第1話
私、新谷百花は、40の誕生日を中学以来の親友に祝ってもらっていた。私のアパートのつつましやかな一室がその祝宴の場である。
そこで我が友は、
「あんたは40になるのに、なかなか咲かないわね。名前通りなら、これから百の花を咲かせるわよ」
と笑えぬ冗談を言う。
(一花咲けば十分よ。一花でも咲けばね)
頭に浮かんだその言葉を結局親友に言い返せぬまま、珍しく深酒してしまう。
(独身のまま40を迎えるという、学生の時には想いもしなかった人生を迎えている私だ。たまには飲み過ぎてもいいだろう)
そう想ってしまった結果だった。
カーペットの上に寝転がったまま眠りかける私を、親友は万年床のフトンに寝かしつけた後、夫と子供たちが待つ家に帰った。家の合い鍵は、こんな時のために既に渡してあった。
そして次の朝、目が覚めると、そこは私の布団ではなかった。
ベッドである。
しかも、ただのベッドではない。
(なに。この大きなベッド。
3人は寝られる
夢に違いない)
そう確信した私は、とりあえず、その上で転がって3往復もしてしまう。
「お嬢様。お目覚めですか」
急に声がして、まさにびっくり仰天である。
(お嬢様? この私がお嬢様なんて、面白過ぎる。この夢)
そうして、その声のした方を見ると、私と同じくらいの年齢とおぼしき女性が、地味なネズミ色の服を着て立っておった。何となく、見おぼえのある顔だったが、すぐには想い出せない。




