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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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16/18

16減量

 一週間みっちり治療の仕事をしていたアレン。

 見た目は依然として太ったままだが、アレンは、明らかに以前より体が軽くなっているのを感じている。

 過度な期待をしないようにと自分を諭しながら、日課の体重測定を始める。

 大きめの体重計に乗り、針の揺れが収まるまでじっと待つ。

 

「……や、痩せてるっ!」


 そこで、目に見えて針の位置が動いていることに、思わず大きな声が出た。

 しかし、すぐに深呼吸をして落ち着かせ、一度台から降りて、改めて体重計に乗る。

 二度目でも信じられず、何度も体重計をリセットして乗り直しても、針の位置は変わらない。

 

 アレンは安堵すると同時に、ふと疑問が頭をよぎった。


「これ、残渣がなくなったらどうなるんだろう。普通に考えたら、かざすだけで治療ができなくなるだろうな。仮に俺が残渣の蓄積されやすい体質なら、適度に飲んで蓄えていれば一生使えるのか? そもそも――」


 アレンの疑問は尽きず、体重計の前であれこれと考える。

 アレンと似た体質の者ならいけるのか。そもそも前例がないのか――アレンは疑問を全てノートに書き殴る。

 

 気が済むまで書いた後、顔を上げた。


「一週間で何人治療したかな。いや、それより前の統計が必要か……書き出して計算して――ああでも薬草作りもやりたいし、俺がもう一人いればなぁ」


 アレンはやりたいことリスト作成し、優先順位と時間など事細かに決めていった。

 そこでやっと落ち着いたアレンは、漢方茶を飲み一息つく。

 その後、ライルとリズに痩せたことを報告しようと通信機を触る。


 すると、すぐにメッセージへの返信が届き、開こうと思った途端、ビデオ通話申請が飛んでくる。

 承認を押すと、すぐにリズの満面の笑みがモニターに浮かび上がった。

 アレンの姿をモニター越しに確認した後、リズは口を開いた。


「アレンさん、メッセージ見ましたよ! おめでとうございます!」

「リズさん……ありがとう!」

「俺もいるぞアレン! 本当におめでとう!」


 ライルがリズの隣に座り、手を振る。それを見たアレンは笑顔で言葉を返す。

 

「ライルもありがとな!」


 白い歯を見せ、にっこりと頷くライル。その隣ですぐにリズがアレンに言葉を投げかける。

 

「アレンさん、今から予定ありますか!?」

「いや、今日は1日、回復薬作りをしようかと……」

「そうか! なら今から二人で家に行くから出かけたりすんなよな!」

 

 アレンの承諾を待たずに通話を終了した二人。


「まったく、忙しない奴らだなぁ……」

 

 だが、自分のことのように喜んでくれることに、アレンの胸の内は暖かくなっていた。

 カイルやミリアだったらお祝いの言葉もかけてもらえなかっただろう。


「いい人たちと巡り会えたな。さてと、後でやるし置いておこう」


 アレンは出していた薬草を箱に入れ保管庫に入れないまま、二人をすぐ迎え入れられるよう一階へと降りていったのだった。


 ◇


 インターホンが鳴ってすぐさまアレンは二人を迎え入れた。

 

 「祝杯だ!」とライルは大きな酒瓶を持ち、片手には決して安くない霜降りステーキ肉を買ってきた。

 リズはリズで、追加の薬草と回復薬、そしてアレンのためにと買った、伸縮可能な鎧まで用意している。

 

 何度も奢ってもらっているアレンは、思わず差し出されるそれらすべてを押し返した。


「いや、ちょっと痩せただけでやりすぎだろ!?」


 受け取らないアレンをよそに二人はテーブルに荷物を置いていく。

 アレンはその様子をただ呆れた笑みを浮かべて見守っていた。

 

 すべて荷物を置いた後、ライルは霜降りステーキ肉をアレンに見せびらかしながら言う。


「俺らが勝手に用意してるんだから、お前は気にせず受け取っとけよ〜」

「そうですよ! どうせアレンさんは、誕生日とかもまともに祝ってないでしょう」

「ば、バレてる……でも別に忘れることだってあるだろ。そもそも、今回は10kg痩せただけだからな?」


 10kgはそこそこ痩せたと言ってもいい数字だ。

 しかし、1週間で何百人と治療をしたというのに、それだけしか消費できていない。あれだけの人数を捌いて太ったままだというのは、あまりにも消費が少なすぎるとアレンは感じていた。

 もちろんわずかでも減れば、それは喜ばしいことであり、実際アレンも喜んでいたのだが……。


「本当に損するタイプの人ですね……。アレンさん、そんなに気になるならこれらすべて買い取ってください。まだ報酬を渡していませんし、お渡し予定の報酬から差っ引いてお渡ししますよ」

「え? あれってお金出るのか?」


 ボランティアだと思っていたアレンは目を丸くした。

 リズは呆れた表情で契約書をテーブルに置いた。

 

「依頼って言ったじゃないですか! 金額は後日別途相談って書いたのに!」

 

 契約書には金額の欄にしっかりと「別途相談」と書かれている。

 アレンはその欄を見つけた後、目をそらす。


「むしろ、治験なのにお金なんてもらっていいのかな〜と思ったりしなくもないんだよなぁ」

「いやいやいや! 私は高額請求されることも考えてたんですけど!」

「アレンはそこらへん損得で動かないからなぁ。ま、もらえるもんは貰っとけよ」


 ライルの言葉に、アレンは難しい顔をしつつも大きく頷いた。

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