表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第五話


 長いホームルームが終わり、ショウインが教室を後にした。口々に不満の声を漏らす学生たちの中で、一際目立つ存在。それが魔王エンドだった。


「おい、てめぇ女神なんだろ。どうにかできねぇのかよ」


 首を振った女神アシャーカは、指先を丸めて目を伏せた。何度か教室からの脱出を試みた生徒たちだったが、部屋の外へは誰も出ることができなかった。アシャーカの元へやってきた元伯爵令嬢のアクヤは、両指を組んで膝をついた。


「女神様なのですわよね!? ここからどうにか出られませんこと? お願いしますわ!」


 瞳に涙を溜めた彼女は、精一杯の祈りを捧げる。


「申し訳ありません……この場所では私たち、うまく力を使えないみたいなのです」

「ちっ、ふざけやがってあの野郎……っていうかお前、本当に女神なのか?」

「……信じてもらえないのも無理はありません。恐らくこの場所に集まった人たちは、みな別の世界から呼び出されているようなので」

「べ、別の世界……?」


 素っ頓狂な声を上げたアクヤは、長い巻き髪を揺らす。アシャーカはそのまま続けた。


「あの方……ショウインの言っていることが正しければ、ここは異世界人たちの集まりだということです。そして彼は転生者や主人公……被害者という言葉を口にしていました……アクヤさん、あなたのご友人は、突然人が変わったように感じられたのですよね?」

「え、ええ。そうですわ……あの忌々しいキョーコめ……あんなに性格悪かったくせに、急に善人ぶり始めて……!」


 歯噛みし始めるアクヤ。


「ナイツさんも、同じでしょうか?」


 アシャーカは振り返って、席についたまま腕組みするナイツに尋ねる。鋭い眼差しが、ギロリと彼女を見た。


「人が変わったか、だと? あいつは元々俺を騙すために力を隠していやがったんだ。とんだ女狐だ。一時でも婚約者にしてやった恩を忘れ、それを仇で返すなんてな」


 言い終わるとすぐに彼は顔を背け、思いだしたかのように顔を歪ませた。

 

「もう一つ確証がほしいです……魔王エンド、あなたも同じような最期を迎えたのではありませんか?」


 アシャーカが向き直る。両手を頭の後ろで組んでふんぞり返る素行の悪いエンド。額から生えた二本の角が、禍々しい気を放っていた。


「あん? 何でてめぇに詮索されなきゃなんねぇんだよ。 どいつもこいつも使えねぇ奴ばっかりだな」


 嘲笑ったエンドの前で、アシャーカだけが口を開く。

 

「……あなた、ループ系の勇者に殺されていますね」


 ぴたりと動きを止めたエンドは、片眉だけを持ち上げてみせる。


「……なに? どうしてお前にそれがわかる?」

「あなただけではありません。アクヤもナイツも、この教室にいるみなさんも、転生者によって殺された者ではありませんか……?」

 

 取り留めもなかった教室の雰囲気に一体感が生まれた。彼らはアシャーカの次の言葉を待つ。

 

「私は女神アシャーカ。私はずっと、転生者を別の世界から呼び出してきました」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ