愛娘が婚約破棄されたので、父親の私は我慢をやめて国ごと滅ぼすことにしました
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
「リリィ・サイハーデン! 貴様との婚約を、今この時を持って破棄する!」
王宮の舞踏会場。
第一王子カスツールの甲高い声が響き渡った。
音楽が止まり、貴族たちの視線が一点に集中する。
壇上には、勝ち誇った顔のカスツールと、その腕にへばりつく毒々しい化粧の女、男爵令嬢グズゥー。
そして、その下で一人、立ち尽くしているのが、私の娘――リリィだ。
「……はい、殿下」
リリィは、取り乱すことも、泣き叫ぶこともしなかった。
ただ、どこか諦めたような、雨に濡れた仔犬のような瞳で微笑んだだけ。
「承知いたしました。……やはり、私のような『不幸を呼ぶ女』は、次期国王陛下には相応しくありませんものね」
「ふん! 自覚があるなら話が早い! 貴様のような陰気な女と一緒にいると、こちらの運気まで下がるのだ!」
カスツールが嘲笑う。
隣のグズゥーも、扇子で口元を隠しながらニタニタと笑っている。
「きゃはは! ざぁーこ! 陰気女ぁ! カスツール様はねぇ、アタシみたいな明るい女の子が好きなのよぉ!」
「その通りだグズゥー! ああ、君はなんて太陽のように眩しいんだ!」
会場から、クスクスという失笑が漏れる。
リリィへの嘲り。同情ですらない、あからさまな侮蔑。
リリィはドレスの裾を握りしめ、深く頭を下げた。
「今まで、ご迷惑をおかけしました。……幸せに、なってくださいね」
……ああ。
私の娘は、なんて優しいのだろう。
理不尽に捨てられ、侮辱されてなお、相手の幸せを願うなんて。
だからこそ。
私の我慢は、ここで消し飛んだ。
◇
「おい、さっさと出ていけ! 目障りだ!」
「……はい」
リリィが踵を返し、出口へと向かおうとした――その時だ。
「おや、おや。随分と賑やかなパーティですねぇ」
私は、音もなくカスツールの背後に立った。
「なっ!? ロ、ロイド辺境伯!?」
「いつの間に……!?」
カスツールが飛び退く。
私は眼鏡の位置を直し、ニコリと微笑んだ。
「殿下。今のお話、聞き捨てなりませんねぇ。『婚約破棄』……本気で言っているのですか?」
「と、当然だ! リリィのような欠陥品、俺には不要だ!」
「……欠陥品」
ピキリ、と。
私のこめかみで、何かが切れる音がした。
「それにだ! 俺はグズゥーと結婚する! サイハーデン家の資産は、慰謝料として置いていけ!」
「パパ……もういいの。私が悪いの……」
リリィが震える声で私を止める。
その瞳は「どうせ私が不幸だから」と語っていた。
……リリィ。
お前がそうやって諦めてしまうのは、私が今まで手を出さなかったせいもあるだろう。
だがね。それも、もう終わりだ。
「リリィ。……覚えていますか? この縁談が決まった日のことを」
私は娘に背を向けたまま、カスツールへと歩み寄る。
「パパ……?」
「あの日、私は反対しました。こんな男はやめておけと。ですが、お前は言った。『私のような人間を、他に選んでくれる方はいないでしょう。私は、彼に相応しい女性になれるよう、自分の力で頑張ってみたい』と」
そう。娘のたった一度の、健気なワガママ。
だから私は、今日まで耐えてきた。
娘が無視されても、陰口を叩かれても、娘の「頑張り」を無駄にしないために、血の涙を流して傍観に徹してきた。
「ですが……彼がその契約を一方的に破棄したのなら、私とリリィの『約束』も無効です」
私は、カスツールの前に立った。
「な、なんだその目は! 無礼だぞ! 衛兵! こいつを捕らえろ!」
「無駄ですよ。彼らとは、既に『握手』を済ませていますから」
シーン、と静まり返る会場で、衛兵たちは誰一人として動かない。
直立不動で、脂汗を流している。
「き、貴様……何をした……!?」
「話し合いましょうか、殿下」
私は、カスツールの肩に、優しく手を置いた。
――能力発動・『魔王の握手』。
「ひっ……!?」
瞬間、カスツールの体が硬直する。
瞳孔が開き、ガチガチと歯が鳴る。私の手が触れている限り、彼の神経も、筋肉も、思考さえも、私の所有物だ。
「さて、殿下。……私の娘を捨てて、そのグズゥー嬢を選んだ『本当の理由』をお聞かせ願えますか?」
私はあえて、会場中に響くような優しい声で問いかけた。
「あ、が……!」
「どうぞ? 包み隠さず」
ギリ、と指に力を込める。
カスツールの口が、本人の意思とは無関係に開き、絶叫した。
「金だあああぁ! サイハーデン家の金が目当てだったんだよぉぉ! リリィみたいな根暗な女、顔を見るのも苦痛だったんだ! グズゥーみたいに頭の悪い女のほうが、浮気してもバレないし、操りやすいから選んだだけだぁぁぁ!」
「……なっ!?」
隣にいたグズゥーが顔面蒼白になる。
会場の空気も凍りついた。
「い、いやだ! ちがう! 俺はそんなこと言ってな……口が! 勝手に!」
「おやおや。素直でよろしいですねぇ」
私はさらに、グズゥーの方も振り返る。
ついでだ。彼女の腕も掴んでおこう。
「あんた! 何すんのよ離し……」
「貴女も、本音をどうぞ」
「あたしだって金目当てよぉ! このバカ王子、おだてれば何でも買ってくれるチョロい財布だもん! 借金返済したら毒殺する予定だったのにぃぃ!」
カスツールとグズゥー。二人は互いの顔を見合わせ、愕然とした。
「き、貴様……俺を殺すつもりだったのか!?」
「あんたこそ! あたしのこと頭が悪いって言ったわね!?」
醜い仲間割れが始まる。
私は二人から手を離さず、さらに強く、骨が軋むほどに握りしめた。
「あだ、あがぁぁぁあああ!?」
激痛に、二人の悲鳴が重なる。
私は彼らの耳元に顔を寄せ、底冷えする声で囁いた。
「……私の最愛の娘が、必死に努力して、健気に尽くしてきた時間を……よくもまあ、ここまで踏みにじってくれましたねぇ」
リリィの、泣きそうな笑顔が脳裏をよぎる。
もう、我慢しなくていい。
こんなゴミ屑どもに、配慮など必要ない。
「リリィは不幸などではありません。貴様らのような『害虫』が、たまたま寄ってきただけのこと」
メキメキメキッ!
肩の骨が砕ける音が、静まり返った会場に生々しく響く。
「許して……ゆるしてぇ……!」
「パパに言いつけて……処刑してやるぅ……!」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして命乞いをする二人。
私は、本日一番の、満面の笑みを浮かべた。
「おや、命乞いですか?」
眼鏡の奥の瞳だけで、彼らを射抜く。
「遅いですねぇ……この、クソカスがぁ!」
次の瞬間。
私は二人に、「ある命令」を書き込んだ。
――『死ぬまで互いを罵り合いながら、二人で仲良くダンスを踊り続けろ』。
「あ、あ、足が勝手にぃ!?」
「いやぁ! このバカ王子! 離してぇ!」
二人は奇声を上げながら、壊れた人形のように激しく体を動かし始めた。
互いの脛を蹴り合い、髪を掴み合いながらの、地獄のワルツだ。
「さあ、リリィ。帰りましょう」
私はハンカチで手を拭き、呆然としている娘の元へ戻る。
そして、優しく手を差し出した。
「パパ……」
「お前は不幸じゃない。……私が、世界中の不幸を捻り潰してでも、お前を幸せにしますから」
リリィの瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
それは諦めの涙ではない。安堵の涙だ。
「……うん。……ありがとう、パパ」
背後で響く「バカ!」「クズ!」という罵り合いと悲鳴をBGMに、私たちは悠々と会場を後にするのだった。
【おしらせ】
※1/9(金)
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