第三話
「ミルメ・ナイツ君……ふむ、君はあまり動じてないようですね」
「くだらん。何が目的だ」
「……被害者の救済ですよ。教師というものは、常に弱者とともにある。君は……聖女と呼ばれる女性と婚約したはいいものの、彼女に魔力がないと分かるやいなや、すぐにその妹と婚約を取り替え、挙句の果てに魔物の潜む森に聖女を置いていったと……」
「ひ、ひどいですわ……」
顔を引き攣らせたアクヤ。こらこら、自分のことを棚に上げて勝手にドン引きするのはやめなさい。あなたも十分ひどいと思いますよ。
「フン。あの女、俺を騙したんだ」
「その後、聖女に秘められていた力が覚醒し、なんやかんやあってあなたの非道が暴かれ、妹とともに第一王子から失脚。国を追われ敵国に捕まってあえなく処刑……聖女が転生者かどうかは分かりませんが、なんとも清々しい最期じゃないですか」
「……あ?」
「おっと、失敬」
口は災いの元ですな。鋭い目にさらに輝きを放ったナイツが、私を睨みつけた。咳払いを混ぜながら私は次に進む。
「ワルド・エンド君。君は魔王ですね。世界に混沌をもたらす者……ですが、その野望は打ち砕かれてしまっています」
「うぜぇ」
「謙遜することはありませんよ。誰しも世界を自分の思い通りにしたいと願うのは、当然のことですから」
エンドの情報が書かれた名簿に目を通すと、私はこの荒くれの男を静かに見下ろした。
「てめぇに言われんのがうぜぇんだよ」
「反抗的な態度は感心しませんね。あなたが一番、本当の苦しみをしっているというのに……」
「あ? 何だって?」
小さく紡いだ言葉を置き去りに、私は次の生徒の名前を呼んだ。