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魅惑の星のアロマテリア  作者: 一人記


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7/12

2605/08/13 12:00『label21︰変体』

・???について

『label possession disorder』

後天的に発生する可能性───極稀。

???に対する…???が下がり、内部の身体系が異常発達する???。外見からは???らないため注意が必要。

また、先天性の場合は負荷に耐えられず死亡する例が多い為、そもそもとして???は少ない。


世界を???可能性 ある、??????───、だ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

          《health》


  ・label 21・Code 井ノ本 開花 ・ago 14

・Strength 62 ・Agility 101 ・Vitality 45 ・Power 180


            S.A

     『label possession disorder』


            E.S

《keen hearing》───1《Leg Reinforcement》───1

《telekinesis》───1《Thinking beyond》───1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ん……んう……」


誰かが呼んでいる。

夢の中で。


「あ……お……ぅさ……」


手を引くのは誰だろうか。

連れていかれたのは誰だろうか。


「う、う……あ……あ……」


タンスの中に隠された。

がたがたと震える体を抑えることしかできなかった。


『あ、あ、おかあ、さ───』


ダメ。ダメだよ。


まだ出ちゃ、だめだ。


だめなんだよ。











だから───










「まだ、でちゃ……だめだよ。まい───……あ?」




 目が覚める。


白い天井。灰色の床材。


……転送船の中だ。


何故か目元に伝う涙を、私はゆっくりと手で拭って周囲を見渡す。



「わたし、どうなって……」


「……あら、起きたのね。

おはよう、バカガキ。よく眠れたかしら?」


 部屋の扉を開けて魔女おばさんが入ってくる。

手には穀物の湯煎煮が持たれている。良い匂いだ。湯気も出てるし、恐らく作り立てなんだろう。


 その香りと不可思議な光景。

どことなく疲れた様子を見せる、しかし何故かベットに横たわっている私に対して安堵の目を向ける魔女おばさんの姿をただ唖然と見つめることしか出来ない。


「私───どうなったんですか?あの後……」

「……まぁその前に取り敢えず食べなさいな。話なら後でゆっくりしてあげるから。……はい。口開けて」


 言われるがまま口を開ける。

柔らかく暖かい穀物と、少しだけ下味に付けられたショウユの風味が口いっぱいに広がる。それを咀嚼する。


「はい、次。熱かったら言ってね。冷ますから」

「んぅ、わか、分かりました……魔女、おばさん……」

「おばさんじゃないわよ。もう……泣くぐらいなら、今くらいちゃんとした名前で呼びなさいな。バカガキ?」


 そうして、暫くの間、私が泣き止むまで魔女おばさんが付きっきりでごはんを食べさせてくれた。

何があったのだろうか。分からない。でも、そのスプーンに乗せられた穀物がしょっぱくて。暖かくて。


「だって、名前……むづかしくて、おぼえられないからぁ……むぐぁ、うぅ……」


「じゃあ、なんでイヴァンもマルローも言えるのよ……?

あたしだけじゃない。言えないの……まぁいいわ。ほら、ゆっくり食べて。ゆっくりね?ゆっくり……」


 今まで食べた、どのご飯よりも。

美味しかったことだけは、明確に覚えている。



ーーー



「おい、開花くんが起きたって本当かッ!

レイベ───……カタリナ?!」


 バァンとドアを開け放ち、部屋に駆け込んでくる。

隊長さんだ。慌てて走ってきたのか、入室早々何やら意味深げな発言をしておばさんに睨まれていた。


「はあ、あんた焦りすぎよ。昔の名前出さない。次ポロったら殺すわよ」

「う。す、すまん。つい癖で……」

「あとここ私の部屋ね。乙女の寝室にノックしないで入るのはどうなのかしら?レオ隊長?」


 ベットで寝ている私をちらりと見て、狼狽えている隊長さんにそう問い詰める。その後、はぁーと大きなため息を吐いて肩の荷を下ろした。


 へえ、ここ魔女おばさんの部屋だったんだ。どうりでふわふわで可愛いものが多いと思った。

最初はちみっこ胸女の部屋かなーと思ってたけど、魔女おばさんも案外ぬいぐるみとか飾るタイプなんだ。


「バカガキ。あんたも部屋ジロジロ見ない。今回は緊急で仕方なく入れてあげたんだから。感謝しなさいよ?」

「はぁーい。……あ、下着落ちてる。紫のやつだ」

「ッばっ、どこ!?」「嘘だけど」

「やっぱあんたもっかい寝とく!?次やったら首行くから覚悟しなさいよバカガキ!?」


 気まずそうにしている隊長をそのままに、魔女おばさんとやいのやいのと言い合う。

なんか少しの間に気心知れた間柄になった気がする。看病してもらったからだろうか?こういうのは新鮮だった。


「あのー、二人とも勝手にイチャイチャするのは構わないんだが……俺のことも忘れないでくれるかー……?」

「姉御ー!開花ちゃん起きたってホントっすか!?体調どうー?具合はー!??」「起きたマジ?」「悪魔とかになってないですかー?」

「はぁ……イヴァン、五左衛門、マルロー、ついでにリューイ。あんた達が女性に対するデリカシーってものを持ってないのは良く分かったわ。隊長同様ね」


 おぉー、思ったよりたくさん人が来た。

イヴァンと五左衛門は来るかなーと思ってたけど、他にも胸女とそのつがいさんも来るとは。なんだろうか、物見遊山かな?


「開花ちゃーーーん!どうっすか、元気っすかー????おいおいおーい!!!!」「……?(とりあえず手を振る)」


「はいはいはい、あんた達バカガキが困ってるから!

ちょっと静かにして外で待ってなさい!隊長と今回の件の説明したら話させてあげるから!」

「えー、でもオレら道中命助けられたんすよー?少しぐらい心配してもいくないっすかー?」

「この子、多分それすら分かってないから───だから後で感謝してあげなさい。じゃ、また後で」


……バタン。魔女おばさんの手によって部屋の扉が締め切られる。どうやら話は纏まったらしい。


「おさげ」

「あの、開花くん。髭で遊ぶのやめてもらっていいかな」

「ちょうちょむすび」

「あの、それほんとに解けなくなるから!やめ、やめてね!?病み上がりでも怒るからね普通に!??」


「……はぁ、もうあんたらそのままでいいからちゃんと聞きなさいね?まず、バカガキが倒れた所から話ししてくけど……」


 そうして私は私が倒れる前と後にあった事と、そのあとの二日間の事を説明された。


───そう、二日だ。

なんと私、二日寝たきりだったらしい。


「もう、ほんと大変だったんだから。

あんた毎日うなされてるし、苦しむし、痛がるし……隣で寝る身にもなって欲しかったわよ。寝相すごいし」


 衝撃の事実だった。 私、寝相凄いんだ。

魔女おばさんがなんか顔を赤らめてる辺り、話せないタイプの凄さなんだろう。今度添い寝してもらって録画してみよう。


そんな事を考えながら、話をされたことを整理する。


まず、一つ目に何故私が倒れてしまったかについてと、その容態についてだ。


ーーー


『levelアップ時の筋肉痛、又は感覚酔い』


 それは何らかの理由によってlevelがいきなり上昇した者や、数値上昇系、もしくは身体変化系の《E.S》を手に入れた場合にのみ稀に発生する症状のひとつである。


 状例は様々だ。

そもそも《E.S》や《S.A》によって身体が変貌し、メキメキと骨の軋むような痛みを経験したり、health数値がいきなり上がって元の身体が成長することによって味わうことになる感覚のズレだったり。


……まぁ、要は成長痛のようなものだ。


 そして今回、私が経験したのは恐らく、それを数十倍ほど濃縮還元した密度の濃い『痛み』だったのだろう、と魔女おばさんには説明された。


───理由は簡単である。

私のlevelが異常なほど上昇していたからだ。


「マジで驚いたわよ。船に帰ってきて容態調べる為に探査盤に触れさせたら……21って。

一体何処の偵察大隊の隊員よ?数値的にも偵察中隊のエース位はあるし。あんた、そりゃ死ぬぐらい痛くなるわよ。身体もさぁ……」


……とは、魔女おばさんの言葉である。


 うん。私、何故かは分からないが凄まじい成長を遂げてしまったらしい。確かにいつの間にか四つぐらいESが生えていたので本当の事なのだろう。少し前まで数値100超えが目標だったのに……子供の成長とは早いものだ。


 そんなふうに納得していると、何故か魔女おばさんに心底呆れた目で見られた。心外だった。


───そして二つ目。


ここ二日の間にあった出来事、である。


「ここからは俺が説明しよう。ここ二日間の間にあった事だが……まず、この俺たちが偵察していた『第一北部未開領域』に特異名称が付けられた。

───名前は『第一北部/吹雪・雪崩の境界線』。

仮名称だが、偵察隊を取り仕切っている区役所によって正式に任命されたので特区ではたぶん現在その話で持ち切りだろうな。たぶん、NEWSにもなってる筈だ」


「へぇ、特異名称ですか?

……あの『太平洋境界線』みたいな?」


「そうね。つまり《危険度推定不可能の特殊領域》に指定されたってわけ。危険度A越え。あんたが倒れてなかったら、あたし達全滅してたわ。正直ね」


 はぁとため息を吐くおばさん。

恐らく船に戻ってくる時の事を思い出しているのだろう。

その顔は疲れたような安堵したような……とにかくもう二度と味わいたくないものを目の前にしたような、苦虫を噛み潰したみたいな表情であった。


……まぁでも、それもその筈である。


なんでも、倒れた私を担いで船に戻っている最中、背後から《正体不明の大悪魔》に襲われたらしいのだ。


───突如として巻き起こった吹雪と雪崩。

そしてその背後から気味の悪い鳴き声をあげながら、空間の歪んだ歪な両腕を振るい攻撃してくる特大級の謎の生命体……初めから帰還していて距離があったから良かったものの、あと少しでも距離を詰められていたら普通に全員死にかけていたらしい。


「あれは……うん、もう思い出したくないな。俺たちじゃ、ちょっと荷が重い所じゃない相手だった。あれは対峙するような悪魔じゃない。正しく厄災だよ」


 よって、凶運ではあるが、私の卒倒によって『獣王の鬣(キングス・レオ)』中隊は命からがら危険領域からの脱出を成功でき、図らずも命を救ってくれた私に感謝しているという感じだとか。


……うん、まぁ、旧典的にいえば『棚から牡丹餅』的な感じだろう。中隊は誰も死ななくてハッピー、私も見捨てられなくてハッピー。それだけの話だった。


「それで……今は特区に帰ってるんですね?」

「ああ、そうだな。北部の詳細についての報告もあるし、何より俺たちでは対処が出来ない。少ししたら特区にいる大隊の有名どころが偵察に向かうだろうさ。多分な」

「そうですか。じゃあ、私ももう拘留ですね。短い人生だったなぁ。ぐすん……」


 街に着いたら警備兵に突き出されるのだ。

であれば、この船の中の旅が私の最後のシャバの空気である。そうともなれば食堂で最後の晩餐をしよう。携帯食料で密やかにパーティ開催だ。イッツ、パーリナイ。


そんな事を思いながら、私が『帰るまでにやることリスト』を作り始めていると……きょとんとした顔で隊長さんが小首を傾げた。


「えっと、開花くん。

なんの話しをしているんだ?拘留とは?」


「……?だって私犯罪者ですよね?

偵察船に乗り込んだ、重罪犯……あとトイレ」



「………………あぁ!そうだった!

そういえばそんなこともあったな!?もう忘れてたよ!」


 唖然である。

私、すごい覚悟してたのに。


 なんだ、これじゃあ誰も彼も忘れてた過去の罪を告白した人じゃないか。……え?これ捕まるの?私ミスった?何も言わなきゃ大丈夫だったやつなのこれ?

うわ、悔やんでも悔やみきれない。やらかしたな。


「うわー、やらかしたーーーー。

はぁー……黙っとけば良かったーーーーーー」

「いや、開花くん。それもう別に良いよ?許したから。

というか、君にここまでされて突き出したら、多分仲間に殴られるし。無罪でいいよもう」


 しかし、意外や意外。隊長さんは下げ眉で私のことを見つめて苦笑し、ため息混じりにそう呟いたのだ。


「……え??いいんですか?

私、無罪放免の許されで良いんですか。やったー」


「いや、ていうかあんたがまだ突き出されると思ってたことに驚きなんだけど、あたし。あんた、地味に自己評価低いわよね。バカガキ」


 評価低い……?

これでも、最近は高い方なんだけども。

そんな事を真顔で呟くと、魔女おばさんが「そういえばあんた数日前まで赤タグだったわね……そりゃそうもなるか」と、ため息混じりに眉をひそめていた。解せない。


……そんなこんなで、私達は一度特区へと帰宅する事になったのだった。


因みに、その間の航海では色んな人に感謝された。

ちょっと嬉しくなった。極論、自分のお陰ではないけども。


「ほら、開花ちゃーん。これあげるっすよー?助けてくれたお礼っすー」

「わーい、やったー(もぐもぐ)」

「こらイヴァン、開花が何でも食べるからって嫌いなものあげない。あんたのめすわよ?」


何にせよ、この人達が助かって良かったなぁと思った。


ーーー

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