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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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5/18

5余暇

 朝、いつもより遅めに起き、遅めの朝食をとる。

 つい最近までは、朝食のみがアレンの癒しだった。

 以前はカイルとミリアのために回復薬を飲み続け、昼も夜も満腹で食べられず泣く泣く食事を断っていた。


 だが、それは昨日までの話だ。これからは、ほどほどにランク上げをし、回復薬の販売や開発に勤しもうと、アレンは考えていた。


「昨日までならトースト1枚とサラダだけだったけど、スープとベーコンエッグも食べるぞ!」


 フライパンを握り、アレンは笑顔で調理を始めた。

 自分は食べないと言うのに、カイルとミリアに食事を提供していたこともあり調理に迷いはない。

 アレンは手際良く料理を完成させ、皿に綺麗に盛り付けた。


「俺、料理の才能あるんじゃないか? どうしようもなくなったら、飯屋で働くのもありだなぁ」


 自身の料理スキルに満足しつつ、食事を堪能した。

 

 後片付けも終わり、食後の漢方茶を一杯。ダイエット用の苦めの漢方茶だが、不味い回復薬を飲み続けていたこともあり、アレンにとって、これは美味しい茶でしかない。


「さてと、回復薬の改良を……と言いたいところだけど、まず掃除と買い出しもやってしまおう」


 忙しくてあまりできていなかった掃除をする。

 そこで、布に覆われている何かを発見した。早速取り払ってみると、ポーラー試験合格祝いで、自身で買った鎧が包まれていた。

 太ってしまって早々に入らなくなってしまったので、まだまだ綺麗な状態だ。


「これ着られるくらい痩せたら、昔の俺に戻れるかな。……いや、身長は伸びたしサイズ合わないか〜。処分するしかないか?」


 そう口にしたものの、アレンとしては名残惜しさが勝っていた。

 改めて布を被せ、一撫した後、他の掃除に取り掛かる。

 そこで見つけたカイルやミリア関連の品々は、処分用に用意した袋へとすべて入れていく。


「いって! やべ、指切っ……あれ?」


 小型ナイフで誤って指を切ってしまったアレン。だが、血は数滴溢れただけで、拭った時にはすでに指の傷はなかった。

 回復薬は飲んでいないし、ヒーラーのように手をかざすだけで治療なんて、会得もしていないアレンにできるわけがない。

 アレンは切ったはずの指をまじまじと眺めたが、何もわからずじまいだった。


「まあ、いいか。紙で切った程度のものだったんだろう」


 ナイフに付着した少量の血を拭い、アレンは丁寧に収納箱へ入れ蓋をした。

 小さいとはいえ一軒家。一人で掃除するのは時間がかかる。アレンは適度に休みを入れながら、黙々と掃除を続けた。

 

 

「ふぅ、スッキリした。こう見ると俺の家って、結構広いんだな」


 忙しくて部屋の隅に適当に置かれていた道具や物。それらを全て片付けたことで、アレンの家は見違えるように綺麗になり、スペースが増えた。


 清々しい顔で頷いたアレンだったが、ほどなくして自身の額から汗がつたう感覚に気づき、眉を下げた。

 

「俺もスッキリしてこよう……」


 狭い風呂場へと行き、すぐに服を脱ぐ。鏡に映る自身の脂肪だらけの体に項垂れてしまう。

 だが、回復薬を強要してくるあの二人から離れたのだ。これからダイエットに励めばきっと少しは痩せるだろう。

 鏡から視線を外し、アレンは洗い残しのないよう丁寧に体を洗った。


 そして、風呂上がりに一番大きいサイズで買った服を無理やり着て、リビングにある大きなソファへと腰掛ける。


「俺、痩せられる……よな?」


 カイルとミリアと一緒にいる時も、ダイエットサプリを飲んでいた。また、依頼のない日でもダイエットに効くと言われているストレッチや運動もしていた。

 だが、どうしてもそれを上回るハイカロリーな回復薬により、太る一方だった。

 

「動かないと心配になってきたな……! サンドイッチ作って散歩に出よう」


 支度をしてアレンは部屋を後にした――。



 人々の視線を感じる中、アレンはひたすら歩いた。気になる店へ立ち寄ったり、薬学の本を買ったり。意識しないようにしていると、次第に視線は気にならなくなった。


(やっと開放感出てきたな……)


 空いていたベンチへと座り、自作のサンドイッチとお店で買ったカフェラテで昼食。

 極力カロリーの高いものは控えようと、サンドイッチの具は、ツナサンドやエッグサンド、そしてハムサンド。

 回復薬で腹を満たしていたアレンにとっては、どれも美味しくて涙が出るほどのごちそうだ。

 

「やだ〜、太ってるのに痩せ型の人が食べそうなの食べてる〜」


 アレンの前に現れたのは、カイルの彼女であるミリアだ。

 お高めのアクセサリーをこれみよがしに指や腕、首にもつけている。

 

「げっ、ミリア」

「げっ、とは何よ。仕事がない無職は暇そうでいいよねぇ」


 アレンの隣に腰を下ろし、ミリアは手鏡を取り出した。

 前髪を整えたり、口紅を塗り直したりと忙しない。

 

「そう言うミリアはどうなんだよ。新しい人たちに迷惑かけてないだろうな?」

「はあ? 部外者のくせに、そんなことが気になるの?」

「当たり前だろ。元パーティーメンバーなんだから」

「そうだなぁ。教えてあげてもいいけど……」


 ミリアは手鏡を片付けて、頬に人差し指を当てる。

 どこから話そうかとミリアが悩んでいたところ、一人の女が声をかける。


「ミリア様。そろそろ行きますよ」

「え〜、行かなきゃダメ?」


 口をへの字にして不満そうに睨むミリア。

 そんな彼女に動じず、女は大きく頷きミリアの手を取った。

 

「もちろんです。カイル様が「俺のミリアはどこだ?」と言ってましたよ」

「うげぇ、気持ち悪い言い方」


 大きなため息を吐くミリアに、思わずアレンは問いかけた。

 

「……お前、付き合ってるんだよな?」

「最近冷めてきたの。いい男いたら紹介してね。じゃ」


 女に手を引かれ、ミリアはゆるゆると歩き始める。

 アレンはそんな彼女の背を見つめ、ミリアの手を引く新しい女の真面目さに、少しだけ安堵していた。

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