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種まき  作者: 山葵からし
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寿命

 どうしてこうも自分はダメなのか。自己嫌悪で鬱屈とした気持ちになる。なにかしなきゃと思うけど、それでも何もせずに過ごす自分にもっと嫌気がさす。

 とりあえずと思って始めた配信も、結局誰にも見てもらえないまま3日で辞めた。SNSの運用でもしてみようかと解説したインスタのアカウントは、投稿を2つしてから開いてない。初めからお金を掛けてしまえば逆に辞めづらくなるだろうと買ったギターは、部屋の隅で埃を被っている。

 始めては辞め、始めては辞めを繰り返す。もう何年もこんなことを続けて、気づけば社会人になって数年立ってしまった。

 昔から続けていたことの才能に気付く余地も、ある日突然超能力に目覚めることもない。国家規模のテロに巻き込まれることも、異世界への転生だってしない。漫画のような人生は、どうやったって訪れないのに。

 それなのに、私は死ぬのが怖い。無為に時間を消費していくだけなのに、生産性のカケラも持ち合わせていないのに、それでも死にたく無いと思ってしまう。

「でしたら、貴方の寿命を預けてみませんか?」

 突如目の前に現れた怪しい男はそう言った。自分は寿命を専門に運用する、寿命投資銀行の者だと。

 差し出してきた名刺には、確かにそのような社名が書かれている。Googleで検索してみると、そんなことが書かれた怪しいHPまで出てくる。詐欺だとしたら手が混んでいる。

「運用益の1%を信託報酬としていただきます。それ以外、費用等は一切かかりませんのでご安心を」

 嘘くさい笑顔でそう言う。聞けば、本当に費用はかからないらしい。必要なのは本人確認と署名捺印だけ。血を抜かれるわけでもなんでもない。

 どうせ盗まれるとしても個人情報だけだ。私は試しに、その嘘くさい話に付き合ってみることにした。

「私が預けられる寿命はどのくらいなんです?」

「最低1時間から1時間単位でお預かりできます。残りが寿命が1時間を切らなければ、いくらでもお預かりできますよ。引き出すのも自由です」

 聞けば、私は50年5ヶ月21日4時間使えるらしい。ということは、何もしなければあと50年で死ぬということか。今25歳だから、享年75か。もう少し生きたいところだ。

 試しに50年預けてみることにした。預けると言っても実感も何もあったもんじゃない。結局そのまま何をするでもなく、その日はただ宣言をするだけで終わった。

 そんな調子だったので、以降私は寿命を預けたことをすっかり忘れてしまっていた。

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