路地-1
ビルの裏。細い路地道。ただ強い陽射しを避けようとしただけなのに、いつの間にか迷ってしまった。さっきからぐるぐると同じ場所を巡っている。まっすぐ歩いているはずなのに、なんだか気味が悪い。
上を見上げると、エアコンの室外機やら謎めいた配線やらでごちゃごちゃしており、ほとんど空が見えない。今どきこんな風景が残っているのかと感心さえしてくる。隙間から僅かにのぞく空は、先ほどまでの青空とは打って変わって鮮やかな茜色だ。腕時計を見るも、時刻は14時といったところ。夕方というにはあまりにも早い。
このままでは一生路地裏暮らしだ。金も飯も寝床もない。どうにかならないものかとただ只管に歩き続ける。歩いては休み、歩いてまた休む。不思議と空腹も疲れも感じなかった。
気づけば時計はとうに20時を回っている。だのに空は茜色のまま一向に変わりそうにない。やはり何かおかしなことに巻き込まれているらしい。私ではどうしようもできそうにない。
そう途方にくれていると、正面から歩いてくる人が見えた。背丈は私と同じか、少し大きいくらいだろうか。フードを被っていて顔はよく見えないが、体つきが女性のように見える。
「……本当にこんなところに人がいるなんてね」
そう言って目の前で立ち止まる。優しい声音で、やはり女性のようだった。すぐ近くにいるのに、何故かフードの中は見えないまま。なのに口元だけはハッキリとわかる。彼女はニコリと微笑んでいた。




