、書類入れ、箱などを見てみたのだが、やはり、自分が預かったものらしい書類入れは、見あたらなかった。


「自分が、思い違いした訳はないしあまり……となると、人を疑ってみるしかなくなる。しかし、そのまえに、もういちど、あちこちを探してみる必要が……。でも、あなたが言うとおり、辰さんが……。でも、どうしてもそんなことは考えられません。あの人は、本当によい板前でした。あの人がいなくなるのはうちにとって打撃です」


 女将さんは、意気消沈してしまった。


 このように、ポムは、佐山亨とおるに出来事の一部始終を、仔細に書き送ってきた。そして、ポムは、自分の考えを述べた。


「見つからないのは、カタログの中の一枚の写真とそれに関する資料です。その写真には、浮遊大陸Mバスターに古代から伝わるある種の制服が、載っていたはずなのです。それは、『コスチューム』あるいは、『聖装』と呼ばれています。あの古代の司祭の祈りが込められ、それを着るものに特別の力を与えるとされています。今度のスパイの背後には、クルマル国や『聖装』の研究を行っているターレス商会が絡んでいると思われます。そして、Mバスターの司祭たちもこの動きには大きな懸念、心配を抱いており、わが国に相談を持ちかけてきています。このままでは、大きなトラブルが起きそうな予感がします。Mバスターには大きな資源があるとされていますからね」


「ポムは、Mバスターに留まるようにように言っているのだな。もう少し我慢すれば、よい仕事、働き口が見つかるということか。まずは、この包囲網から何とか抜け出すことが先決だがな」


 佐山亨さやまとおるは、納得した。そして、ふたたび、元気がみなぎってくるのを感じていた。


 そこに、メールが届いた。それは、ジミー時田からのメールだった。ジミー時田が逃亡したと言う話を聞いていたので、佐山亨は、ジミーのことをずっと心配していた。メールには次のようなことが書かれていた。


『とおるに兄さん、Mバスターではすごいドンパチがもうすぐ始まります。ほとんど、お祭りと言ってもいいくらいです。とおるの兄さん、俺たちの仲間になってください。報酬は、ぱっちりはずんでもらえそうです』


 佐山亨は、部下を率いて、包囲網を突破した。


 そして、すぐに傭兵周旋所に電話した。


「今度の、仕事はギャラには合わない危険なものだったぜ。しばらく、頭を冷やすために、休暇をとることにしたよ」


 傭兵周旋所の係員は、素直に納得した。


「まあ、構わない。気が向いたらいつでも電話をくれ、お前には、やってもらいたい仕事が山とあるから……」


      *      *


 佐山亨は、あの事件の後でよく人に聞かれることになった。あの事件は、いったい誰が悪かったのか? 俺は、それにははっきりと答えた。『シガー』であると。しかし、あの事件で、誰が一番得したかについては、俺は、答えないようにしている。それが、自分を守るためには、大切なことに思えたからだ。残念なことだが……




 兵舎から逃亡して以来、ジミーは姿を消してしまったというのが、もっぱらのうわさだ。それっきりだった。何の連絡もなかった。ということで、やつに関しては、軍においても、逃亡事件となるところであるのだか、問題となるようなこともないらしい。これは、佐山亨さやまとおるのような人間には、特別扱いに思えた。


 そして、次の任務のために準備をしているときに、とある噂を聞くことになった。


 古代浮遊大陸の司祭のコスチューム(聖装)を着た無双の勇者の兄弟の活躍が、佐山亨の耳に届いていた。


 この兄弟は、『自分達の誇りであり、歴史でもある聖装を奪還しようぜ』という運動の先頭に立っているという。そういえば、ジミー時田には、弟がいたという話は聞いたことがあった。


「あいつらか!」


 それを聞いた佐山亨は思った。


      *      *


 佐山亨は、また自由の身に戻った。懐にはいくらかの金があった。これがなくならないうちに、ジミーが見つかればよい。そのとき懐かしい声が聞こえたような気がした。


 そこは、ほこりっぽい町外れの集落とでも言うものだった。一日中、靴を捜し歩いてたどり着いた場所がそこであった。


 声の方向では、屈強な男が子供と対峙してにらみ合っていた。男は、もう、我慢がならないという様子だった。男は、殴りかかるべく拳を振り上げたところであった。しかし、子供は、おびえる様子は、まったく見せなかった。子供の目は、さらに冷静な目で、屈強な男の動きを追っていた。それは、まさに、小柄なライオンが、逆に巨大な象を追い詰めた、まさに、そんなように見えた。



 屈強な男は、対峙する子供がただ者でないことを感じ取り、振り上げた拳を降ろすと、その場を立ち去って行った。


「ここいらの子供たちときたら、ジミーもふくめてこんな奴らばかりだからあきれてしまう」


 その子供を見ていたら、とおるはまたジミー時田のことを思い出したのだ。


『俺たちが、いつか本当に組んだら、すごいことをやり遂げることが出来そうな気がしていたなぁ……』


 ジミーの言葉が、佐山亨の頭によみがえってきた。



 佐山亨さやまとおるは、気がつけばかって部下としてジミー時田が入隊したころの記憶がよみがえってきた。。


 とおるは、新兵のジミーのことをずいぶんぶん殴った。


 ジミーはとんでもない恨みのこもった目で俺のことを睨みつけてきた。


 何度も言っているように、俺はジミーが嫌いというわけではない。あいつは、俺と同じ故郷で生まれ育ってきた。俺と同じ様な、苦しい暮らしの少年期を送ってきた。だから!奴が考えることは完全に理解できる。


 しかし、ジミーはあまりにも子供なのだ。あいつの考え方はあまりにも自己チューなのだ、そして、突飛なのだ。あいつは、普通の兵士としては浮きすぎている。あいつは、あの馬鹿力にものを言わせてボクサーにでもなれば良かったのだ。リングの上で、自由自在の身のこなしで、相手のパンチをかわし、あの見事な足裁さばきで繰り返して奇襲攻撃を仕掛ける!そして、機転の利いた物言いで、相手を挑発しては煙に巻く!観に来た格闘技好きの客は、駆け引きのふんだんに盛り込まれた試合に熱狂することだろう。


 確かにジミーは、評判の兵士だ。お偉いさんたちが、俺に意見を聞いてくる。『ジミーについてどう思う。ジミーは、ものになりそうかね?』誰もがあのバカのことを気にしているのだ。俺は、『神出鬼没という奴です』と、本当の意見を言う。すると、お偉いさんたちは、俺の言うことが理解できないというような表情を浮かべてみせる。そこで少しばかり訂正を加え『遠からぬうちに大きな戦力に育ってくれるでしょう』というような意見を言う。すると、少し間をおいて決まったように、満足そうな表情を浮かべてみせたものだ。


 ジミーは、お偉いさんに、なんと深く信頼されているのだろう。俺のところに届いている奴の履歴を見てみたのだが、お偉いさんたちから、期待をかけられている理由などどこにも見いだせなかった。


 ジミーは、非常に貧しい境遇に生まれ、最低限の教育しかうけていなかった。


 ジミーは、取り立てて素晴らしい功績をあげたということもない。ただの、平凡な兵士であった。


 ジミーは、集団の中に入って行動しているときには、なんとも不調法ぶちょうほうに見えた。そして、ぎこちなさが際だった。


 それでも、ジミーを使わなければならなかった。ジミーは、お偉方には期待されていた。そして、俺がお偉いさんに認められるには、ジミーを、一人前に育て上げる必要があったのだ。


 ある日、ジミーのことで上官の呼び出しを受けた。


 君は、知っていると思うが、まもなく君の仕事の成果が問われることになるだろう』

 上官の机には、鉛筆で書きなぐったメモがのっていた。上官は、メモを手にとって内容を確認した。


 上官は、上目づかいに俺の方を見た。


 計画の方は、期待どおりの成果は上がってはいない。だから、こちらの仕事の進展は、非常な関心事になっている様子だ。


 佐山亨は、夢想の世界から現実の世界にもどると、新しい靴に履き替えジミー時田を探す旅を開始した。


 早乙女雪と仲間たちが海岸で楽しい時間を過ごしていると、深刻な災難というか騒動が持ち上がった。最初は、大地震が起こったのかと思われた。そして、大戦争が起こったのかと思われた。そして、地球最後の日は、こんなになるかと思われるくらいの状態になった。地面が揺れ、遠くではあるが、火柱が立つのが見え、煙が空を覆っていた。


 そして、挙句の果てにケルベロスがあかりの前に現れたのである。まことに生き物とは思えないような、小山のような存在であった。


「誰、突然攻撃してくるの。卑怯でしょう!」


 と、あかりは言った。騒動の原因が、このケルベロスにあるとあかりは考えたのだ。


「あかりちゃん。それは誤解だよ」


 その声は、天から響いてきたように思えた。しかし、実際にはケルベロスの頭に腰掛けているジミー時田の声であった。


「あんなどこ行くの? 向こうには何があるの?」


 早乙女雪は、ジミー時田に呼びかけた。しかし、ジミー時田は、そのあかりの質問には答えなかった。


「あいつらが、ああやって俺たちを呼び起こしてしまったんだ。俺の力じゃどうにもならない。ケルベロスは、あいつらに罰を与えると言っている」


 早乙女雪は、一緒にいた仲間とともに、ジミー時田を見送った。どうにもとめようがないとわかったからだ。ただ、早乙女雪の胸に不安がよぎった。


      *      *

 ジミー時田と、ケルベロスが向かった先、Mバスターの荒野の一角に、近代的な建物群が存在していた。それは、クルマル国という国によって作られていた。建物群は、巨大なプラントと巨大な格納庫から出来ていた。


 格納庫の一角には、クルマル国の作戦会議室が臨時に設けられた。そして、クルマル国国王臨席の元に、作戦会議が開かれていた。


 今回の作戦を実際に企画したターレス商会の社長シガー氏が、クルマル国の国王に説明していた。

 

 シガー社長は、ポケットからゴム風船を取り出すと、それに空気を吹き込んだ。ゴム風船は、どんどんと膨らんでいって、パンパンになった。シガー社長は、国王にその風船を差し出した。


「これが、Mバスターです。Mバスターというやつは、次元の狭間をぷかぷか移動していきます。この世界に現れては、また、ちがう世界に現れます。神出鬼没というやつで、尋常な手段では手に負える相手ではありません」


 社長のシガー氏は、机の上のピン入れから一本のピンをつまんで取り上げた。


「わが社は、この手に負えない浮遊大陸をわれわれの自由にする方法をついに見つけ出しました。わが社の研究者たちは、Mバスターという浮遊大陸が一種の生命体であることを突き止めました。そして、こうすればMバスターから命を奪うことができると確信したのです」


 シガー社長は、指でつまんだピンをゴム風船に突き立てた。ゴム風船は、音を立ててはじけた。


「われわれは、命を失ったMバスターをクルマル国の領地に誘導していきます。このようにして、われわれは、Mバスターの資源を独占することが出来るのです」


 シガー社長は、自信に満ちた笑みを浮かべてクルマル国王のことをうかがった。


「君は、浮遊大陸Mバスターが、心臓を持っているというのですね」


 王様は、確かめた。


「そのとおりです。そして、われわれは王様に提供していただいた資金によって、Mバスターを殺してしまうシステムをついに完成させたのです」


「浮遊大陸Mバスターは、古代より、そこに住む人々に不思議な力を授けてきました。とくに、Mバスターにおける祭りをつかさどる司祭は大きな力をMバスターからあたえられていたのです。われわれは、司祭に与えられる不思議な力の研究を進めていました。その結果、Mバスターの司祭たちは、その不思議な力を独特のコスチューム(聖装)を通して獲得していることを突き止めたのです。私たちは、さらに研究を進め、コスチュームに流れ込むエネルギーの源を探り当てました。それこそが、Mバスターの心臓に当たるものです」


「口で説明してみましても、この研究の成果のすばらしさはなかなか理解していただけないと思います。では、これより実際に作戦を実行して、浮遊大陸Mバスターから、命を奪ってお見せしましょう」


      *      *


 格納庫の巨大スクリーンに浮遊大陸Mバスターに関する資料映像が流された。それには、ナレーションが添えられていた。


『これは、浮遊大陸Mバスターの心臓部付近の映像であります。ここは、さまざま宝石が取れる星であります……」


 そのスクリーンに突然怪しい影が映し出された。あやしい影はうごめいている。それは、生き物のようにも見えれば、霧のようにも見えた。


 そのモニターを見つめる男たちに動揺が広がった。


「なにかの妨害工作が行われているようです」


 つぎに、水着を着た早乙女雪とその仲間たちの姿がスクリーンに映し出された。


「あの服装は……?」


「水泳授業などの服装……」


「水着と呼ばれるものです」


「あれを着ている意図は……?」


「それは不明ですが、どうもリゾート地のビーチで戯れる客かと思われます」


「しかし、あの水着には急速にエネルギーを蓄えている模様です。あのエネルギーを一気に放出すれば、破壊兵器になりえます」


「水着とやらと、Mバスターとの間で交信が行われているらしい。問題だ……」


      *      *


「敵主力部隊の攻撃目標は、あの水着の連中だ。浮遊大陸Mバスターの生命は、あの水着の子供たちに何かの力を与えようとしている。構わない、あいつらを攻撃しろ!」


 ただ、自信家のターレス商会社長、シガーは、落ち着いていた。このようなハプニングで、たじろぐような人物ではなかった。ひとつだけ気にかかることがあった。


 しばらく前、ターレス商会のコレクションルームに賊が侵入した。彼らは、警備システムの網にかかり、兵士たちに包囲された。しかし、兵士たちは、その賊を取り逃がしてしまったのだ。兵士たちの証言によると、彼らのとっさの動きは、その敏捷性は、この世のものとは思えなかったという。この話を聞いたシガーは、あるうわさを思い出した。


 それは、浮遊大陸Mバスターと強い交信能力を生まれながらにして所有するという少年のうわさであった。しかし、そのような力を持つ人間が、一人ではなく、多数いたとは、シガーにも想像もつかなかったことであった。しかし、そんなことは問題にはならない。もうすぐ、浮遊大陸Mバスターは、すべての力を喪失して死んでしまうことになるからである。


      *      *


 そこに、


「敵影発見! 水着の人間たちのほうからこちらに向かってきます」


「敵の主力部隊! あの水着の子供たちとは比較にならないくらい巨大なエネルギー体です。Mバスターから放出されるエネルギーの量が一気に増加しました。浮遊大陸Mバスターはわれわれの意図を感じ取り、先制攻撃を仕掛けてきたのでしょうか」


「敵の先制攻撃など問題ではない。こちらの本当の力を見せてやる。これから、作戦を開始する」


 祭壇を取り巻くように、何百、いや何千人もの司祭が集まっている。しかし、よく見るとそれらは司祭ではない。彼らは、Mバスターに伝わる司祭のコスチューム(聖装)を身にまとった兵士たちであった。古代の司祭は、深紅の司祭服を身にまとい、浮遊大陸Mバスターに宿る魂と交信を行い、さまざまな力を得ていたのだ。


 しかし、クルマル王国の兵士たちは、念のエネルギーを集中させて、浮遊大陸Mバスターの心臓をやき尽くしてしまおうとした。シガーの言うところの、浮遊大陸Mバスター殺害作戦が始まったのだ。


      *      *


 浮遊大陸Mバスターに宿る生命を祭っている祭壇は、クルマル国の基地から程遠くないところにあった。そこでは、降りかかっている災難を無事にやり過ごすことが出来ますようにと、本物の司祭たちが神に祈りを捧げている。つまり、先祖の神々と、Mバスターに宿った命にである。


 霊感というか、インスピレーションが、司祭の脳裏に去来した。ひとりの司祭は、封印された祭壇に駆け出す。そこは、岩山に巨大な洞窟がくり貫かれて、作られていた。


 そこにはいくつもの巨大な石像が祭られていたのだ。その像たちに異変が……


「邪悪な力が、封印を解かれようとしている。邪悪な力がもたらす悪災が世界中にばらまかれようとしている! しかし、Mバスターに宿る命はそれを望まない!」


 司祭がそう言うと、集まった僧侶たちが、いっそう熱心に祈りを捧げ始めた。


 シガーは、自分の狙い通りに作戦が進行して行かないので苛立ちを隠せなくなっていた。シガーは命じた。


「雑魚には構うな! 念を集中させて、一気に、Mバスターの心臓を焼き尽くすのだ」


 石像が、次々に、鼓動を始めた。体内を燃えるような血液が巡り始めた。そして、石が暖かい皮膚に覆われた筋肉に代わっていった。そして、石像たちが蘇ったのだ。石像たちは、ゆっくりと目を開いた。石像たちは、ゆっくりと歩みを開始した。石像の軍隊は、洞窟の外に姿を現した。


 洞窟の外では、先ほどからクルマル軍のモニターに映し出されていた霧のような存在が近くまで来ていた。霧のような存在は石像に挨拶を行うためにか、じょじょにその姿を現した。それは、ケルベロスとそれを操るジミー時田であった。


      *      *


 佐山亨は、ジミー時田の弟を訪ねて、Mバスターにある小さな村を訪れた。

 

 Mバスターとクルマル国との戦いは終わった。クルマル国とターレス商会は、この戦いで手ひどい損害を受けてしまった。


 ところで、ジミー時田は、どうなったのか、佐山亨は実際に自分の目で目撃することはなかった。


 早乙女雪さおとめあかりから聞いた話だと、ジミー時田は戦いの中でエネルギーを燃やしつくし、石に変わってしまったと言う。


 ジミー時田は生まれ育った村で、依然として石のままであり、それを墓の代わりにして、ジミー時田の弟が守っていた。


「そんなのわからない。超能力だの。」


弟は言った。


 しかし、佐山亨は、その力がこの弟にも芽生え始めている気配を確かに感じ取った。


           了

2ちゃんねる創作発表板「『小説家になろう』で企画競作するスレでも、皆さんのお越しをお待ちしています。

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