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第12話

 後日。


 私の前でひざまずくお二人は、命令違反をしたことを理由に、処罰をたまわるよう願い出た。少なくとも辞任したいと。




 想い返せば、あの時、お二人はあすこで私を待っておった。それは恐らく、このためだったのだろう。自らあえてなした命令違反の現場で、処罰を請う気であったのだ。


 私が気絶してしまったから、それが宙ぶらりんとなってしまったのである。


 実は、それまでにも、お二人は面会を求めて来ておったようだが。私の世話をしてくれておるおばさんが、私の言葉をそのまま伝えたらしい。そうすると、


『我らが来たことは、エリザベト様に告げるな。その心労の原因は我らに他ならぬ』とし、『我らに連絡をくれるのは、お嬢様の気分が十分に戻りなさり、他の者の面会に応じるとなされた後で良い』と言い残したと。


 ただ、それを私が彼女から聞いたのは、つい先ほどであった。それで、急ぎ呼んでもらったのだ。


 用意しておいたイスを勧めたのだが、固辞された。仕方なく、私もそれに向き合う形で立った。気絶したあの時と同じだった。


 私はおばさんには既に席を外してもらっていた。




 そして、今。その願い出を聞いた後、私はしばらく考え込んだ。お二人は待ってくれておった。私はあえてきつく言うことにした。


「何を言っているの。

 バカじゃないの。

 私はエリザベトでもあるのよ。私の半分はエリザベトなのよ。確かに私にはエリザベトの記憶はないの。

 でも、私が考えていることや想っていること――それに喜びや悲しみの半分には――エリザベトの心が混じっているのかもしれないの。アホウな私には分からないけれど、エリザベトの方は分かっているのかもしれないの。

 これは私が命じるのではないわ。お二人の本来の(あるじ)であるエリザベトの命よ。

 お二人に永世の近侍を命じるわ。いいこと。死ぬまで、私のかたわらにおり、私に仕えなさい」


 ゴリねえはその巨体をそこに崩して、床に突っ伏して大泣きした。


 チイねえの方は、1度はその場に泣き崩れんとするも――何とかこらえて、ひざまずく態勢を保ちつつ、拝命の返事をしようとするのだが――嗚咽(おえつ)で喉がふさがり、声を出すことができないようであった。


「返事をする必要はないわ。お二人に、これを拒むことを許す気はないから」


 そうまで言うと、床に座り込んで、私も大泣きした。涙は尽きせぬ如く出て来た。いつまでも枯れなかった。


 私は想わざるを得なかった。

 これは、エリザベトの涙なのだと。エリザベトがお二人とのことを想い出して、泣いておるのだと。


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