集団リンチと大剣の日
第一話
集団リンチと大剣の日
初めまして。俺の名前は風見 神楽です。
今は放課後,場所は俺が通う私立御中高等学校の裏庭。
校舎とは反対側にうっそうとした林があります。
学校側が子供たちの心を豊かにすることになれば,と植林したのはいいが日が当たらない
ために今では肝試しに使われるほどおどろおどろしい雰囲気に包まれています。
しかも俺がここにいる理由は・・・
「待たせたな,風見いぃぃ・・・!」
男子の軍勢から一人躍り出て俺にそう言った
植林当初の目的とは全然違う産物達に呼び出されたからです。
「今日こそ,キサマを倒して美朱さんの愛を手に入れる!」
ウ,ウオオォォォォッッ!!
ふぅ,ため息を一つ。・・・どうしてこんなことになったんだっけ?
話は今朝にさかのぼる。
朝,いつも道理に学校に行く。
「神楽,おはようございます」
不意に声をかけられ,後ろを向く。そこには見知った顔がいた。
「美朱か。おはよう」
篠原 美朱。家が三軒隣の幼なじみで,うちの学校の高嶺の花。
さらさらしたロングヘア,ぱっちりとした大きな瞳。いわゆるひとつの美人だ。
しかもだれにでも礼儀は欠かさず,おしとやかな雰囲気があり,
成績優秀スポーツ万能ときたもんだ。
しかし,それは表の顔・・・。
裏では俺に嫌がらせをするためだけにどんなことでもする性格の悪さ,
その顔と言葉を巧みに使い人を自由に操るしたたかさを持った,恐ろしいヤツだ。
今までもひどい目に何度もあった・・・・・・・
「神楽。今日は用事があるので先に行きます」
「ん,わかった。じゃあな」
「頑張ってくださいね・・・」
タタタタタ・・・
少し怪しい笑いをし,すぐに駆け出して角を曲がり見えなくなってしまった。
何の用事か気になったが,すぐに思い知る事になった。
席に着いた途端に数十人の男子生徒が囲むように立った。なかには殺気だった者や,号泣
しているヤツまで居る
「?どうしたんだ?」
「風見・・・俺たち友達だよな・・・?」
「・・・そうかもな」
「そうか・・・じゃコレは何だ?」
ぺらっ
「ん?・・・・・・へぇ〜〜〜」
それは校内新聞だった。その片隅に『突撃レポート〜あのヒトに聞きたいこんな質問〜』
と書かれた欄があった。書かれている内容は,
『今回は学校きってのアイドル,2年C組の篠原美朱さんにお越し頂きました〜!』
『こんにちは』
『それでは美朱さん,最初の質問いきますよ?』
『ええ,どうぞ』
『(Q:今,好きな人はいますか?)です。おお,これはきになりますねぇ』
『いますよ。2年のk・kさんです』
『ええ!?コレは驚きです!!羨ましいですね!k・kさん』
『ただ・・・』
『ただ?』
『その人の強さに憧れたので,もっと強いヒトが居たらそっちに傾いちゃうかもしれませ
ん』
『要はそいつを倒せば美朱さんの愛は手に入れられると!!』
『そういうことです』
『いや〜今回は衝撃的でしたねぇ。では,また明日〜』
『さようなら』
当新聞部は真相を暴きます。何か,k・kに関する情報がおありでしたら新聞部室まで。
ブチコ・・・紳士的にその人と話がしたいので。
というものだった。そういえば昨日学校終わってしばらく居残ってたからなぁ。しかし,
今まで近くで見てたけどそれらしい様子はなかったけどな。
「で,これが?」
「しらばっくれんなよ・・・?k・k,それはカザミ・カグラ君。君しかいねぇんだよ」
「へ?k・kなんてイニシァルそこらにでもいるだろ?」
「・・・この学校は3人k・kがいる。が,カトウ・キョウは女子生徒。コウス・カイは
教師だ」
「・・・・・・・・・まじ?」
「そうゆうわけで」
「放課後,裏庭まで来てくれるかな?」
ギリギリと万力のような力で肩を絞めつつ,そう言ってくる。脅しじゃん,コレ。
ひやりとした汗を拭いながら,授業を受けた・・・・俺が何したって言うんだ。
そうゆう事が朝にあったのだ。男子からはこゆい視線を感じ続け,少し女子からも受けた。
しかし・・・あいつが俺のことを,ねぇ。なんか信じられん。
そんなことより目の前の現状だ。・・・この人数何?
朝の時にいたヤツの倍は居るぞ?いくら喧嘩が取り柄の俺でもコレはキツイ。
さて,どうしたもんかね。
「こねえならコッチからいくぞ!」
ウオォォォッッ!!!
裏庭がかつてないほどの熱気に包まれる。え,釘バットは危険です,そこのやつ。
やばい,これはやられる!
そう思った瞬間に,見た。
舞うように大剣を振る少女の姿を。
え,と思った時には消えていた。それと同時に男子生徒軍も倒れたが。
「・・・いったい何が?」
俺は不思議な気持ちを持ったまま,
よろよろと起きあがってきたリーダー格にとどめを刺した。
「ただいま」
「おかえり〜」
出迎えてくれたのはうちの兄貴。両親を事故でなくした俺の親代わりとしてとても頑張っ
てくれている。
「お客さんが来てるけど,誰?あの娘」
「会わんとわからんだろ。後で教えるからとりあえず戻ってくれ」
「あいよ〜」
そう言って引っ込んでいった。しかしだれだ?訪問の予定はなかったが。
キィ・・・とドアを開けると,いきなり
「こんにちわ〜」
と言う声と大剣が振り下ろされた。
「だわっ?!」
間一髪でよける。この大剣は,あの。
「はいっ合格〜。よかったね!」
突然の事に脳みそがついていけない。何の試験だったんだ?もう少しでまっぷたつになっ
てたよ?
「初対面で面はないんじゃないかな?・・・ふつうに死ぬし」
「いいじゃん,へるもんでもなし。私は神納。」
「ざっくりと大切な物が減ると思うよ!?てか,誰?」
「神納って言ったばっかでしょ」
波乱の一日は,大剣少女神納の笑顔と俺の疑問で終わった。