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特技はお手玉です
「特技はお手玉です」トオルは言った。
「お手玉?」店長は言った。
トオルはコンビニのアルバイトの面接に来ていた。
「はい。お手玉。少しお見せしましょうか?」
トオルは靴を脱ぎ、靴下を脱いだ。靴下を丸めて二つの玉を作った。
玉が一つ足りないなあ、とトオルは辺りを見回した。そして店長と目が合った。
「すみません。いいですか?」
トオルと店長の靴下が空を舞った。
トオルが必死に手を動かすのを、店長は口を開けてポカンと眺めていた。
「はい、こんな感じです」トオルは靴下を両手に収めて言った。
「す、すごいですね」店長は言った。
「ありがとうございます。実は最近始めたばかりでして。というのもこっちに引っ越してきたのも最近のことで、今は祖父の家に居候しているんですけど。祖父の特技がお手玉で、それを教えてもらってるんです」
「はあ。それはそれは。おじいちゃんも喜ばれてるでしょう」
「どうなんでしょう。無愛想な人なので」
「きっと喜ばれてると思いますよ」店長はごほんと咳をして、椅子を座り直した。「えーっと勤務の希望は週三日でしたっけね」
※※※
かくしてトオルはコンビニ店員として働くことになった。




