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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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2/18

2旧友

 アレンとぶつかった男は、昔と変わらない爽やかな笑顔を浮かべていた。

 背が高くイケメンと呼ばれる部類の男。彼はまぶしい金髪を揺らし、アレンを見て目を瞬かせていた。


「ライルか……? ライル、だよな?」


 旧友と思われる男を頭からつま先までじっくりと見て、あらためてアレンは彼の顔を見た。

 昔よりも筋肉がつき、顔立ちも垢抜けている。いつの間にかベテランの風格が漂っており、アレンは思わず恐る恐る尋ねた。

 ライルと呼ばれた彼は、目を見開き、アレンの腹に視線を落とした。


「ライルだけど……その声、もしかしてアレンか?」

「そうだよ! ポーラーを一緒に目指してたアレンだよ!」


 興奮気味にライルへ言うと、ライルは嬉しそうに背中を叩いた。


「ポーラーが太りやすいとは聞いてたけど、さすがに太りすぎじゃねぇか!」

 

 ライルは大声で笑った後、ハッとして真面目な表情でアレンを見た。

 

「……いや、ポーラーとして頑張ってる証拠ってことか」


 尊敬の眼差しを向けるライルに、アレンは少々気まずくなって、苦く笑う。

 ポーラーとして褒められているのだが、周りの視線を気にした。横も縦も大きくなってしまった自分の姿が、スマートなライルの隣で滑稽に見えないか心配になったのだ。


 だが、気にする様子もないライルは、「今度サウナ行かね?」と屈託のない笑顔でアレンを誘う。

 昔と変わらない彼に安堵したアレンだったが、ライルの背後から声が聞こえた。


「ちょっと〜、そろそろ私にも紹介してくださいよ!」


 ライルの背後からひょっこりと現れたのは、赤色のショートカットヘアを揺らしている少女だった。


「おう、悪い悪い。こいつが、ポーラーのアレン。こっちは弟子のリズ」

「貴方が、師匠がいつもベタ褒めしているアレンさんですね!」


 リズはじろじろとアレンの体を眺め、眉をひそめた。


「ポーラーって、やっぱりみんな太ってるんだ……。でも、私が見たポーラーの中でも一番太ってる気がしますね。どれだけ飲んだらこんなに太るんですか?」


 容赦のない直球の言葉に、アレンはぐっと言葉に詰まる。やはり、自分の体型は世間からはかなりの肥満に見えるのだ。

 

「ポーラーとはいえ最低限、体型管理した方がいいですよ。よかったらダイエット方法教えますし、なんならダイエットに効くサプリをお安く――」


 リズは話しながら腰に巻いているポーチを漁ろうとした瞬間、ライルは彼女を制した。


「リズ。やめろ」

「でも、このままだと周りからの視線も、体にも悪いです」

「まあ、それはそうだが……。アレン、お前は、いつだって誰よりも必死だった。だからこそ、ポーラーにもなれたし、あのろくでなしの側でもBランクまで上がったんだ。誇りに思っていい」

「ありがとう。でも、肥満なのは事実だしなぁ」


 鎧から溢れた脂肪をつまみ、アレンはライルに笑って見せた。だが、ライルは不服そうな表情を浮かべている。

 

「パーティーから追放されたし、これからはダイエットする時間もあるさ」

「追放……? 詳しく聞いてもいいか?」

「ああ、構わないぞ。そうだ。せっかくだし、どこか別の場所で話そう。リズさんも、それでいいかな」

「はい、もちろんです。おしゃれなレストランが近くにあるので、行きましょ」


 リズが先導し、個室のあるレストランへと歩き出す。

 アレンは周囲の視線を感じ、思わず振り返る。

 そこには二人を見つめる男女の姿があった。


(二人と話していて視線に気づかなかったけど、二人ともモテるんだなぁ)


 実際のところ、二人の人気は容姿だけではない。だが、ずっとがむしゃらに依頼をこなしていたアレンが知る由もなかった。

 

 ◇


 個室へと通された後、ライルはアレンの前にどっかりと座った。

 その隣にリズが座り、ポーチからたくさんの小瓶を取り出した。

 取り出された小瓶を見て、ライルは眉間に皺を寄せた。


「……ぼったくりはやめろよ?」

「しませんよ! ましてや師匠の友人になんて!」


 唇を尖らせてライルを睨むリズ。

 そんなリズを横目に、ライルはアレンに問いかける。


「それで……追放されたって、どういうことだ?」

「俺がカイルに暴行したってことで解雇されたんだよ。実際は事故だったんだけど、リーダーはあいつだし、あいつの彼女……ミリアも口裏合わせてたから、嘘だって言っても信じてもらえなくてな」


 自身が回復薬をどれだけ飲み、太ってしまったのかを説明し、今回の追放に関しても全て話した。

 すると、二人は顔を歪め、アレンに同情する視線を送った。


「何そのクズ……ほんと救えませんね。回避も防御もしないせいで、アレンさんの負担が大きかったなんて……そりゃこんだけ太りますよ」

 

 リズが不愉快そうな表情を浮かべている隣では、ライルは静かに怒っていた。


「まさに恩を仇で返すってやつだな。アレン、お前追放されてよかったよ。そんなクズのところにいても、使い倒されるだけだからな。そこで、だ」


 ライルはカバンから紙とペンを取り出し、アレンの前に置く。

 そして、名前を記入する欄を指差しながら言った。


「俺らとパーティーを組まないか?」

「……え?」


 アレンはもちろんリズも、ちょうど食事を持ってきた店員も、同じタイミングで驚きの声を上げたのだった。

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