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第二話


 拝啓、王都立初等教育所属のみなさん、お元気ですか。春はあけぼのと言い、美しくも儚い季節を指しますが、私は今、酷く醜い学生たちを相手に教鞭を振るっています。あ、本当に鞭を振り回しているわけではありませんよ。そういうものの例えです。……とにかく、私は異世界という奇妙な異次元が生み出してしまった哀れな被害者たちを救うべく、性懲りもなくまた教壇に立っているわけです。春眠暁を覚えず。みなさん寝坊などしないよう、中等教育でも頑張ってください。敬具。



 

「あの、よろしいですか?」


 すらりと手を挙げた女性。ささやかな金色の光でまとった羽衣に身を包み、神々しい双眸で私を見つめる。学生としてはいささか露出が高めですが……まあ不問としましょう。


「どうぞ」


 私に促され立ち上がった彼女は、周囲の視線もいとわず訪ねてきた。

 

「異世界の被害者とは、どういう意味でしょうか……?」

「言葉通りの意味ですよ、女神アシャーカ」


 名前を呼ばれたことに驚いたのか、アシャーカは口をつぐんだ。クラスがざわめき始める。

 

「これからみなさんに自己紹介してもらう予定ですが……あまりいい経歴とは言えませんからね。可哀想なのでやめて差し上げましょう。代わり私が出欠をとりますので、お名前を呼ばれたら元気よく……いやそれも無理か。あー、とりあえず反応だけもらえれば結構です」

 

 薄い名簿を広げた私は、まず最初の人物の名前を読み上げる。


「クジョウ・アクヤさん」


 立ち上がった女生徒が強い剣幕で告げる。

 

「私の名前を軽々しく呼ばないでいただきたいですわ!」

 

 きつい目元に凛々しい顔立ち。豪華な衣装を着こなしてみせる彼女は、少々派手なメイクが印象的だ。名簿に目を落としながら私は(うな)った。


「……なるほど。幼馴染で悪友だった主人公と一緒になって、貧乏貴族の娘をいじめてきた。だがある日突然、人が変わったようになった主人公がその娘と仲良くなってしまい、最終的には彼女を取り巻くイケメン貴族たちからも相手にされず、自分で(はか)った罠にかかり死んでしまう、と」

「ちょ、ちょっと! どうしてそれを……!」

「ふーむ、主人公が途中で異世界転生してきたパターンですね……乙女ゲームか何かだったのでしょうか」

「あ、あなた……私の話しをお聞きなさい!」

「結構です。次、読み上げます」


 (わめ)くアクヤを冷たくあしらい、私は名簿に視線を向けた。


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