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味方のために薬を飲みすぎた俺、太る  作者: 勿夏七


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12/18

12涙と怒りのわけ

 アレンは最近、遠征についていくようになっていた。

 薬草の採取を目的としたものだ。

 

 仕事へ同行する前に、いつも「パーティーを追放されたポーラーのアレンです」と明言して、罰点がついているギルドカードを掲示している。

 相手が気にしないのであれば加入し、少しでも嫌そうな顔をすれば辞退する。そうやってアレンは少ないながら仕事をこなしてきた。

 

 また、回復には回復薬ではなく、手をかざしての治療をしている。もちろん実験中であることも明言しているため、驚いた表情を見せつつも、雇った側はその芸当を興味深そうに眺めるのだった。


「あんたの治療はすごいな。他のポーラーも同じようなことができるのか?」


 今回遠征を共にするのは、道端でヒーラーに治療を断られていたアサシンの男だった。

 傷跡が消えた腕をまじまじと見つめる。

 

「同期に確認をしましたが、誰もできませんでした。俺と違って体型管理をしっかりしているので、蓄積されていないんだと思います」

「……そうか。なかなか君の体型まで飲み続けるポーラーなんて、いないだろうからなぁ」


 アレンの事情を聞いている男は、アレンの体を見て苦く笑う。

 

 太っているポーラーはそこそこいる。だが、アレンほど脂肪が蓄積している者はほとんど存在しない。

 それは、ポーラーになる者は、太りにくい体質や、カロリー消費が元々激しい職業についている者が多い。だからこそ、ぶくぶくに太ることはそうそうないのだ。

 

 アレンの戦士職も前衛で敵の的になることもあり、そこそこカロリーを使う職業。普通のパーティーであれば、ここまで太ることはなかったはずだった。


「結果的にこうして不思議な力を手に入れましたし、これまでカイルたちのために飲み続けて良かったのかなと思っています。もちろん許せないことではありますけどね」

「なんていい子なんだ……。そんなあんただからこそ、目覚めた力なのかもな」


 感心する男に、遠くから仲間が声をかける。


「そこの二人! 休憩はこれくらいにして、探索を再開するぞ」

「はい、よろしくお願いします!」


 男はアレンの速度に合わせて、歩みを緩めた。


 ◇


 遠征から帰ってきたアレンは、誰とも会わずに持ち帰った薬草を調合していた。

 味も自分で食べて調べ、薬に向いているかどうかも確認する。

 苦いものを飲み続けていたアレンにとって、その作業は苦痛にはならなかった。


「甘い物が入れられたらいいんだけど……でもジュース感覚で飲まれてしまうのも違うな。過剰摂取は避けたい」


 頭を悩ませていると、家のインターホンが鳴り響く。

 すぐにアレンは立ち上がり、扉まで足早に歩く。


「はー、いっ!? ミリア!?」


 扉を開けてすぐ、ミリアが涙を流している姿があった。

 アレンはどう対応していいか分からず、その場で右往左往する。


「ど、どうしたんだ? カイルにフラれたか?」


 ミリアはアレンのデリカシーのなさに一瞬言葉を失ったが、大きく頷いた。

 

「っそうよ! 私が先にフろうと思ってたのに!」

「そこなの? ……えっと、とりあえず家で休むか? いや、家に招き入れるのはよくない?」

「なんなのよ、その対応は」

「ええ……どうすればよかったんだよ」

 

 ミリアとしては、「休んでいけよ」とスマートに家へと招き入れてもらえることを期待していた。そもそも、ミリアはそんな対応に慣れてしまっていた。

 だが、心の底から自分のことを心配してくれているアレンを見て、少しだけ安堵したミリア。

 

 家に入って、綺麗に片付いたソファへと座る。その時に柔らかいタオルを手渡されたミリアは、涙を拭う。

 以前来た時は汚かったのに、とミリアは辺りを見渡す。


「ほら、ハーブティー」


 アレンは暖かい飲み物をミリアに手渡した。

 ミリアは色味と匂いで目を瞬かせる。

 

「これ、私の好きなやつじゃん……意外とやるわね」

「俺がどんだけお前らの世話してきてると思ってんだよ……。それで? なんでフラれたんだ?」


 ハーブティーを一口飲んだ後、ミリアは両手でカップを持ったまま怒りを露わにした。

 

「あの、クラリスっていうヒーラーに奪われたの! あいつ、清楚ぶってさあ!」


 今にもカップを割りそうなミリアに、アレンはただ顔を引き攣らせるだけ。

 あまり言うと怒りの矛先がこちらに向いてしまうのをアレンはよく知っている。


「クラリスって、ミリアを連れて行った黒髪の女の子だよな?」

「そうよ、あの子。どうやってカイルを落としたのかわからないけど、メロメロなの! 今のカイルは、まるで私たちの世話してた時のアレンよ!!」

「いや〜、言い方嫌すぎる」


 ミリアはアレンにぐちぐちと、これまでパーティー内であったことを全て話した。

 愚痴の中心はやはり、カイルだった。

 以前は自分によくお金を使ってくれていたのに、最近はケチだ。女ばかりのパーティーのせいで、私に対する優しさも減った。怒られることも増えた。

 事務仕事は面倒だからと押し付けてくる、など、かなりの鬱憤を吐き出している。


 そして、最近カイルがお気に入りのクラリスの愚痴も始まる。


「ちょっと顔が可愛いからって何よ。ヒーラーのくせにまともに仕事ができないんだから」

「あの子って、非公式だろ? 仕方ないんじゃないのか?」

「アレンまでそんなこと言うの!?」


 勢いよく立ち上がったミリアだが、アレンに座るよう促され、渋々座る。

 

「ミリアだって最初は大変な思いしただろ」

「そうかもしれないけど……でも、あの子変なのよ。未熟だって言う割に、自分の治療は完璧なの。なのに、他の人に治療術かけたときは、いつも中途半端。で、最終的には先生(講師)に治療してもらえって言うの」

「へぇ、なんでだろ。先生の治療を学びたいから……とか?」

「それは絶対違う。だって付き添いなんてしないから」


 謎が深まるクラリスの行動に、二人で首を傾げた。

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