表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/18

15完璧なビジネスプラン

「寄ってたかって私の商売相手にちょっかい出さないでください!」


 リズがアレンと女の間に割り込んだ。

 女はリズの顔を見るなり目を大きく見開く。


「A級のリズ!? 商売相手って……まさか手を組んでカイル様の邪魔をする気!?」


 女の発言に、リズは思わず「は?」と言いかけたが、すぐに咳払いをし、呆れた表情で女を見た。

 

「……あんな小物、私の相手じゃありませんよ。そもそも、あの男が怠けていたからこその降格ですからね」

「そんなわけないわ! だってカイル様はこれまでずっと植物の採取はもちろん、魔物の解体も完璧だったのだから!」

「それ全部、俺がやってました」

「……」


 悪びれる様子もなく、自慢げな顔をするわけもなく。アレンはただ事実を述べた。

 だが、盲目的にカイルを信じている女には、その事実が届くわけもなかった。


「嘘をつくな! あんたはそうやって功績を奪ってきたんでしょう!?」

「一緒に行ったらわかると思いますよ。試しにカイルと組んでみては?」

「そんなことできるわけないじゃない! カイル様は今昇格のために忙しいのよ!」

「いえ、だからそれをあなたが手伝ってあげれば――」

「バカなの!? スピード昇格の邪魔をできるわけないでしょ!」


 アレンの提案を一蹴し、騒ぎ立てる女。


(さっき俺に、カイルの手伝いをしろって言ったのに?)

 

 困惑しているアレンを見て、リズは大きなため息を吐いた。

 

「……これ埒が明かないやつですね。アレンさん、ちょっと失礼しますね」


 リズはアレンの手を取り、ポーチからビー玉のような玉を取り出した。それに気付いた女は、すぐにリズに駆け寄ろうとした。

 しかし、すぐにリズはそれを指で割った。

 その途端、一瞬にしてアレンの家の前に立っていた。


「なんて便利なアイテム……」

「使ったのは高価なアイテムですから、それ以上にアレンさんには働いてもらわないといけませんねぇ?」

 

 リズはアレンに不適な笑みを浮かべた。


「せ、精一杯頑張らせていただきます……」

「はい、よろしくお願いしますね。それで、これはアレンさんの治療能力を見込んでなんですけど、聞いてくれますか?」

「依頼か? もちろん聞くよ」

「よかった! あまり大きな声で言えないので、あとでメッセージを送らせていただきます!」

「わかった。研究しながら待ってる」


 ◇


 メッセージを確認したアレンは、翌日からさっそくリズからの依頼をこなすことになった。

 

 指定された場所は、ギルドや街の中心から離れた、貧困層が多く住むエリアの一角。元は倉庫だったであろう建物の中には、リズが雇ったと思われる数人のスタッフと、簡易的な診察台、そして長い行列があった。


「本日はお越しいただきありがとうございます。これから、皆様には無料で治療を提供させていただきます」


 その瞬間、行列の人々からは感謝と期待のざわめきが上がった。このエリアの住人は、軽い怪我でも薬代や治療費を工面できず、泣く泣く放置してしまうことが多かったからだ。


 女性スタッフが好意的な人々を見つめながら、言葉を続ける。

 

「ただし、こちらの罰点付きのポーラーであるアレンが開発中の、新しい回復薬の治験にご協力いただくこと」


 そこで並べたられた試作品の回復薬を指差すスタッフ。緑色が主で、濃い色から薄い色がある。そして青っぽい色も少数だが置いてある。

 スタッフは今度はアレンを見た。


「そして、アレンの治療を無償で受けていただくことが条件です。彼の治療が嫌な場合は、今ここでご退場ください」


 アレンが罰点つきのポーラーだということは、貧困層にも知れ渡っていること。

 人々は一瞬ざわめいたが、無料の治療は彼らにとっては天の恵みだった。

 それもあって、誰もその場から動くことはなかった。スタッフはそれを確認した後、隣に立っていたアレンを見た。


「アレンさん、こちらへどうぞ」


 アレンは奥の診察台に立ち、一人一人と向き合い始めた。


(治験とダイエットを兼ねた依頼、か……)


 リズの依頼は、アレンの才能を活かしつつ、彼が最も気にしている体型改善まで組み込んだ、完璧なビジネスプランだった。しかも、人道的な支援という側面も持っている。

 善行を積めば、罰点も消してもらえる仕様。きっとリズはそれを知っての提案だったのだろう。


 まずアレンの目の前に座った最初の患者は、栄養失調で頬がこけ、手足の骨が浮き出た幼い孤児だった。軽い切り傷にも関わらず、発熱している。


「大丈夫だよ。痛くないからね」


 アレンは穏やかな声で話しかけ、手をかざした。


 (少し力の加減をしてみよう。回復薬も使いたいし)


 彼の指先から微かな光が漏れ出し、少年の切り傷へと触れる。傷が閉じる様子はなかったが、少年の顔からみるみるうちに苦痛の表情が消え、発熱も治まった。

 念のため傷口に絆創膏を貼り、アレンは孤児の様子を見た。


「……すごい! もう痛くもないし、苦しくないよ!!」


 少年が驚きの声を上げると、アレンは優しく笑った。


「よし、次はこれを飲んでみてくれる?」


 アレンは、試作段階の回復薬を小さなコップに注ぎ、少年に渡す。薬はわずかに青みがかっており、飲んだ少年はわずかに顔を顰めたが、すぐに飲み干した。


(痛みと発熱は治まった。回復薬は、この少年の体調改善にどれくらい寄与するか……)


 アレンは少年の体調を細かく記録し、次の患者を呼んだ。

 この日、アレンが治療した患者は百人を超えた。彼が持つ回復能力と、試作薬の知識を駆使し、来る日も来る日も、アレンは貧しい人々を治療し続けた。


 そして一週間後、アレンの体には明らかな変化が表れ始める――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ