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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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25/25

25講座

 アレンは帰宅後、まずライルとリズにミリアから買い取った映像データを転送した。

 

 次は講座に行く予定があるので、返事を待たずに次の目的地へと足を運ぶ。

 すぐに目的の人物を見つけて、アレンは手を大きく振った。


「ネネさん、お待たせしました!」

「来てくれてありがとうございます! まだ早いですけど行きましょうか」

「はい、よろしくお願いします」


 ネネは街中から少し外れた、売地の多い場所へと歩き出す。

 まるで迷路のような道を歩き続け、あまりに複雑な順路に、元来た道さえ怪しくなるほどだった。


「よくこの道覚えてましたね……」

「ふっふっふ。記憶力の悪い私が覚えてるわけないじゃないですか」


 そう言いながら、ネネは手に持っていた小さなガラス玉をアレンに見せた。


「この受講者のみが貰える、追跡玉のおかげです!」


 追跡玉は特定の場所に印をつけられる、便利な道具だ。

 アレンはその追跡玉を見つめながら、疑問を覚えた。


「なぜ追跡玉が必要なほど複雑な場所で講座を?」

「シークレット講座らしいです。選ばれた人か、選ばれた人の紹介でしか学べないようにしてるって聞きました」

「シークレット? ということは、ネネさんはご友人に紹介してもらったんですか?」

「そうです! その友達は、非公式ヒーラーの友達に紹介してもらったそうですよ」


 まず非公式ヒーラーからの紹介。紹介はごく一部に限られており、非公式ヒーラーがこの人だという人にしか声をかけない。

 そのあとは口コミで広がる形だが、それでも制限をかけておりまだまだ受講者は少ない状態。

 

 アレンとしては、非公式ヒーラーのようにたくさんの受講者を迎え入れた方が儲かるはずだ。それなのに紹介制にしていることに疑問を持った。

 また、「選ばれた者のみ」という点にも違和感を覚えた。

 

「簡単で安い、加えて魔力量が少ない人でも習得できる……となると、受けたい人が多いだろうなぁ。公にしないのは、まだ試験的な感じなんですかね?」

「そうだと思います。選ばれた人は全員できるようになったと聞いてますけど、もしかしたら無理そうな人はそもそも受講できないのかもしれません」

「やっぱりリスクは負いたくないだろうし、厳選しているんでしょうね」


 そんな話をしていると、大きな一軒家に辿り着いた。

 周りは売地ばかりで人の気配はない。


 アレンは違和感を覚えつつネネの後に続く。

 ネネがインターホンを押すとすぐに扉が開いた。

 目の前にはクラリスが立っており、ネネを見てそのあとアレンに視線を移した。

 アレンは見覚えのある彼女に会釈をすると、彼女は満足そうに微笑んだ。


「紹介者様も連れてきてくださったのですね。ネネ様、本当にありがとうございます」

「とんでもないです! こちらこそこのような講座を開いてくれて、ありがとうございます!」


 アレンとネネは、クラリスによって快く家へと招き入れられ、広い応接室へと通された。

 そこにはすでに数人椅子に座っており、講座が始まるのを静かに待っていた。

 

「早いですが、揃ったようなので始めてしまいましょうかね」


 アレンとネネが座った後、すぐに奥の部屋からシャラタンが現れた。

 アレンを見つけると、僅かに目を細めた。


「この度はお集まりいただきありがとうございます。また、紹介者をお連れの方々に感謝を」


 シャラタンは丁寧にお辞儀をした後、自己紹介や全体的な講座内容について、今日の講座の流れなどを説明していく。

 アレンはシャラタンの顔を見つめながら、ミリアに見せてもらった映像を思い出す。


(非公式ヒーラーの講座を開いている男――シャラタン。カイルはこの男から金を受け取っていた。となれば、何か裏があるはずだ)


 つい先日、講座の最中に非公式ヒーラーのニルスを連れて行かれたことを思い出す。


(かなり強引だったけど、卒業生を集めて何かしようとしているのか?)


 どのような理由なのか、何をするつもりなのか。何もわからない。また新しい事業をしようとしているだけなのかもしれない。

 悪い噂もない男だ。アレンは一旦考えるのをやめて、シャラタンの声に耳を傾けた。

 

 シャラタンの話が終わった後、次は待ちに待った講座。

 しかし、紹介で来た者は、魔力量の確認等をするため別部屋へと移動となった。


「それではまた帰りに」

「はい、アレンさんも受けられるといいですね」


 ネネと別れたアレンは、クラリスの後についていき先ほどよりも少し狭い部屋へと入った。

 そこにはたくさんの機材が置いてある。どれも見たことのないもので、連れてこられた者たちは、思わず目を丸くする。


「こちらの二つの機械で魔力量や適応力を測ります」

「測る必要があるのか? 誰でも習得できるって俺は聞いたんだが?」

 

 連れてこられた一人の男が、眉間に皺を寄せクラリスへと質問を投げかけた。

 クラリスはその言葉を聞き、眉を下げ申し訳なさそうに口をひらく。

 

「魔力量が少なくても回復能力を習得できるとしてお話をしております。ですが、残念ながら誰もが習得できるものではございません」


 彼女は机に置いてあった紙を一枚摘み、それを男に見せながら言葉を続ける。


「魔力が一切ない方やこちらの想定している量を満たさない場合、あるいは適応力テストで脱落した場合は、受講資格を与えられません」

「は? 聞いてないぞ、そんなこと!」


 逆上した男がクラリスに掴みかかろうとするが、アレンは咄嗟にその腕を制した。アレンに冷ややかな視線を向けられ、男はたじろぎ、舌打ちをして引き下がる。

 クラリスはアレンに深く会釈をしてから、怯えることなく淡々と説明を続けた。

 

「ご案内に不足があったことはお詫びいたします。ですが、適合しない者が無理に力を得ようとすれば、最悪の場合、命を落とします。……そのため、これより『選別』を行わせていただくのです」

「命を……?」


 ざわつく周囲に、クラリスは微笑んだ。

 

「はい。人によってはここで命を落としてしまう場合もございます。どうか無理はなさらないでください。ですが――」


 クラリスはアレンへと視線を送る。

 

「アレン様。貴方ならきっと、問題なく資格を獲得できますよ」


 その瞳は、もはや温和なヒーラーのものではなかった。獲物を逃さぬ蛇のように鋭く、彼の退路を塞いでいた。


 周囲が恐怖に身をすくめる中、アレンだけがこの不穏な空気に首を傾げていた。

 これほど人助けを掲げる事業でありながら、なぜ受講者を怯えさせるような振る舞いをするのか。


 だがアレンはまだ知らなかった。

 シャラタンとクラリスが、なぜこれほどまでに言葉巧みに「人間」を集めているのか。その真の目的を――。

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