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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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23講座

 カイルがニルスを連れて行ってしまった後、アレンは苦く笑った。


「すみません。回復能力の差を見てもらおうと思っていたんですが……」

「お気になさらず。言葉と資料のみとはなりましたが、とても有意義な時間でしたよ」


 ベテランの風格を纏っていた古老は、アレンへと優しく微笑みかけた。アレンは安堵の息を吐き、軽く会釈した。


「……ありがとうございます。えっと、一応話は先ほどので終わったのですが、何か質問はありますか?」


 古老から目を離し、他の生徒へと視線を送るアレン。

 すると一人が手を挙げた。快活な雰囲気で、キリッとした目が印象的な少女だ。

 アレンから「はい、ネネさん」と名前を呼ばれると、少女は勢いよく席から立ち上がった。


「さきほど、ヒーラーの回復能力で回復するって話をしていましたが、もし回復してくれるヒーラーが疲弊している場合はどうなりますか? やはり回復の力は弱まるのでしょうか」

「その質問を待ってました! 結論から言うと、ノーです。魔法や技を使う際、体力ではない別の力を使いますよね。それはなんでしょう?」


 少女は確かめるために、攻撃力の上がる技を使用した。そこでじっくりと考えた後、アレンを見て首を傾げた。

 

「魔力、ですよね?」

「はい、そのとおりです」


 少女は正解したことでガッツポーズを決めた。しかし、まだ疑問が残っているようで、続けてアレンへと問いかける。

 

「……確か魔力は、回復薬とは別に魔力回復薬が必要でしたよね。ということは、体力は一切使われていないんですか?」

「まったく使わないわけではありませんが、消耗の大半は魔力です。なので、疲れていても対処可能です」

「それなら、体力が無駄になることはないんですね」

「はい、そうです。魔力の代わりに体力を消費して回復する能力も、実用的とは言えませんが存在します」


 アレンが丁寧に答えると、ネネは彼の言葉に頷き口をひらく。


「私、武闘家をやってるんですが、回復能力も習得したいと考えています。自己回復なら、魔力量が少なくても短期間で覚えられると聞いたので」

「……自己回復を短期間で、しかも魔力量が少なくても、ですか?」


 アレンはわずかに眉を寄せた。


 アレンは回復薬のさらなる改良のため篭っていたこともあり、あまり外で何が起きているのか知らない。

 

 実際、最近はシャラタンが講座を増やしている。自己回復なら非公式ヒーラーの講座よりも安く早く覚えられるという謳い文句で、だ。

 ネネは、非公式ヒーラーが教えていること、そして現在、受講者を募集中だという話をアレンへと説明した。


「非公式ヒーラーで悪い噂はないけれど……魔力量が少ない人は、魔力の代わりに体力の消耗が激しいんです。だから、魔力量の少ない人が使うのは本末転倒なんです」

「え、でもその人は少しの魔力量で大丈夫って言ってましたし、実際私の友達も習得しているんですよ?」


 ネネと同じく、魔力量の少ない友人がすでに習得済みだと彼女は言う。

 友人とネネの魔力量は、ほぼ同程度だという。


「そのご友人は問題なかったのかもしれませんが、本当に体の負担が大きいんです。無理を続ければ、魔力の枯渇だけでは済みません。だからこそ、これまで回復薬やヒーラーに頼ってきたんです」

「でも、皆やってるし大丈夫だと思うんですけどねぇ」


 口角を下げ不服そうにするネネに、アレンは思わず口元が引き攣った。

 だが、すぐに笑みを浮かべて彼女に問いかける。

 

「……それは、まだ参加させてもらえますか?」

「できますよ! 紹介したらお金もらえるらしいですし、ぜひこちらからお願いしたいです!」

「ではお願いします」


 その後、残りの質疑応答を終え、講座はお開きとなった。

 アレンは一人講習室で大きなため息を吐いた。


「俺自身の問題が解決したからなのか、最近は別のことが気になるようになったなぁ……」


 以前は必死にカイルとミリアの背中を追いかけ、仕事をこなす日々。周りを気にする余裕などなかった。

 だが、パーティーを追放されてからは、自身の体型を恥じたり、昔の仲間に出会えたりと――様々なことがあった。

 

 きっかけは最悪だったが、あの時、カイルに追放されたのも悪くなかったのかもしれない。アレンはそんなことを思いつつ、戸締りを終わらせていく。

 

「非公式ヒーラーのこともそうだけど、自己回復の講座? 本当に大丈夫なのか?」


 アレンはネネとのやりとりを思い出す。

 どのように自己回復を短期間で習得できるようにしているのか。リスクはあるのか、ある場合どのようにそれらをコントロールするのか。謎は多く存在する。


「カイルが絡んでるっぽいのも気になるんだよなぁ。ミリアに聞いてみるか?」


 ミリアはカイルについていけないと、最近はアレンに愚痴っていた。それでも側にいるのは、簡単にパーティーから抜け出せない仕様のせいなのか、それとも情が湧いているのか……。


「……まあ、二人の関係に踏み込む資格はないか」


 アレンは講習室の戸締りを終わらせて、鍵を受付嬢へと返す。

 鍵を受け取った受付嬢は、笑みを浮かべたあと、淡々と説明を続けた。


「講座、お疲れ様でした。ニルスさんは途中放棄したということで、報酬は無効となります。そのため、お支払いいただくのは、講習室の代金のみで結構です」

「わかりました。ですが、あれはニルスさんの意思じゃありません。なので、ペナルティはなしにしてあげてください」

「よろしいのですか?」

「はい。カイルが突然割り込んで連れて行ってしまったので、非はないと判断しました」


 不思議そうな表情を浮かべたが、彼女は頷きメモをした。

 

「……かしこまりました。それではそのように処置しておきますね」

「ありがとうございます。また、利用させてもらいますね」

「はい、お待ちしております」

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