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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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17薬草と毒草

 ライルとリズにお祝いされて、アレンは楽しく過ごした。

 久々に酒を飲み寝落ちをするほどとなり、気づけば翌日の朝となっていたのだった。


「はしゃぎすぎた……」


 アレンはボサボサになった髪で散らかったテーブルを片付け始める。

 その近くではライルがまだ寝ぼけ(まなこ)をこすっている。

 

「俺、初めてアレンがはしゃいでいるのを見たぞ」

「多分初めてだ。……いや、ポーラー合格した時は一人ではしゃいだな」

「そっか、俺がポーラーを諦めた後か……」


 懐かしむようにライルは、目を細める。

 リズは食器を片付けながら首を傾げた。


「そういえば、師匠はなぜポーラーの道を諦めたんですか?」

「……くだらないことだぞ〜」


 一瞬動揺の色を見せたライルだったが、何事もなかったようにヘラヘラと笑った。

 

「それ、俺も聞きたいんだけど」


 ライルの表情とは裏腹に、アレンは真面目な顔をして彼を見つめた。

 その様子にライルはきょとんとした顔をした後、口元に手を添え眉を顰めた。

 

「……あれ? アレンにも言わずに辞めたっけ?」

「諸事情だ! で逃げるようにいなくなったから」

「は〜、今も昔も変わらず一丁前に羞恥心があったんだな」


 呆れた表情を浮かべたライルは、少々言いにくそうに口元を歪めた。その後、目を瞑り語り始める。

 

「アレンを追い抜けなくて悔しかったのもあったし、女子たちに太ったら自由が制限されるって脅されたから。俺は自分の俊敏さを誇ってたからな」


 ライルは素早さを得意としていた剣士職だった。剣士もカロリー消費は申し分なく、ポーラーとしても活躍できるだろうとポーラーの学校へ入学。

 

 しかし、痩せているライルのことが好きな女子たちは、太ったライルを見たくなかった。

 そのため、「万が一太ったら、大好きな戦闘が満足にできないかもしれない」と。彼女たちは心配という名目でポーラーを辞めるように促していた。

 

 彼も太ることに抵抗はあったため、そこで辞める決心をしてしまったのだ。


「せっかくアレンと卒業しようと思ってたのに、俺はプライドと自分の体型を優先してしまったのさ。笑ってくれて構わないぞ」


 アレンはゴミ袋を縛り終え、ライルの正面へと座る。そして、ライルに白湯を渡しながら、気にしていない様子で言う。

 

「別にいいと思うぞ。現にお前はA級まで上り詰めた最強剣士だ。ライルは器用だから、ポーラーになっても仕事をしっかりこなしていたかもしれない。だが、今の地位があったかは、わからないんだからな」


 食器を片付け終えたリズは、ライルのそばに座り、笑顔で言った。

 

「そうですよ! 私は師匠の俊敏さと頭の回転に惚れ込んで弟子にしてもらったんですからね」

「お前ら……」


 感動の涙を流しそうなライルだったが、ガシャン! とガラスの割れる音が聞こえ、涙を引っ込めた。

 アレンは眉を顰め、首を傾げた。


「なんか落ちたかな? 悪い、ちょっと見てくる」


 二人を残して、アレンは足早に階段を上る。

 薬草の置いてある部屋へと入ると、窓ガラスが割れていた。元々整頓されていたわけではないが、荒らされた形跡がわかるほど薬草が散らばっている。


「あれ、減った?」

 

 散らばった薬草をかき集めていると、目に見えて減っている薬草を見つけた。

 それはギルド近くにあった、薬草や回復薬を売っていた店のものだった。


「確か毒草と間違えやすくて、人気がないとか言ってた気がするんだよなぁ」


 店主は毒草ではないとしっかりと説明して販売している。だが、それでも時折通報されるのだ、と店主は嘆いていた。


「え? わざわざ毒草だと思って持ち去ったのか……なんのために? いや、そもそもなんで俺の部屋から?」


 疑問しか残らない窃盗に、アレンは眉間に皺を寄せた。


「おーい、大丈夫か? ……て、うわっ窓ガラス割れてんじゃん」


 なかなか戻ってこないアレンの様子を見にきたライルとリズ。二人は粉々になった窓ガラスを見て驚いた表情を見せた。

 

「もしかして薬草を盗まれたんですか!?」


 リズは我に返りアレンへと詰め寄った。アレンは苦笑いを浮かべながら頷いた。


「リズさんの言うとおりだよ。けど、全部じゃないしまた買えばいいから」

「確かにそうですけど! でも私は今、超! 腹が立ってます!!」

「リズは本当に人のために怒ってくれるなぁ」


 怒りで険しい表情を浮かべているリズを見て、ライルは微笑んだ。

 アレンはその彼を様子を見て、納得するように頷いた。

 

「リズさんが代わりに怒ってくれるから、俺は冷静でいられるんだな」

「ちょっと、そこの二人! もうちょっと自分でも怒ってください!」

「俺は怒るの苦手なんだよなぁ……」


 アレンは頭を掻き、眉を下げた。リズはアレンの困った表情を見て落ち着きを取り戻した。


「……まあ、アレンさんはそんな人だからこそ、その体型になったんでしょうしね」


 呆れた表情を浮かべたリズだったが、アレンはただ頭を掻き、顔を引き攣らせ笑うだけだった。

 

「それで、何を盗られたんだ? わざわざアレンの家の物を盗るなんてな」

「毒草と間違えられやすい薬草で、名前はポイノン。毒草じゃないって意味で付けられた名前だな」


 ポイノンを一房手に取ると、ライルに手渡した。ライルは角度を変えてまじまじと見た後、アレンへと返す。


「つい最近これと間違えて毒草使ったやついたな……」

「ポイノンじゃなくて、ポンウイってことか」

「そうそう。誰だったかなぁ」


 思い出せず難しい顔をしていたライル。その隣では薬草をじっと見つめていたリズ。

 

「それにしてもダサい名前ですね」

「だよな〜」


 本当に窃盗されたのかと思うほどマイペースだったが、この場には、まともなツッコミ役がいなかったのである。

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