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第11話 (残酷、暴力描写注意)王太子の親友たちの来訪4

 その時にチイねえがするすると私の背後を回り、逆側、つまり腕をつかんでおる男の(がわ)に来た。ちょうど、チイねえの前に、私をつかんでおるその男の腕があるあたりに。


 私も気付いたが、当然、男も気付いた。


 ただ男は無視した。尻を触られまくっても、嫌とも言えぬ侍女と想えば、ある意味、当然とさえ言えた。


 男は私の左の前腕の半ばあたりをつかんでおり、私を引き寄せようとする。


 私は抵抗する。転移前の私なら、男とはいえ、なかなか片腕では動かせないところだが、いかんせんエリザベトは軽い。


 腰が浮きかけたとき、その男の腕をチイねえが不意に左手でつかむと、そのままテーブル上に押さえ込んだ。


 男は私の腕をつかんだままであったが、私は再びイスに腰を戻すを得た。


 そのまま私は、たまがり上がって見ておった。


 男は自分の腕を持ち上げようと、力を込めておるようだが、ビクともしない。


 すると、チイねえの右手が、テーブルの下、ちょうど私の足の上当たりに差し入れられるのが見えた。


 大して間を置かず私の眼前を何かが通り過ぎた。そしてその何かは、男の腕、手首当たりにそのまま振り下ろされた。


 そして、ガンと鈍い音がした。


 不意に私は自由になった。


 ただ私の腕を握った手が離れた訳ではなかった。


 私はそこに切断された手首を見た。


 決して錯覚ではない。


 何より腕を握られておる感触は確かにまだあった。


「ギャアー」私は悲鳴を上げる。


 その時には、既にチイねえがテーブルの上の燭台(しょくだい)をつかむや、ソファの方に放り投げておった。2本のローソクは長テーブルの上のところどころに落ち、残り1本が燭台と共にソファまで至るのが見えた。


 無論私はそれどころではない。自分の腕を振り回し、何とかその手首を振り落とそうとするが、一向に離れない。


 そこで閉められていた扉が開き、何かが、入って来たのを、風で感じた。それは私の背後を通り過ぎ、チイねえがおらぬ方の人の列に向かった。


 ローソクは全て消え、窓からの月明かりが一番奥のソファのあたりをほの暗く照らすだけである。


 ほとんど手許(てもと)が見えない中――私のところには月明かりが差していなかった――私は涙目(なみだめ)になりながら、手探りで一本一本その手指を外して行く。


 その間、部屋は悲鳴・絶叫そして不快な音で満たされておった。


 やがて物音が止んだ。


 月明かりの中、チイねえは、包丁と大して変わらぬ長さの刃物の血を倒れ伏した者の一人の衣服でぬぐう。それから、立ち上がった。

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