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支えてくれた人へ 2

 功平が会社を作ろうとしている本当の理由は・・・・。

 

 「人助け!?え、何、プアーズってことは貧しい人々を助けるってことか。」

 陽一は少し興奮気味に聞いた。いきなり会社を立ち上げると聞いたのだから無理もない。功平はビールのグラスを置き、少し神妙な面持ちで話し始めた。

 「世の中って何が起こるか分からないだろ?ただ座っているだけでバカ高い収入が懐に入るやつもいれば明日の生き方さえみえないやつだっているんだろ。俺たち医療に携わる人間だって病気による差別や偏見、いじめで苦しむ人たちを見るはずだろ?他にも電子化についていけないご老人や過疎による買い物難民・・・。俺はそういった人たちの光になりたいんだ。人はだれもが幸せになれる。その手伝いがしたいんだ。」

 功平の目には涙があった。陽一はそれを聞いて

 「そっか・・。お前小学生のときいじめにあってたんだっけ。その頃はお前のこと知らなかったけど、相当大変だったらしいな。なんでいじめられてたのさ。」

 と聞いた。功平は涙を浮かべたまま、

 「親父が・・・・パーキンソン病だったんだ。」

 と静かに答えた。


 パーキンソン病。脳内の神経細胞の減少によって脳の指令を筋肉に伝える物質が減少し、震えや筋肉・関節の硬直などの様々な運動障害を引き起こす病気だ。原因は未だにわかっていない。この病気の80%弱は遺伝と関係ないとされているが、遺伝するパーキンソン病の遺伝子が判明していて、解析中というのが現状だ。そう、功平はパーキンソン病が遺伝している子とは遊ばせられないという大人の親たちの無責任なデマに振り回されていじめられたのである。

 「あの子と遊んだら歩けなくなるから…。」

 「あの子と話したらうつっちゃうから無視しなさいよ…。」

 学校にも苦情がきたらしい。なんで養護学校に転校させないのか。なんで隔離病棟に移さないのか。

 そのうち父が48の若さで他界したことも功平への差別を助長させた。功平は今でこそ気を確かに持っているが、中学生の時それが原因で暴力事件に巻き込まれてうつになった。それにつられて功平の母もうつになり立ち直っていないのだ。

 なぜ功平だけはこの残酷な環境から救われたのか。一人だけいじめに加わらずに陰で周りと戦っていた一人の少女がいたからだった。

 それが松木百合。功平の初恋の人だったのだ。彼女だけは功平に気さくに話しかける。もちろん百合は周りからみるみる孤立していった。でも彼女は決して泣かなかった。強かった。でも、そう長くは続かなかった。そのうち百合も元気を失っていき、功平に愚痴をこぼすようになっていったのだ。


 ここまでの話を聞いて陽一は俯いた。

 「ごめんよ、思いで掘り返さして。分かった、おれも協力する。本当の意味の人助けに。」

 功平は居酒屋のテーブルに倒れこむようにして声をあげて泣いた。陽一はその背中に静かに手をおいて明るくこう言った。

 「さあ、北海道に帰ろうぜ!!」

                        <つづく>

 次回もお楽しみに。(誤字脱字があったらお許しください)

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