表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

愛娘が婚約破棄されたので、父親の私は我慢をやめて国ごと滅ぼすことにしました

作者: 茨木野

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



「リリィ・サイハーデン! 貴様との婚約を、今この時を持って破棄する!」


 王宮の舞踏会場。

 第一王子カスツールの甲高い声が響き渡った。

 音楽が止まり、貴族たちの視線が一点に集中する。


 壇上には、勝ち誇った顔のカスツールと、その腕にへばりつく毒々しい化粧の女、男爵令嬢グズゥー。

 そして、その下で一人、立ち尽くしているのが、私の娘――リリィだ。


「……はい、殿下」


 リリィは、取り乱すことも、泣き叫ぶこともしなかった。

 ただ、どこか諦めたような、雨に濡れた仔犬のような瞳で微笑んだだけ。


「承知いたしました。……やはり、私のような『不幸を呼ぶ女』は、次期国王陛下には相応しくありませんものね」


「ふん! 自覚があるなら話が早い! 貴様のような陰気な女と一緒にいると、こちらの運気まで下がるのだ!」


 カスツールが嘲笑う。

 隣のグズゥーも、扇子で口元を隠しながらニタニタと笑っている。


「きゃはは! ざぁーこ! 陰気女ぁ! カスツール様はねぇ、アタシみたいな明るい女の子が好きなのよぉ!」


「その通りだグズゥー! ああ、君はなんて太陽のように眩しいんだ!」


 会場から、クスクスという失笑が漏れる。

 リリィへの嘲り。同情ですらない、あからさまな侮蔑。

 リリィはドレスの裾を握りしめ、深く頭を下げた。


「今まで、ご迷惑をおかけしました。……幸せに、なってくださいね」


 ……ああ。

 私の娘は、なんて優しいのだろう。

 理不尽に捨てられ、侮辱されてなお、相手の幸せを願うなんて。


 だからこそ。

 私の我慢リミッターは、ここで消し飛んだ。


     ◇


「おい、さっさと出ていけ! 目障りだ!」


「……はい」


 リリィが踵を返し、出口へと向かおうとした――その時だ。


「おや、おや。随分と賑やかなパーティですねぇ」


 私は、音もなくカスツールの背後に立った。


「なっ!? ロ、ロイド辺境伯!?」


「いつの間に……!?」


 カスツールが飛び退く。

 私は眼鏡の位置を直し、ニコリと微笑んだ。


「殿下。今のお話、聞き捨てなりませんねぇ。『婚約破棄』……本気で言っているのですか?」


「と、当然だ! リリィのような欠陥品、俺には不要だ!」


「……欠陥品」


 ピキリ、と。

 私のこめかみで、何かが切れる音がした。


「それにだ! 俺はグズゥーと結婚する! サイハーデン家の資産は、慰謝料として置いていけ!」


「パパ……もういいの。私が悪いの……」


 リリィが震える声で私を止める。

 その瞳は「どうせ私が不幸だから」と語っていた。


 ……リリィ。

 お前がそうやって諦めてしまうのは、私が今まで手を出さなかったせいもあるだろう。

 だがね。それも、もう終わりだ。


「リリィ。……覚えていますか? この縁談が決まった日のことを」


 私は娘に背を向けたまま、カスツールへと歩み寄る。


「パパ……?」


「あの日、私は反対しました。こんな男はやめておけと。ですが、お前は言った。『私のような人間を、他に選んでくれる方はいないでしょう。私は、彼に相応しい女性になれるよう、自分の力で頑張ってみたい』と」


 そう。娘のたった一度の、健気なワガママ。

 だから私は、今日まで耐えてきた。

 娘が無視されても、陰口を叩かれても、娘の「頑張り」を無駄にしないために、血の涙を流して傍観に徹してきた。


「ですが……彼がその契約を一方的に破棄したのなら、私とリリィの『約束』も無効です」


 私は、カスツールの前に立った。


「な、なんだその目は! 無礼だぞ! 衛兵! こいつを捕らえろ!」


「無駄ですよ。彼らとは、既に『握手』を済ませていますから」


 シーン、と静まり返る会場で、衛兵たちは誰一人として動かない。

 直立不動で、脂汗を流している。


「き、貴様……何をした……!?」


「話し合いましょうか、殿下」


 私は、カスツールの肩に、優しく手を置いた。

 ――能力発動・『魔王の握手タイラント・グリップ』。


「ひっ……!?」


 瞬間、カスツールの体が硬直する。

 瞳孔が開き、ガチガチと歯が鳴る。私の手が触れている限り、彼の神経も、筋肉も、思考さえも、私の所有物だ。


「さて、殿下。……私の娘を捨てて、そのグズゥー嬢を選んだ『本当の理由』をお聞かせ願えますか?」


 私はあえて、会場中に響くような優しい声で問いかけた。


「あ、が……!」


「どうぞ? 包み隠さず」


 ギリ、と指に力を込める。

 カスツールの口が、本人の意思とは無関係に開き、絶叫した。


「金だあああぁ! サイハーデン家の金が目当てだったんだよぉぉ! リリィみたいな根暗な女、顔を見るのも苦痛だったんだ! グズゥーみたいに頭の悪い女のほうが、浮気してもバレないし、操りやすいから選んだだけだぁぁぁ!」


「……なっ!?」


 隣にいたグズゥーが顔面蒼白になる。

 会場の空気も凍りついた。


「い、いやだ! ちがう! 俺はそんなこと言ってな……口が! 勝手に!」


「おやおや。素直でよろしいですねぇ」


 私はさらに、グズゥーの方も振り返る。

 ついでだ。彼女の腕も掴んでおこう。


「あんた! 何すんのよ離し……」


「貴女も、本音をどうぞ」


「あたしだって金目当てよぉ! このバカ王子、おだてれば何でも買ってくれるチョロい財布だもん! 借金返済したら毒殺する予定だったのにぃぃ!」


 カスツールとグズゥー。二人は互いの顔を見合わせ、愕然とした。


「き、貴様……俺を殺すつもりだったのか!?」


「あんたこそ! あたしのこと頭が悪いって言ったわね!?」


 醜い仲間割れが始まる。

 私は二人から手を離さず、さらに強く、骨が軋むほどに握りしめた。


「あだ、あがぁぁぁあああ!?」


 激痛に、二人の悲鳴が重なる。

 私は彼らの耳元に顔を寄せ、底冷えする声で囁いた。


「……私の最愛の娘が、必死に努力して、健気に尽くしてきた時間を……よくもまあ、ここまで踏みにじってくれましたねぇ」


 リリィの、泣きそうな笑顔が脳裏をよぎる。

 もう、我慢しなくていい。

 こんなゴミ屑どもに、配慮など必要ない。


「リリィは不幸などではありません。貴様らのような『害虫』が、たまたま寄ってきただけのこと」


 メキメキメキッ!

 肩の骨が砕ける音が、静まり返った会場に生々しく響く。


「許して……ゆるしてぇ……!」


「パパに言いつけて……処刑してやるぅ……!」


 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして命乞いをする二人。

 私は、本日一番の、満面の笑みを浮かべた。


「おや、命乞いですか?」


 眼鏡の奥の瞳だけで、彼らを射抜く。


「遅いですねぇ……この、クソカスがぁ!」


 次の瞬間。

 私は二人に、「ある命令」を書き込んだ。

 ――『死ぬまで互いを罵り合いながら、二人で仲良くダンスを踊り続けろ』。


「あ、あ、足が勝手にぃ!?」


「いやぁ! このバカ王子! 離してぇ!」


 二人は奇声を上げながら、壊れた人形のように激しく体を動かし始めた。

 互いの脛を蹴り合い、髪を掴み合いながらの、地獄のワルツだ。


「さあ、リリィ。帰りましょう」


 私はハンカチで手を拭き、呆然としている娘の元へ戻る。

 そして、優しく手を差し出した。


「パパ……」


「お前は不幸じゃない。……私が、世界中の不幸を捻り潰してでも、お前を幸せにしますから」


 リリィの瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

 それは諦めの涙ではない。安堵の涙だ。


「……うん。……ありがとう、パパ」


 背後で響く「バカ!」「クズ!」という罵り合いと悲鳴をBGMに、私たちは悠々と会場を後にするのだった。



【おしらせ】

※1/9(金)


新作、投稿しました!


ぜひ応援していただけますとうれしいです!

URLを貼っておきます!

よろしくお願いいたします!


『辺境の【魔法杖職人】が、自分の作る杖は世界最高だと気付くまで ~「魔力ゼロ、愛想もない」と婚約破棄された私が、帝都でひっそり店を開いたら、いつの間にか国中の英雄が並ぶ行列店になっていました~』


https://ncode.syosetu.com/n6670lp/


広告下↓のリンクから飛べます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
パパ(//∀//)カッコいい♡♡♡
この能力は彼が手を握ったら発動するのかな…?触れたら発動なら無敵すぎますね。こわ。敵に回したら誰にも知られずに殺されそうだなぁ…。
これ恋愛タグだと父娘恋愛になっちゃうと思いますが、 溺愛なら家族愛含むけど、父娘の恋愛はLGBT配慮でも危ないのでは? りりィちゃんの運命のお相手は寄ってくる不幸が大好物な探偵さんか、 訓練ジャンキ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ