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第2話

「お嬢様。お父上との朝食の前に、髪を整えましょう」


 召し使いのおばさんが、そううながして来た。


(面倒だ。寝ていたい)


 そう想うも、言われるままに立ち上がる。少しぐらい自分の夢に付き合うのも悪くない。そう想ったのである。


 そのおばさんがカーテンを開けたので、窓から朝の柔らかい光が差し込む。


(なんだ。これ)


 私は鏡台に行くまでに目にするあらゆるものに驚く。


 私がゴロゴロしてみせたベッドの(しき)ブトンのカバーには、青地に黄や赤の花模様。


 掛けブトンのカバーの方は、模様は同様であるも、金銀をまじえ、さらに豪華絢爛(けんらん)なおもむきであった。触ってみると、糸が盛り上がっておる。印刷ではなく、刺繍(ししゅう)であった。とすると、これは金糸・銀糸を織り込んでということだろうか。


 ()が夢ながら、ずいぶんと()った造りなこと。



 寝室の壁には戸棚がしつらえてあった。そこには表面に様々な細工を施した金や銀の小ぶりの壺や皿が、ずらりと並ぶ。



 ベッドの四隅(しすみ)に立つ4本の柱の(いただ)きには、その各々に大小様々な鳥が羽を休めてまどろんでおった。


 いや、1羽だけ羽を広げている。やっぱり、フクロウさんであった。


 更にはあえて目をやらなければ、見ることもないであろう、ベッドの下台にまでツタ草の浮き彫りがしてあった。



 そして寝室の出入り口、その右側には、とても大きな白磁の壺。黄竜が雲中をうねる様が描かれている。


 そして左側には黄色の地を背景にして白色の鳳凰が翼を広げておる大壺。


(通る際に、ぶつかって割ったりしないように気をつけなければ)


 と夢の中なのにそう想う、お茶目な私である。



 そして鏡台もやはり豪華。鏡の周りの木枠には、やはりツル草模様が、先のベッドの下台より更に細かく、より複雑にからまり合う様が()り込まれており、更にはところどころで、小鳥がかわいく顔をのぞかせておった。


 ただそれ以上に驚いたのは、その鏡に映る私の姿であった。金髪のクルクル巻き毛に、ぱっちり大きな青い瞳。そして高い鼻に、小さなおちょぼ口。完全無欠の美人さんがそこにおった。

 

 と同時に、

(ああ。なるほど。なるほど)


 私は合点した。見おぼえがあったからだ。私が暇つぶしにしていた乙女ゲームの悪役令嬢。でも夢にまで見るなんて、年甲斐もなくはまっている証拠。


 召し使いのおばさん――繰り返しになるけど、私と同じくらいの年齢なんだけど――もゲームの中で見た顔だったと、ようやく想い出す。



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