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部屋の絵

作者: 悠木 灰二
掲載日:2026/02/05

1作目です。

どんな感想(悪意以外)もお聞かせください。

多分へこたれない。

気付いたら部屋に飾ってある絵と話をしていた。


葉書より少し大きい絵で、いつから部屋にあるのか覚えていない。


これが普通のことではないということは当然ながらわかっていた。

だが、絵と話すと、今日一日あった嫌なことや悲しかったことがスッと心から消える。

気持ちがとても落ち着くのだ。


「今日は婚約者に、職場であった嫌なことを話していたら、職場に関する愚痴を言うのは控えてほしい、と言われたよ」

「そうか。代わりに聞くから話してよ」


部屋の絵は、私の愚痴や悩みや考えていることを遮ることも否定することもなく、

役に立たないアドバイスもせず、ただ静かに聞いてくれる。


私は段々と婚約者に話すことがなくなっていった。

婚約者に会っても、ただ声を聞くだけだ。


「最近どう? 職場は?」

「(あなたに話すことはもう)何もないよ」

「この前はごめん。疲れて当たってしまった。何でも話して」


そう謝る相手に少しだけ罪悪感を感じながらも、心は部屋の絵に向かっていた。


「最近なんだかご機嫌だね」


職場の仲のいい同僚にも言われた。

確かに心は穏やかだ。

絵がどんな気持ちも受け止めてくれるから、私は強くなっていった。


早く帰りたい。


ある日、婚約者に「そろそろ結婚後の新居について決めていこう」と言われ、お互いの部屋にあるものを確認し、新居に何を持っていくか話し合うことになった。


「この絵、何? なんかちょっと汚いけど、これはどうするの?

捨てていく? 2人で新しいの買おうよ」


この人は何を言っているのか。


「何の絵がいいだろう? どうする? 今度の休みに見に行く?」


「絵が聞いてる」

「え? 何?」


この人は、私の絵を傷つける。

早く絵に謝らないと。


「…今日は気分が悪いから帰ってほしい」

「え? 何? これ、なんかすごい価値があるものなの?」


婚約者は慌てたように声を上げるが、

怒りで震える手で無理やり部屋を追い出した。


「君のこと、汚いだって。こんなに綺麗なのに」

「婚約者さんの好みじゃなかっただけだよ。気にしないで」

絵は微笑んだように言う。

「自分を貶した相手を庇うなんて、優しいなぁ」


段々と、婚約者への気持ちが冷めていく。

一緒にいても胸の奥に虚しさが広がる。


本当に結婚するのか。

一緒に住めるのか。

この人との間に子どもを作るのか。


迷いが頭のなかで膨らんでいく。

これからお互いに支え合う未来が描けないのだ。


ある晩、部屋で絵と話しながら、

「絵と結婚できたら最高なんだけどな」と、ふと口から零れ出てしまった。


しまった、と思った。


婚約者に対する決定的な裏切り、

そして絵に対しても侮辱である。


絵は何も言わなかった。


それが逆に、自分の正直な気持ちに火をつけた。


服をすべて脱ぎ、

「自分のすべてを見てほしい」と絵に頼んだ。


絵は無言だった。


絵の全てがほしい。

絵も同じ気持ちだ、と熱に浮かされた心が告げる。

全てを感じてほしい。

溶け合いたい。


「ほら見て?」

熱の籠った目で絵を見つめる。


「……君はいつも自分のことだけだね」


絵はぽつりと言った。


気づけば、体は冷え、散らかった服だけが残っている。

あの夜から、絵は黙ったままだ。

何だか絵に話しかける、というシチュエーションを書いてみたくなったので仕上げてみましたが、何となく不穏なものが出来上がってしまいました。

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