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種まき  作者: 山葵からし
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防水ケース

 水の中で息を吐くと、大きな泡になって浮かんでいく。それを見て自分が呼吸をしてたことを思い出す。

 苦しくなって、湯船から勢いよく頭を出す。そういえば、顔をお湯に浸けるのって良くないんだっけ。

 濡れた髪をしぼっていると、防水ケースにいれたスマホが小気味良い通知音を奏でる。


『いまなにしてる?』


 どうしよう、吹奏楽部の加藤先輩からだ。一つ上、サックスが上手で次期部長って言われてる。それから、私の好きな人。

 心臓の鼓動が大きく早く脈打っているのがわかる。


『お風呂はいってます!』


 送信ボタンを押す。

 返信するまでもうちょっと時間あけたほうが良かったかな。先輩は何してるか聞き返した方がよかったかも。というか、お風呂で携帯いじってるとかはしたないって思われそう。いやそれより、今全裸なのに先輩とやり取りしてるってなんだか変な気分……。

 なんて、しょうもないことを考えてたら先輩からの返事がきた。


『風呂で携帯とかw 水没させろw』


 やっぱりお風呂中だって言わないほうが良かったかも。でもイジってくれるなら、そこから他愛もない話も広げられる。


『防水ケースあるので大丈夫ですー!』


 そうやってくだらないやり取りを何度か続ける。やばい、先輩とこんなに話せるとか奇跡だ。明日死んじゃうかもしれない。

 携帯を両手で胸に抱えながら感動に打ち震えていると、さらに先輩からのメッセージが届く。


『今週の日曜暇?』

『珍しく部活休みだし、一緒に出かけない?』


 これはデートのお誘いでは?!

 どうしよう、急にそんな、でもなんで、いやそれより服だ。ぐるぐると思考が浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す。

 心臓がより一層うるさくなる。集中できない。

 ああ、なんて返したらいいんだろう。「いいですよ」だけだと素っ気ないかな。でも「行きます!」なんてがっついてもみっともないし……。

 そんなことを考えて考えて、気づけばのぼせてしまっていた。

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