表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/36

Episode32:骸獣《グレースビースト》

地下施設が、崩壊を始めた。


骸獣グレースビーストが一歩踏み出すたび、

床が陥没し、骨とコンクリートが粉砕される。

獅子の輪郭を持つ胴体から、

数え切れない触手が脈打ちながら蠢いていた。


「……来るぞ!」


ロックが叫んだ瞬間、

怪物は――消えた。


次の刹那。


衝撃。


質量の塊が空気を踏み潰し、

視界の外から突っ込んでくる。


「速っ――!」


ロックは反射的に跳んだ。

床を転がり、

その背後を触手が薙ぎ払う。


コンクリートの壁が、紙のように裂けた。


「正面に立たないでください!」


モルトの声が響く。


「触手は“囮”です!

本命は――胴体内部!」


「了解!」


ロックは走った。


跳躍。

床を蹴り、獣の側面へ。


――拘束サプレッション


見えない鎖が展開され、

触手の数本を一気に締め上げる。


「――ッ!」


だが、骸獣は止まらない。


拘束された触手ごと、

自らの肉を引き千切った。


血と骨片が雨のように散る。


「……正気かよ」


切断された断面から、

新たな触手が生える。

速度は、さっきよりも速い。


「自己破壊型再生……!」


モルトの声が、焦りを帯びる。


「拘束で止めきれません!

因子反応、増幅しています!」


骸獣が咆哮する。


衝撃波が走り、

ロックの足が浮いた。


その瞬間を、逃さない。


触手が、全方位から襲いかかる。


「――っ!」


ロックはナイフを振るった。


切る。

裂く。

落とす。


だが、数が多すぎる。


一本が肩を掠め、

二本目が脚に絡みつく。


引きずられる。


「ロック!」


リリスが発砲する。

弾丸が触手を穿ち、動きを鈍らせる。


その隙に、ロックは拘束を追加で展開する。


――多重拘束オーバーサプレッション


鎖が絡み合い、

獣の胴体を締め付ける。


床が、耐えきれずに崩れた。


骸獣が、倒れ込む。


「今です!」


モルトが叫ぶ。


「胸部――因子の集中点が見えます!」


ロックは跳んだ。


獣の背に着地し、

ナイフを深く突き立てる。


だが。


刃が、止まった。


「……硬っ」


骨でも、肉でもない。

異物。


次の瞬間、

内部から触手が噴き出した。


ロックの身体が、宙に投げ出される。


壁に激突。

視界が揺れる。


「……くそ……」


床に転がりながら、

ロックは見た。


骸獣の胸部に、

“顔のような影”が浮かんでいる。


子どもたちの名残。


リョウ。

マイカ。


「……そうか」


息を荒げながら、ロックは立ち上がる。


「お前は――

あいつらの、墓か」


拘束系が、再び脈動する。


今度は、迷いなく。


「なら……」


ロックは、左手を突き出した。


――拘束サプレッション

――最大展開。


鎖が、地面から、壁から、天井から伸びる。

逃げ場はない。


「ここで、止まれ」


骸獣が、吠える。


拘束と再生が、真正面から衝突する。


地下施設全体が、軋み、悲鳴を上げた。


子どもを止められなかった、その手で。


怪物を、止める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ