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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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24怪しい映像

 ギルドを後にしたアレンは、早速ミリアへ手紙を出した。

 数分と経たずに返ってきた返信には、彼女もまたカイルについて話したいことがある、と綴られていた。

 

 詳しい経緯こそ不明だが、短くまとめられた文面からは彼女の切迫した様子が伝わってくる。アレンは道すがら声をかけてくる人々を適当にあしらい、足早に彼女の家へと向かった。



 玄関前でノックをしようとした瞬間、内側から勢いよく扉が開いた。


「ナイスタイミングね。さ、すぐに入って鍵を閉めて」


 アレンは言われるがまま家に入り、背後で施錠した。

 ミリアは彼を薄暗いリビングへと促すと、テーブルに置かれたプロジェクターを指差した。


「最近カイルの様子がおかしいから探偵を雇っていたの。そうしたら、あいつ、売り出し中の空き地であの女(クラリス)と密会してたわ」


 リモコンを操作すると、カイルとクラリスが話し合う姿が壁に映し出された。

 カイルが中身の詰まった茶封筒をクラリスに手渡している。

 その様子に恋人同士のような睦まじさは微塵も感じられない。だが、裏切りに直面しているミリアの目には、それが親密な関係の証拠としか映らないようだった。

 

 怒りや苦しみを抑えるように、ミリアは爪を噛みはじめた。


「あのバカ、バレなきゃ何してもいいと思ってるわけ!?」

「いや……ミリアが思っているような関係には見えないけどな」


 アレンには、カイルが不貞腐れて口元を歪めているように見えた。対するクラリスも、視線を合わせようとせず表情を曇らせており、およそ好意的な雰囲気ではない。

 

 憤慨するミリアの手に、アレンは彼女の好きなダイエットバーを押しつけた。

 彼女を落ち着かせるためにいつも持ち歩いていたものだ。

 一瞬目を見開いたミリアだったが、アレンを睨んだ後、ダイエットバーの封を切り、勢いよくかぶりついた。

 

「……じゃあ、なんであんな人気のない場所で会うのよ!」

「それは確かに不可解だけど……ん? 今、もう一人誰かいなかったか?」


 クラリスの傍らに一瞬だけよぎった黒い影。それを見逃さなかったアレンは、リモコンを受け取って映像を数秒巻き戻した。


「本当に人……なの? これだけじゃよく分からないんだけど」

「気のせいか?」


 前後のフレームを精査したが、それ以上の手がかりは得られなかった。アレンは眉根を寄せつつ、ひとまず映像の続きを追うことにした。


 二人は古びた空き家に入っていく。探偵が窓にレンズを向けたが、厚いカーテンに遮られて中の様子は伺えない。集音マイクも仕掛けていたようだが、二人の声は一切拾えていなかった。

 まるで、意図的に音が漏れないよう細工されているかのようだ。


 やがて、家からカイルだけが出てきた。その表情は険しく、紙袋を手に何かをぶつぶつと呟きながら去っていく。


「これ見ても本当に密会だと思えるのか?」

「……中に入っていくところで見たくなくなって、止めてたのよ!」


 ミリアは吐き捨てるように言うと、別の映像に切り替えた。


「なるほど。まあ、恋人が別の女と建物に入る姿なんて、気分のいいもんじゃないしな」


「そうなの! 次はこれを見て。おじさんからお金を貰ってるカイル」


 映像には、シャラタンとカイルの姿があった。シャラタンは何かを説明しながら、札束の詰まった封筒を渡している。

 その時カイルの目は、いつもの自信ではなく焦燥に揺れていた。

 

「仕事か?」

「探偵さんの話だと、あのおじさんと話してお金を受け取って、そのまま帰宅したんですって」

「じゃあ前金、とか?」

「カイルが前金もらえるような男だと思う?」

「彼氏なのに信用なさすぎだろ……まあ、否定はできないけど」

 

「じゃあ、探偵を雇う前に稼いだお金とか?」

「それも違う気がする。最近のカイルは、クラリスやあのおじさん……あとは非公式ヒーラーと会ってることが多い気がするし」

「非公式ヒーラーに、か……」


 クラリスが非公式ヒーラーであることは知っている。だが、映像の中のおじさんについては見当もつかない。


 二人は得体の知れないおじさんを見つめ、首を傾げた。


「このおじさんの素性が割れれば、何か分かりそうなんだけどな」

「本当にね。……そうだアレン、あのA級の二人に見せてみたら? あんたより顔が広いでしょ」

「ライルとリズさんな。で、このデータは貸してくれるのか?」

「売るに決まってるでしょ! 私だって探偵に安くない費用を払ってるんだから」

「こっちにカイルの件を丸投げする勢いのくせに、相変わらずちゃっかりしてるなぁ」


 アレンは苦笑しながら、調査費用の半額を支払いデータを受け取った。


「俺もあいつの動向は気になる。引き続き探偵を雇うなら費用は出すから、遠慮なく言ってくれ」

「いいの? じゃあ、継続する。それで、あとでカイルに全額払わせて、恋人関係解消してやるんだから!」

「婚姻関係があるわけじゃないし、費用の回収は難しそうだけどな……」


 アレンの冷静な指摘は、もはや彼女の耳には届いていない。

 大量の請求書を目の前に並べ、不敵な笑みを浮かべるミリア。その姿に、アレンはただただ溜息をつくのだった。

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